韓国が目指す「結果の平等」。その恐ろしさ

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本ブログでは取り上げませんでしたが、仁川国際空港の正規職採用問題で、韓国では大きな騒ぎがありました。簡単にまとめると、政府(仁川国際空港公社)が、仁川国際空港の保安検査要員(非正規職)1900人を、正規職として直接雇用すると発表したからです。もちろん、待遇も相応の分、よくなります。

この件、普通に就職を準備していた人たちから、大きな不満が噴出されました。『ちゃんとした準備をしても就職できない人がこんなに多いのに、バイトを正規社員として採用するとはどういうことだ』というのです。これを、韓国では「イングックゴン(仁国空)事態」と呼びます。

本ブログで今日この件を取り上げたのは、韓国政府及び与党が、そんな不満を噴出する就業準備者たちを「マスコミのフェイクニュースのせいだ」「『金の匙』たちが愚痴を言っているだけだ」と話しているからです。

 

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大統領府はこの件を、フェイクニュースのせいだとしています。非正規職が大きな得をし、普通に就業準備している人が被害を被ったとする内容のマスコミ記事・報道はフェイクニュースであり、それに騙されているというのです。ちなみに、フェイクでもなんでもありません。与党の重鎮でもあるキムドゥグァン議員はまたこの件で、「数年間就業準備をしても問題無い『金の匙(金スプーン)』たちが、愚痴をこぼしている」と話しました。

 

すでに正規職として雇用すると発表した分は仕方ないとして、「これからはもっと幅広い意見を受け入れる」と言えばいいでしょうに、なんで政府・与党はここまで攻撃的な態度を取るのでしょうか。その理由は、文在寅政府の進む道である「結果の平等」を守るため、「機会の平等」を主張する意見を敵として見なしているからです。以下、「デジタルタイムズ」というネットメディアの、ホン・ソンゴル国民大学行政政治学部教授の寄稿文です。

<・・最近の仁国空事態、保安検査要員の正規職化をめぐる公正性論議を見てみよう。キム・ドゥグァン議員は、激しい競争をくぐって正規職を達成した人こそが不公平であり、彼らは何年も試験の準備をすることができる金スプーンだと主張した。

仁国空事態が悪化すると、大統領府はマスコミの偽ニュースのせいだと言った。大統領府の見方こそが、大統領府が持っている「公正」がどういう概念なのかを自ら吐露したものである。すなわち、文在寅政府は、試験の「機会」が皆に開かれている機会の平等ではなく、非正規職自体をすべて取り除く公正、結果の平等を目指しているのだ・・>

https://news.v.daum.net/v/20200629190343825

 

結果の平等については、2018年の憲法案を説明するエントリーでも少しだけ取り上げたことがあります。文在寅政府が、韓国流に変形された「民衆民主主義(人民民主主義)」を目指しているのは、随分前から明らかです。「政府は、人が生まれて死ぬまで責任を持つ」とか言ってましたから。

大統領選挙の前、「文在寅は共産主義者だ」と話して、まだ裁判を受けているコ・ヨンジュ弁護士は、「共産主義は、昔は、『私も民主主義だ』と主張していた。しかし、文在寅政府の共産主義は、『私こそが真の民主主義だ』と主張している」と話しています。

 

北朝鮮は、「成分」というものを基準にして、人を50以上の階級で分けていると言われています。成分は、生まれと実績によって決まります。よって、貴族(労働党幹部)の子は、貴族として生きることができます。

その階級の中には、「人」に入らない人たちもいます。例えば、強制収容所の人たちは、成分が低過ぎで、「人(人民)」ではありません。言い換えれば、北朝鮮が言う「結果の平等」というものの平等とは、階級に応じて決まるものでしかありません。そういうこともあって、私は、北朝鮮の人民民主主義(韓国では民衆民主主義とも言います)でいう「結果の平等」という言葉を聞くと、「いや、それ、共産主義ですらない」と思ってしまいます。新しい身分制でしかありません。そんなもの。

とはいえ、そういうものでもなければ、韓国社会の「公正」という無茶な要求を満たすことが出来るのだろうか・・・そう思うと、複雑な心境です。

 

 

 

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