オフィシャル・ナショナリズム

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1ヶ月程度前のことですが、韓国各紙で「官製民族主義」という言葉が流行りました。

この前、本ブログで2つのパターンを紹介した『韓国の反日批判の形』、「反日種族主義」と「ただの政府批判」。その2つが融合した形のものになります。

反日政策も含めて、現・文在寅政府は官製民族主義を政策としている、という内容です。これは日本で言う「公定ナショナリズム(オフィシャル・ナショナリズム)」のことです。

本エントリーのための側面だけに絞って見てみると、官製民族主義(公定ナショナリズム)とは、韓国で行われている正統性争いにも似ています。例えばA政党が国家の権力を掌握しているとした場合、その国家の中にある支配的権威(韓国で言えば「正統性」「韓民族の優秀さ」など、A党も他の政党も逆らえない権威)を、A政党の思想や主義主張と同化させるナショナリズムを意味します。保守派たたき、親日糾弾、反日と愛国の同化(臨時政府史観への執着など)などを政府レベルで進め、それを「親・民族」「民族愛」にしている現政権が、その姿を見せているというのです。

この主張をしたのは、保守右派の人ではなく、チェ・ジャンジップ高麗大名誉教授。彼は、金大中政府のときからの折り紙付きの左派思想家だったことから、そこそこ多くのマスコミが注目しました。ちょこっと引用してみます。

 

(ここから「続きを読む」の後になります)

<・・チェ名誉教授は15日、3・1運動100周年記念学術大会で「文在寅政権が推進する歴史清算、特に親日残滓清算については、官制民族主義(official nationalism)の典型的な姿で見られる」と批判した。発表したタイトルは「韓国民族主義の多声的性格について」だ。チェ教授は「歴史は官製教育ではなく、学界と市民社会の自由空間の中で行われなければならない」「(日帝清算などの)官製キャンペーンは、現政府が正当性の根拠を南北の歴史的正統性と結合させようとする意図」と述べた。

文大統領が3・1節記念辞で述べた親日清算についてチェ・ジャンジプは「これまで、進歩勢力(※左派)を共産主義者だと攻撃してきた保守に向けた表現」と解釈した。保守は過去の歴史を忘却し、歴史意識もなく、独立運動を蔑視する存在堕落した。文大統領の清算対象は保守そのものである。官製民族主義の問題は、第一に、歴史清算をすればするほど分裂と葛藤が大きくなるという点である。第二に、日本をナチスと比喩したり、悪魔化し、政治空間が閉じられてしまう・・>

https://news.v.daum.net/v/20190318001719674

 

最後の「やればやるほど分裂するだけ」「日本を悪魔化する」という2つは、面白い指摘だと思います。過程なのか結果なのかはともかくして、現状としてそのまま現れています。

「正当性を正統性とつなげようとする」という表現も、拙著「韓国人が暴く黒韓史」の頃から「韓国人は自分にとって正しいことを正統性にしたがるから、矛盾ばかり産み落とす」と書いてきた私としては、感慨深いことです。旧ブログのとき、「正統戦隊ワカランジャー」とか書いたりしましたよね。懐かしい話です。

 

でも、少なくとも「反日」に関しては、チェ名誉教授の主張には決定的に1つ、極めて個人的に、「ここは違う」と思わざるを得ないところがあります。

韓国のナショナリズムは、政党や政府が主導して出来上がるものではありません。すでに出来ているものを、政党や政府が利用しようとしているだけです。その証拠として、政権交代しても反日は消えません。反日こそが愛国で、民族愛だからです。

先の説明に沿って言い換えれば、反日は韓国にとって「A政党の正当性」にあるものではなく、「逆らえない正統性」にあります。

 

反日という同じゴール目指す路線が右と左に分かれていて、反共や反米などいくつかの部分に考えの違いがあって、「私と異なるのは間違っていることだ」として争いが絶えない・・・それが韓国社会で、それが韓国の歴史です。

韓国のナショナリズムが反日からすでに同化された状態で大韓民国が生まれた以上、少なくとも反日に関しては、「官製」ではありません。

 

 

 

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