(統一政策その1)南北連合、国家連合

韓国と北朝鮮の基本的な統一路線は、「もう一方が無くなること」です。

両方の統一政策の基本は、両方の「最高の規則」をその根拠とします。韓国は憲法、北朝鮮は朝鮮労働党規約です。韓国は憲法の領土条項にて「韓国の領土は朝鮮半島と付属の島々とする」と書いてあることを根拠にして、「吸収統一」を主張しています。北朝鮮が韓国が法律制度のもとに吸収される形での統一を意味します。北朝鮮は、「最終的な目的は、全ての社会の主体思想化と共産主義社会を建設する」です。ここでいうすべての社会とは、南北はともに入るのは当たり前として、場合によっては「全世界」とされる場合もあります。1992年11月23日の聯合ニュースの記事から、引用してみます。

 

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<北朝鮮は赤化統一を諦めていない。「朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮労働党の指導のもとにすべての活動を進める」(北朝鮮の憲法第十一条)は、依然として北朝鮮では朝鮮労働党が憲法より上にあり、憲法も赤化統一路線が明記されている労働党規約より下位概念であることがわかる。朝鮮労働党の規約は、「朝鮮労働党の当面の目的は、共和国北半部での社会主義の完全な勝利を達成し、全国範囲での民族解放と人民民主主義の革命課業を果たすためであり、最終的な目的は、全ての社会の主体思想化と共産主義社会を建設することにある」と規定、全国範囲だけでなく、全世界の共産化も目指していることを示している>。

http://v.media.daum.net/v/19921123193800027

全世界なのかどうかはわかりませんが、表現(北朝鮮の場合は北の部分だけと明記されている)からして、韓国が含まれることは間違いないようです。

国の最高位の規則に書いてある通りに政策が進むのは、当たり前のことです。呼び方はそれぞれ韓国が「吸収統一」、北朝鮮が「赤化統一」としているものの、中身は同じです。韓国の統治(法律の適用)範囲に北朝鮮が入るか、北朝鮮の統治(法律の適用)範囲に韓国が入るか。言い換えれば、南北どちらかの統治権力を無くなること、すなわち「片方の政府が消えること」です。北朝鮮と韓国が長い間相手側の政府を偽物(傀儡)だと言ってきたのも、このためです。

ただ、時間の流れにつれ、「吸収統一」は、内容は同じでもやり方をマイルドにせざるを得ませんでした。1989年、盧泰愚大統領が提案した「韓民族共同体統一案」の中に出て来る、「南北が連合国家を作る」案、すなわち「南北連合論」がその代表格となります。

簡単に言うと、南北が信頼関係を構築して、ともに発展し、そして、時が来たら、自由民主主義国家になろうという内容です。

南北連合論にも「自主的にやる」や「韓民族(朝鮮民族)が力を合わせる」などの内容は出てきますが、北朝鮮が「民族の自主のために」と主張している「米軍出て行け」や「外国勢力の徹底的な排除」など極端的な話はありません。

また、南北連合案は最終的に「自・由・民主主義国家を目標とする」と明記されているため、南北連合が成立するには北朝鮮の独裁政権が消滅する必要がなり、結果的には韓国側の吸収統一になります。

 

北朝鮮もまた、赤化統一を諦めてはいません。ただ、マイルドな表現にはなりました。1980年10月6日の労働党大会で初めて提示された、「高麗(コリョ)民主連邦共和国創立方案」です。1960年に金日成氏が提案した「南北連邦統一方案」を継承したものとなります。北と南の政府はそれぞれ自治体みたいな形で残り、最高指導機構となる民族政府を作って、統一国家たる「高麗民主連邦共和国」を建立しようというのです。

一見、韓国の南北連合案と同じに見えますが、実は違います。なにせ、韓国が南北連合案を出したのはその9年後ですが、九年も経ってから韓国が北朝鮮と同じ統一案を出すはずがないでしょう。まず北朝鮮の連邦制は、何が何でも外国勢力が関わってはならないものとします。「北と南の軍組織を一つにして民族軍を作る」や「いかなる国との政治的・軍事的同盟にも関わらない」となっており、韓米軍事同盟もあってはならないし、朝鮮半島の統一に周辺国が(例えば六カ国協議のような形で)かかわってはならないとします。朝鮮半島のことは、朝鮮民族「だけ」で決める、それが連邦制統一の核心です。

 

当時の韓国は軍事政権(全斗煥大統領)だっただけに、この連邦制統一に賛同する声はありませんでした。1991年、北朝鮮は、「じゃ、これでどうだ」と言わんばかりに、「低い段階での連邦制統一」というアップグレード版連邦制を提案しました。これは、民族政府を作る前に、北朝鮮と韓国がそれぞれ「政府」としてとりあえず統一して、政府を一つにする方法は後代に任せようという、「一国家、二政府」の案です。でも、なんでもかんでも「自主」がどうとか「民族」がどうとかの条件ばかりで、中身は大して変わっていません。また、保守政権だった李承晩大統領が追い出された直後(1960年)、朴正煕大統領の暗殺の後(1980年)など、提案してくるタイミング的にも、なにか裏があるのではないかと疑わしいかぎりです。そして、これは韓国政府の公式見解ではありませんが、連邦制統一案を分析している韓国側の専門家たちの間には、「連邦制統一になると、北朝鮮は今の韓国政府の解体を要求するだろう」との主張があります。現在の韓国政府は帝国主義(米国)が作った傀儡政府から続いているものであり、「私たち民族だけでやる」統一にするためにはいったん解体して作り直さないといけない、という理屈です。

そう、結局、中身は「赤化統一」なのです。

 

このあと、ちょっと続きます。

 

 

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