尹政権の不動産市場対策が始動・・ただ、『7%金利だけど貸し出しを受けてマンション買って』という内容

前にもちょっとだけ触れた記憶がありますが、尹政権の不動産政策が、『高金利だけど、貸出を受けてマンションを買ってください』な路線に走っています。ハッキリ言って、政策の基本方針は金大中政権から続いた政策を大差ありませんが、前の政権がその政策を推進していた頃は、低金利期間でした。金利が低い時期にタイミングを合わせて行われたわけです。でも、今は金利が上昇しています。上昇と言うか、『金利を上げるしかない』状態でこのような政策をおこなったところで、本当に効果が期待できるのか。多くの専門家は疑問を提起しています。

バブル崩壊後の日本の場合は、政府が債務を負う形になりました。いまでも続いている、政府債務に対する議論(政府からすると債務だが、債券所有者のほとんどが日本の個人・機関などで、同時に日本の資産でもあるという見方)とも、関係していると見ていいでしょう。韓国は、個人が負う形になりました。いまでも続いている、家計債務に対する議論(とにかくなんとかしろという見方)とものすごく関係しています。金大中政権も、似たようなことがあった文在寅政権も、表面的には家計債務を抑え込む、積極的に不動産価格調整を目指すとしていましたが、さて、どうでしょうか。結果的に、そううまくは行きませんでした。力不足という側面ももちろんありましたが、それらが経済を支える、GDPを引き上げる効果があったからです。

 

ただ、そんな中でも、高金利、というか急な金利上昇時期に、『貸出の制限を緩和するから、貸出を受けてマンションを買ってください』という政策は見たことがありません。いまの尹政権の政策が、まさにそういう流れになっています。現在住宅を所有していない人に限って、LTV(Loan To Value ratio)を今の40%から50%まで増やす、というのがメインです。LTVが40%から50%になるという意味は、例えば5億ウォンの住宅を購入するためにローンを受けるとき、その住宅を担保にして2億ウォン(住宅価格の40%)までローンを受けることができたけど、もう2億5千万ウォン(50%)まで受けることができる、どうだすごいだろう、という意味になります。

まず、住宅担保ローンが7%だの8%だのと言われている昨今、この政策がどこまで効果があるのかが指摘されています。しかも、DSR(dept service ratio)40%、すなわち『返済すべき元利金は、所得の40%まで』という制限はそのままです。これは段階別にいろいろありますが、いまは最高段階とされる3段階が適用中で、ローン金額が1億ウォンを超える場合は全員に適用されます。ただ、第2金融圏は50%、第3金融圏(貸付業者)には適用されません。また、ジョンセ(家を借りるシステム)保証金、マンション購入の中途金(契約金と残金の間に支払う金額)のためのローンなどには適用されません。

 

このDSRは、つい2020年まではそこまで広く適用されませんでした(一部地域の一部の不動産にだけ適用されていました)。もともとは2022年に2段階(2億ウォンまで)、2023年に3段階(1億ウォンまで)を適用する予定でしたが、それぞれ1年前倒しになりました。家計債務に対する最後の手段とも言われていますし、趣旨そのものは問題ありませんが・・導入がおそすぎたのではないか、という声もあります。

特に、信用ローン(担保無し)にも適用されるため、多くの人たちを第3金融圏行きにする結果になるのではないか、すなわち、現在の『借入金で借入金を返済する』状況で、DSRを強化するのが本当に効果があるのか、という指摘もありました。評価を出すには、まだ結果を見守る必要があるでしょう。アジア経済など一部のメディアは、「DSRを今のままにしてLTVだけ緩和しても意味がないし、だからといってDSRを緩和したら、家計債務問題がどうなるか分からない」という現状を記事にしています。<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・(※今回の不動産市場関連対策に)銀行側はパッとしない反応だ。銀行関係者は「DSRを緩和しない以上、効果はさほど無いというのが銀行内部の意見」とし、「あまりにも不動産景気が悪いので、政府の対策が、『とにかく政策出したからいいでしょう』なものにしか見えない」と話した。DSR制限の核心は、総融資額が1億ウォン以上の場合、年間元利金返済額が年収の40%(第2金融圏50%)を超えることができないというものだ。金融当局は、DSRは家計負債管理のための最後のラインだと考えている。しかし、いくら他を緩和しても、年収が増えないかぎり、家を買うとき、受けられるローン金額は変わらない。よほどの高所得者でないかぎり、住宅を所有していない人、実需要者(※投機ではなく、住むために家を買う人)の不満が高い。

実際に先月、銀行で住宅担保ローン相談を受けた会社員A氏の事例だ。Aさんの年収は6000万ウォン。既存ローンとして、金利7%で5000万ウォン分のマイナス通帳(※実際にお金を預金していなくても、限度額までは引き出しできる通帳のことで、比較的金利が高い)がある。A氏は「変動金利6.20%、40年分割償還、元利金均等方式でローン可能額を照会してみたら、1億5500万ウォンだった」、「いくらLTVを緩和しても、DSRで2億ウォンもローンが受けられないじゃないか」、「ここまでするなら、政府がマンション価格を今の半分にしなければならない」と話した(アジア経済)・・>>

 

インタビューした人のことで、個人的に、「ああ、たしかに、DSR緩和できないはずだ」と思いました。しかし、それをそのままにしておくと、不動産価格対策は効果が出せない、と。 あと、最近休む日が多すぎで本当に恐縮ですが・・今日も更新はこれだけです。コメント欄で私の体調を心配してくれる方もおられましたが、それは違います。書いている原稿もあるし、『ブログ以外のこと』に時間を使っているだけのことです。ご理解の程をお願い申し上げます。

 

 

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