「挺対協中心の慰安婦問題、真実はどこにあるのか」(4・終)

これで終わりです。次からは通常更新に戻ります・・といっても週末ですからゆっくり行きます。初見の方は(1)に概要を書いておきましたので、お読みください。

 

<慰安婦強制動員関連資料の分析>

私たちの学界は慰安婦の募集過程を「強制連行」や「徴集」と表現して久しい。ならば、このような用語を学術的に使用することは妥当なのか、根拠は十分か、また論理は明確であるのか。現実はそうではない。

連行だろうと徴集だろうと、日本は慰安婦動員と関連した根拠法令を作ったことがない。たまに慰安所の規則や衛生規定などが発見されてはいるが、それが採用過程での強制性を究明する資料ではないのだ。

日本は慰安所の設置と運営自体を否定したことは無いので、朝鮮の処女を供出するために日本政府や総督府が組織的に募集に関与して、便宜を提供した事実を立証する資料が出てこない限り、「強制性」の立証は容易ではない。多分私たち側の学者たちもそれをよく知っているのだろう。これまで、このためにどれだけ多くの人たちがどれだけの国庫を無駄使いしながら研究ごっこをしてきただろうか?しかし、そのお偉いさんたちが望む資料とやらが、すでに日本側が十分に研究して把握した資料以外に、何かが出てきたのか?

 

(ここから「続きを読む」の後になります)

資料がないからといって、無いものを作ったり、字句をねじって望文生義(勝手に解釈すること)してはいけないだろう。そんなやり方で歴史的真実を暴くのですと言ったところで、相手が認めてくれるはずもないし、私たちだけの自己満足のための言葉ばかりのパーティーになっては無意味である。例えば韓国側の学者たちが「強制募集の根拠でちゅ」と何度も絞り出している『軍慰安所従業婦などの募集に関する件』を見てみよう。

軍慰安所従業部などの募集に関する件

この通告文は、一見、タイトルだけ見ると、慰安婦募集に国が関与したかのように見える余地があるが、実際には、正常でない方法で慰安婦を募集しないように関係機関との協力を要する内容であるだけで、日本政府が誘拐や拉致を指示したり、助長したという根拠資料にはならない。

「支那事変地域において、慰安所設置のために内地にある從業婦などの募集について、軍部の了解があるかのように名義を利用し、軍の威信を損傷させ、一般民の誤解を買うようにする恐れがあり、あるいは従軍記者、慰問者を介して制御されない募集を引き起こす恐れがある。または募集者の人選が間違って選定され、募集の方法において誘拐のような方法をして警察当局の調査を受けている者などを注意しなければならない。将来、このような募集等において派遣軍に統制させ募集と関した仕事ができる人物の選定を適切にし、その実施において関係地方の憲兵や警察当局との連携を緊密にし、今後軍の威信を維持し、または社会問題上遺漏(※抜かり)がないように配慮することを、通牒する」

 

この文書のどこをどう見ると強制連行の根拠資料として使うことができるのだろうか?韓国側の学者たちは、これに対して二つの方向から憶測の論理を展開している。1つ目は上の資料が、慰安婦の募集の時に誘拐のような方法が適用されていたことを軍当局が認めているという(カン・マンギル「韓国民族運動史論」2008年)、2つ目は、上記のような取締りが内地だけで行われ、植民地では行われなかったというのだ(カン・ジョンスク「日本軍慰安婦制の植民性研究」2010年)。

しかし、このような推論は、論理的に成立せず、根拠が薄弱な主張だ。朝鮮総督府で作成した統計年報を見ると、慰安婦募集が絶頂を達成した日帝末期に行くほど、拉致や誘拐などの凶悪犯罪が持続的に減少していることがわかる。したがって、慰安婦募集と誘拐拉致の増加は何の関係もない。

誘拐・拉致事件検挙状況(1931〜1943)

それなら、カン・ジョンスクが主張するように、植民地は内地みたいに強く誘拐や拉致を取り締まらなかったから、このような減少現象がなかったのか?違う。日帝時代の凶悪犯罪発生状況をみると、他の強力犯罪でも同じく減少現象があったという点で、何の根拠がないと主張に過ぎない。単に植民地だったというだけで、そのような不合理の仮説が当然かのように追增され、受け入れられることは問題だとしか言えない

日本の時期凶悪犯罪発生件数の現状(※年度/殺人・傷害・脅迫・強盗・賭博・放火)

私たち国史教科書が「慰安婦」を最初に取り上げ始めたのは、第7次教育課程の後のことである。全6種の近現代史教科書を分析してみると、慰安婦の概念と被害状況は、読み上げ資料(※直訳ですが何のことかはよくわかりません)を用いて詳細に明らかにしながら、肝心の慰安婦募集経緯や実態と関連しては、挺身隊被害者の一部として記述したり、漠然と強制的に連れて行って慰安婦に従事させたなど、あいまいな叙述でうやむやに処理している。

強制的に連れて行ったという発想の究極的な様態こそ、吉田淸治の「人間狩り」告白事件だ。

1943年済州に上陸した吉田清治は警察兵力を半分に分けて、町全体を包囲した後、逃げる人々を警察が容赦なく木刀で叩き、泣き叫ぶ女性を暴行して乳児を無理矢理引き離し、無理やりトラックに載せたというものである。

朝鮮憲兵隊司令部を無視(?)して本土に上陸した彼ら特殊部隊によって白昼に強行された人間狩りは、まるで映画「アポカリプト」で見たような残酷で野蛮な歴史的想像を、事実でもあるかのように受け入れさせる。若い学生たちがこのような歴史を学んで、どこに使うのだろうか?

「1人で1000人以上の処女を狩った」吉田淸治の人間狩り告白事件。京郷新聞1992年8月12日

 

朝日新聞の木村伊量社長は、吉田清治の済州島での人間狩り関連捏造記事問題と、福島第1原発事故当時の現場責任者関連の捏造記事問題で2014年9月11日、対国民謝罪公式記者会見を行った。 NHKキャプチャー。

 

しかし、吉田清治が、1996年にこの証言が捏造された小説であることを告白してもう15年以上が過ぎた。にもかかわらず、最近まで、このような証言を教科書に載せるべきだと主張する人たちの論文が堂々と論文審査を通過しているのは、どのように受け入れればいいのだろうか。

学問としての歴史ではなく、扇動と憎しみの手段として歴史を学ぼうと主張する格好だ。

http://www.mediawatch.kr/news/article.html?no=249566

 

↓以下、シンシアリーのちょっとした雑記です。

こうして、疲れたよパトラッシュ(終)なところですが・・・

まず、韓国でよくもこんなことを・書・け・た・ものですね・・と思いました。その影響か、すでにブログは閉鎖中だそうですが(1のメディアウォッチの記事にて)。ネットの掲示板では「◯◯◯さんの家族が脅迫された」という話もありますが、真偽不明です。

 

私の場合、訳しながら、いくつか同意できない部分もありました。著者さんに対してというより、「風潮」に対して、です。あえて「広い範囲」で一つ同意できない点を挙げると、「下手すると、慰安婦問題は挺対協だけの問題だと誤認してしまいそうだ」という点です。タイトルだけでもなんとかならなかったのでしょうか。

慰安婦問題に挺対協が深く関わっているのは事実だし、保守右派からは「挺対協は従北団体だ」と言われています。でも、慰安婦問題は、彼らだけの問題ではありません。この研究の目的が「慰安婦問題は左派団体がやったもの」という狭い視野によるものではないか、「韓国の慰安婦認識は間違っているから左派団体の責任だ」、すなわち「保守右派は被害者た」という主張のためではないか、そんな気がします(もちろん、著者さんがどんな気持ちだったかはわかりません。私が勝手にそう感じているだけかもしれません)。

いつも書いていますが、反日(慰安婦問題も含めて)は、左派だけの問題でもなければ北朝鮮だけの問題でもありません。韓国の総意であり、母体であり、目標であり、まさに国是であります。親北団体が関わっているのは重要な事実ではありますが、それだけが反日の理由ではありません。韓国の左派も右派も、日本への加害者なのです。

 

 

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