韓国保守紙が見た「日米共同声明にはあるけど、米韓共同声明には無いもの」

米韓共同声明で「ここがおかしい」「日米とはここが違う」と分析する記事がありました。今までのものに比べると、細かく、また現実的な指摘が目立っています。例えば、「半導体ですでに台湾のほうが上」「記者会見で尹大統領が使った単語が、共同声明のものと違う」などです。ソースは週刊朝鮮(朝鮮日報の週刊紙)で、個人的な意見ですが、朝鮮日報本体よりずっとマシな分析だと思っています。

記事は、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領とバイデン大統領の間に、妙な溝があって、それは「記者会見で尹大統領が言った内容が、共同声明では微妙に違う表現になっている」など、なかなか鋭い分析を載せていますが、やはり本ブログとしては、日本関連部分をメインで紹介します。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

まず「拡大抑止(韓国では拡張抑制と言います)」ですが、記事によると、拡大抑止(Extended Deterrence)は米国が他の国への軍事的に対応するという意味で、米国本土への攻撃を防ぐための行動は「Direct Deterrence」です。ですが、この拡大抑止、日米と米韓の両方の共同声明に出てくるものの、『主語(主体)』が違う、とのことでして。米韓共同声明では、関連した文章の主語がバイデン大統領だけですが、日米首脳会談では「両首脳」になっている、とのことでして。記事は、「これは、日米と米韓が、決して同等な同盟ではないという意味だ」としています。

<<・・共同声明で注目すべき部分は拡大抑止に関する公約の主語、すなわち主体だ。両国ではなく、バイデン大統領一人にとどまっている。韓国が含まれた両国間の問題ではないということだ。極端に見ると、拡大抑止の稼働可否は、米国が決める事案だという意味だ。韓国も主体者として直接行動で出る事案ではないということだ。韓国が望む拡大抑止がどこまでできるかは、EDSCGでの規定と約束に従うという意味だ>>

 

番組(引用)の途中ですが少し追記しますと、米韓共同声明は、「バイデン大統領は、核、在来式およびミサイル防御能力を含め、利用可能なすべてのカテゴリーの防御力を使用した米国の韓国に対する拡大抑止公約を確認した。また、両首脳は、最も早い時期に高位級拡大抑止戦略協議体(EDSCG)を再稼動することに合意した」となっています。

日米の共同声明では、「両首脳は、米国の拡大抑止が信頼でき、強靱なものであり続けることを確保す
ることの決定的な重要性を確認した。両首脳は、安全保障協議委員会(SCC)や拡大抑止協議を通じたものを含め、拡大抑止に関する日米間の協議を強化することの意義を改めて確認した」となっています。それでは、引用を続けてみます。

 

<<韓米間の微妙な間隔は、隣国である日本の米日首脳会談の共同声明を見ると、さらに明確に理解できる。「両首脳は米国の拡大抑止が信頼でき・・(※重複するので略します)改めて確認した」となっていす。いったん拡大抑止を断行する主体が、米日であるという点からして違う。韓国の場合、今後EDSCGを通じて議論する予定だというが、日本はすでに構築されているSCC(安全保障協議委員会)での『再確認』だけ残している。

日本は、尖閣のような具体的な紛争地域を米日安保条項に結びつけ、共同声明に明文化している。中国による尖閣の有事の際、米軍の直接的な介入を既定事実化した条項だ。韓米関係では見られない特別な条項である。「北朝鮮が韓国主権地域内にミサイルを発射した場合、韓米安保条約がすぐに適用される」という条項は、歴代韓米共同声明のどこにも書いてない。日本と比べるとさらに差が広がるばかりだが、各論レベルで見た韓米間の安保構図の現実は、決して楽観する水準のものではない。韓日共に米国と同盟関係ではあるが、決して同等ではないのだ・・>>

 

他にも、「朝鮮半島の非核化」は北朝鮮が米軍撤収の迂回的表現として使うものですが、今回の「朝鮮半島の非核化」は、意味合いがちょっと違うものだったようです。尹大統領は、朝鮮半島の戦術核兵器(比較的射程の短い核兵器のことで、前は朝鮮半島に配置されていましたが、いまは撤収済みです)再配置を主張していました。今回の記者会見でも『北朝鮮の非核化』としていましたが、バイデン大統領は『朝鮮半島の非核化』とし、共同声明にも『朝鮮半島の非核化』になっています。

今回の場合、これは「韓国での戦術核兵器再配置」が失敗したという意味であり、しかも、共同声明に(同じく、尹大統領が前政権との違いを見せるために使っていた)『CVID』などの表現が入ってないこともあって、非核化関連でも本当に意見が一致したのだろうか、と記事は指摘しています。また、中国関連内容が真っ先に出てきた日米共同声明に比べ、米韓は台湾関連内容が最後あたりに出てきただけだとしながら、「『誰に向けてのものか』がはっきりしている日米と違い、米韓の場合は『誰に言っているのか分からない』ものだった」、とも。

 

<<日本は、共同声明の各所に中国を明示したのはもちろん、「ロシアによるウクライナ事態に関し、中国は明確な立場を明らかにせよ」という日米首脳の「要求」も加えた。これは、韓米で言うと、米韓両首脳が「中国を明示し、北朝鮮に対する支援を中断するよう要求した」レベルの対応になる。しかし、実際の韓米共同声明を見ると、アジアで問題なのは誰なのか、分からない。共同声明で中国・台湾に関する言及が一番下に入っているのもおかしい。バイデン大統領に配慮したためだろうが、日本はロシア・中国問題を共同声明書の初頭に置き、両国間の懸案はその下に置くように配置した・・>>

 

しかし、引用部分の最後、こんな記事すらも、「韓国が米国に配慮した」としているとは・・脱力感が半端ありません。十分にいい記事ではありますが、これが限界、といったところでしょうか。過去エントリーでも紹介したことがありますが、米韓首脳会談で予想通りにいかなかったこと(例えば、クアッド加入失敗、など)を、韓国の各メディアは「中国を気にする米国に、韓国が配慮したのだ」という記事を出しています。

個人的に、拡大抑止だけでなく、米韓共同声明は「~について議論すると合意した」なものが多く、しかも、EDSCGのように「これから協議体をつくることについて話し合う」としているものも多く、「本当に5年で出来るのか?」としか思えない部分もあります。

日米共同声明にあって、米韓共同声明に無いもの。それは、『信頼』ではないでしょうか。政権交代という理屈だけではどうにもならない、信頼のことです。それを築き上げるのは5年だけでは無理でしょうし、だからこそ『政権』だけではダメなのです。

 

 

おかげさまで新刊『日本人たらしめているものはなにか』を追記しました。帰化を前にして、いろいろと考えてみて、その自分なりの結論を記録した本です。固定エントリー『新刊・準新刊のご紹介』に簡単な内容を綴りました

・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。

 ・様のおかげで、こうして新刊・準新刊のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2022年6月1日発売)からですが、<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>です。帰化を前にして考えたことを記録した本です。アマゾンページに書いてある、「私はただ、日本が好きだから、日本人として生きたいと思っています」と、「『お前は韓国人として生まれた』が、『私は日本人として死ぬ』に上書きされた時に見えてきた、日本人になるということの意味」が、本書の全てを表していると言えるでしょう。そんな本です。 ・新刊<「自由な国」日本「不自由な国」韓国 韓国人による日韓比較論 (扶桑社新書) >は、日本滞在4年目に感じた「日常」と、ラムザイヤー教授論文騒ぎにまつわる、日韓の対応の差などをまとめました。2021年発売版に、相応の追記を致した新書版でございます。 ・国に蔓延する対日観、『卑日』について考察した卑日(扶桑社新書)>も発売中です。なぜ今の韓国に、日本に対する『卑』が必要なのか。それを自分なりに考察、率直に書きました。 ・刊として、文政権の失敗を振り返った <文在寅政権最後の暴走>と、自分なりの『日本語』本<日本語の行間~韓国人による日韓比較論 (扶桑社新書)>も発売中です。・刊・準新刊の詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。旧「インフォメーション」もこちらに統合してあります。本当に、本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。 ・れでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。