雑記・・ある朝鮮時代の詩人のこと

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雑記でも書いてみます。

1800年代、朝鮮時代。金・笠(キム・サッカッ)という人がいました。本名は金炳淵(キム・ビョンヨン)と言いますが、とある理由で、いつも笠で顔を隠し、全国を旅し、印象的な文、詩を残したと言われています。

金炳淵の家門は、当時の貴族階級である両班(ヤンバン)の家系ではあったものの、財政的に苦しい立場にありました。もともと文才に長けていた金炳淵は、そんな家門を立て直すため、若くして地方の官吏を登用するための国家試験、郷挙(ヒャンゴ)に挑戦しました。その試験のテーマは、地方の官吏でありながら、反乱を起こした農民たちに降伏した、金益淳(キム・イクシュン)という人の罪を論ずる文を作ることでした。

 

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金炳淵は、たかが身分の低い農民なんかに降伏した金益淳は、国の王を裏切ったのと同じだとし、怒りをぶつけました。『王を捨てるとは親を捨てることと同じではないか。お前など、一度死ぬだけでは足りないだろう。一万回死んで当然であろう。春秋筆法を知らないとでも言うのか。私たちはお前のことを歴史に残し絶対に許さない』、などなど。春秋筆法とは、「悪いとされるやつのことは、実際よりさらに悪いやつのイメージで表現する」書き方を意味します。

 

一万回◯ね!は高評価で、金炳淵は郷挙に首席合格しました。彼は大喜びして、真っ先に母親にこのことを報告しましたが、詳細を知った彼の母親は、涙を流しながら、ある事実を告げます。その「農民に降伏した官吏、金益淳」が、実は金炳淵のお祖父様だったのです。農民に降伏するのは死罪で、本当は一家も死刑されるはずだったものの、金益淳と親しかった他の官吏たちの力で、金益淳の家族は罪を軽くしてもらい、人目の少ない地方に避難、幼い世代には過去を隠していたのです。「罪人の子でありながら祖父を罪人と叱る文で官吏になった」と自分を嘆き、金炳淵は全てを捨て、旅に出ました。それから彼は金・笠と呼ばれることになります。

 

それから全国を旅しながら数々の文を残した金笠ですが、ある日の夜、寝所に困り、町で特に大きな建物である書院を訪れました。書院とは、文官候補生たちが勉強する、今の言葉でいうと「予備校」のような場所のことです。書院を訪れ、一晩眠れる場所を求めた金笠ですが、書院の先生は、金笠を追い出すつもりで、『じゃ、ミョク(覓)を押韻して詩を作ってみな』と冷たく言いました。普通、覓の字を踏んで詩を作るなど、めったにありません。高難易度モードになります。これを「覓の難韻」と言います。

そこで、金笠はこう詩を作りました。「許多韻字何呼覓(他にも字は多いのに、よりによって覓だなんて)」。ふざけた内容ですが、一応、押韻したのは間違いないので、書院の人は困りました。そして、それからも三回続けて、「覓」を韻として出しました。

 

二回目『彼覓有難況此覓(あの難題をやっとできたのに、また覓だというのか)』、三回目『一夜宿寢懸於覓(今日の寝所の命運が覓の字にかかっているなんて)』、四回目『山村訓長但知覓(田舎の先生は、覓の字しか知らないのだろうか)』

またかよ俺オワタ、ええいヘル朝鮮、あのおっさん他の字は知らないっぽいヒソヒソ、そんなものです。とはいえ、押韻はできたので、とりあえず先生の負けとなり、金笠は書院の中で一泊できたそうです。

遊んでいるというか、皮肉っていると言うか、日本語でいうと頓知がある、そんな金笠の顔が、目に見えるようです。私が小学生だった頃は、さすがに文や詩の部分はハングルに変えたものだったけど、金笠は漫画や児童文学によく出てくる人物でした。個人的にも、彼はとても魅力的なキャラでした。朝鮮時代を背景にギャグ漫画などをよく書いていた、ユン・スンウン氏の作品に、特によく出ていたことを覚えています。

でも、金笠もまたハングルには見向きもせず、全ての作品を漢字で残した人だから、でしょうか。最近はあまり彼のことを耳にしなくなりました。

 

 

 

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