事物尊称

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皆さんがコーヒーショップで注文したとします。店員がコーヒーを出しながら「コーヒーでいらっしゃいます」「コーヒーでおられます」と言うなら、どう反応しますか。

前に一度ブログでも取り上げたことがありますが、こういうのを韓国では「事物尊称」または「事物尊待」と言います。こういう言い方が流行っていたのは知っていましたが、事物尊称という呼び方は知りませんでした。

『流行ってるって、本当にこんな言い方が韓国では流行っているのか?』と思われるでしょう。以下、東亜日報2019年10月26日『デタラメ尊待語』という記事から部分引用してみます。

 

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<・・最近、韓国のコーヒー専門店では、従業員が「一万ウォンでおられます」「コーヒーや来られました」と言うのを、頻繁に聞くことになる。ゴルフ場でキャディーが「ボールがバンカーに落ちられました」としたり、住民センターで「印紙の価格は〇〇ウォンでいらっしゃいます」と言う場合もある。人ではなく、なんと事物に尊待するデタラメ尊待語である。語法を無視したこれら「事物尊称」は、実際の文法などどうでもよく、無条件で敬語を使おうとしたあまり、主語や述語の関係、文脈などは全て無視するようになるのだ。お客様は王様だから、王様の気持ちを良くするためには極・尊称を使わなければならないという強迫観念によるものだと聞く・・

・・言語の変化の過程であり、より謙譲であろうとする表現のどこが悪いのかという、このような事物尊称を肯定的に捉える人たちもいる。しかし、でたらめな敬語で上塗りされた事物尊称現象は、固有の私たちの文法を破壊する副作用を招くだけだという懸念も出ている。それに、サービス業界の従業員たちは、事物尊称が間違った表現だと分かっていながら、仕方なく使っていると吐露する。そんな表現でなければ、『私はちゃんとした礼儀や格式ある待遇を受けていない』と考えるお客様が多いからだ。万が一、客が従業員がちゃんと尊称を使わないと会社にクレームでも入れた日には、一方的にやられるのはその従業員の方だ。ただでさえ経済が悪く、アルバイトですら働けない今どきに、客の怒りを買いながらちゃんとした表現を使おうとするなど、誰に出来るだろうか>。

https://news.v.daum.net/v/20191026030144813

 

もう随分前から、似たようなことがありました。1970年代からあった「社長様(サジャンニム)」がそうです。韓国では、職員など店側の人がお客様を呼ぶとき、成人の男ならとりあえず社長様と呼びます。どこの誰なのかもわからずこんな呼び方をするのは、明らかに間違いです(事物尊称に比べるとマシですが)。

なんでこんな間違った尊称が流行ったのでしょうか。流行ったというか何というか、もはや完全に定着してしまい、若い人たちは社長様という呼び方が間違っていることすら知らない人が多いでしょう。一説によると、これはデパートで使っていたデパート尊称というものだそうです。1970年代あたりから、高度経済成長で大金持ちになった人たちが、デパートで買い物をするようになりました。当時、デパートに行ける人は、ほとんどが社長またはその奥様(サモニム)だったわけです。だから、当たり前のようにデパート内でこんな呼び方が出来ました。

 

それから、デパートとは縁の無い人たちも、『私も社長様と呼ばれたい』と望むようになり、そんな人たちに迎合する形で尊称がおかしくなり、小さな町の食堂でも、入ってくるお客様を『社長様』と呼ぶようになったわけです。当時もまた事物尊称と同じで、そう呼ばないと商売がうまくいかないから、間違いだと分かっていてもそう呼ぶしかなかった、そういうオチです。強いて言うなら、尊待のインフレーションです。

個人的に、『自分で他人に尊待語を使う気が無いから、誰かが自分に使う尊待語表現だけがおかしな方向にインフレする』と考えています。

 

 

 

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