日本語の「書く」は「描く」なり

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古い文を今どきの文に訳する場合、字や単語それぞれの意味は間違いなく訳せたつもりでも、結果的には本来の文の意味がまったく伝わらない、または本当に読みづらい訳になることだってあります。だからといって、意訳するにも、どこからどこまでを意訳し、どこをどんな単語で代替すべきか、下手すればオリジナルの価値を損なうことにもなりかねないので、難しいところです。

でも、その文の意味合いをイメージして、同じイメージに合わせると、なんとかなります。「書かれた」文から、「描かれた」文をイメージするなら、時代を超えて、共通のイメージを生み出すことができるからです。もちろん、それは文ですから、絵として目に見えるわけではありません。目に見えるのは文字です。でも、その文が、『字』という絵の具で描こうとしたものを見い出せば、時代を超え、同じ意味を感じ取ることも出来ます。

 

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日本語で作られた俳句などを読んでみると、それは書かれたものというより、明らかに「描かれた」を感じることが多々あります。字だけでなく、書かれている全てが、ある種の絵を作り出します。

こう思ってみるのは、いけないことでしょうか。「『描く』は、『書く』より、ずっと高文脈的(ハイコンテクスト、具体的に言わなくても意味が通じる)な言語だ」。

 

雛人形を見に、南千住にある素盞雄神社に行ったときのことです。駅のロータリーに、小柄なおじいさんの像がありました。松尾芭蕉と書いてありましたが、どっかで見たことある名前だけど、誰だったかなと思いました。『芭蕉』の読み方が分からなかったので「聞いた」ではなく「見た」ことがある、です。気にしないでそのまま神社に向かい、珍しく道に迷わずに素盞雄神社に到着。須佐之男様とお稲荷様(神社内に小さな稲荷神社があります)に参拝し、ちょうど桃の花が咲いていたのでパシャパシャと写真撮って、欧米人と思われるキレイな女性の方から「あ、これは桃の花ですね?桜と梅の花とそっくり」と声をかけられ、私も見た目だけではよくわかりません~と急に仲良くなって楽しく会話したり、しばらく時間を忘れて楽しめました。あ、私が英語を使ったのではなく、女性の方が日本語でした。

 

神社の中にも松尾芭蕉さんのことがいろいろ書いてありましたが、俳句に関連した方なんだな、とは理解できました。参拝記念にいただいたシオリにも、先の像の方と、俳句が書いてありました。神社内には日本の俳句好きで有名な元EU大統領ヘルマン・ファン・ロンパイ氏のサインがあるなど、俳句とは良き縁に恵まれた場所のようでした。後で分かったことですが、荒川区は俳句の街だそうです。

どんどん興味が湧いてきたので、マホちゃん(スマホ)で『南千住 像 俳句』を検索してみて、まつおばしょう・・と読み方が分かり、あ、そうか、と気が付きました。あれです、あれ。カエル。俳句にあまり知識はありませんが、あれなら分かります。ふるいけや・カワズとびこむ・みずのおと。もともと有名な俳句でもありますが、私がまだ今よりずっと日本語が下手だった頃、初めて覚えた俳句なので、分かります。蛙の読み方がカエルではなくカワズという点以外は、一瞬で覚えました。なぜなら、一枚の絵を思い描くだけで、この俳句を全て覚えることが出来たからです。

 

「もうすぐ春だから蛙が池に飛び込んだようですがそれが何か」で終わることもできます。しかし、なぜでしょう。この俳句は、莫大と言ってもいいほどの余韻を残します。作者が蛙を「見た」のかどうかも不確かです。だから、作者を描く必要もありません。蛙を描く必要もありません。神社の中には、小さな川の形をした池がありました。桃の花が綺麗に咲いていて、その花と、ほんの少し池の水が視野に入るように立ち、そこから「水の音」を加えれば、本当は蛙が飛び込むような音はしないけど、あえて聞こえない音を加えれば、その場面だけでこの俳句の視覚化が成立します。

個人的にイチオシスポットでもある、富士宮の湧玉池を思い描いてみました。富士山からの綺麗な水が湧き出る池、周辺に咲いていた、本の少しエメラルド色の葉っぱが出ていた桜の木々、池の近くにある真っ赤な橋、小さな神社。そこに蛙が飛び込む音を頭の中で流せば、それは別の絵ですが、また成立します。別の場所、別の絵なのに、なぜか共通した余韻があります。きっと、共通した感覚が存在するのでしょう。

 

和風だから、ではありません。この余韻は、東西を超えることもありました。いつだったか、ディズニーランドのシンデレラ城の周辺にある池で、この俳句を思い出したことがあります。

ディズニーリゾートといえば楽しい乗り物、アトラクションがいっぱいありますが、私は待ち時間とかも好きではないし、アトラクションにはあまり乗りません。ディズニーシーの方の、シンドバッドとアリエルのショーだけ、歌が気に入ったので、何度も利用しました。私は、『公園』として楽しむのが好きです。入場料が高いのがたまに傷ですが、本当によく出来ている公園です。パレードが通りすぎ、誰もが楽しんでいる姿を見ると、なるほど、テーマパークというのは、テーマとパークの両方が優れていないといけないものだな、といつも気付かされます。余談ですが、三脚は使えませんが、夜景もまた特筆ものです。ディズニーランドに行くと、たまにシンデレラ城の周りにかかっているいくつかの橋を渡るたび、城周辺の池を眺めたりします。実は、ディズニーファンの方ならご存知でしょうけど、城の周辺には、城と池がよく見える橋がいくつもあって、ベンチも用意されています。とても大事なお土産を、そこで置き忘れしてしまったことがありますが、「インフォメーションセンター」などディズニーランドのスタッフの皆さんが、見つけてくれたことがあります。あのときの皆さんの親切さが忘れられず、さらに気に入りの場所となりました。神社の中の池の前で、あの場所を思い描いてみても、『古池や蛙飛びこむ水の音』が成立しました。子供の頃、蛙が実は王子だったという絵本を読んだからでしょうか。

 

 

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