1966年、金大中氏も『韓国政府が民間に補償』に反対せず

古い記事をいくつか読んでみたとして、何か凄い知識が身につくわけではないでしょう。ただ、主張や意見を書いた記事ならともかく、ある事案に対する社会の雰囲気、事実関係、関連データなどを書いた記事は、読んでみると確かに「ふむふむ」と、相応の満足を得ることができます。それは、明らかに価値のある資料です。だからこそ、韓国が併合時代の資料・記事に対して「実証的アプローチ」を極端に恐れているのでしょう。いまでは、『日帝の圧力で仕方なく書いた(と言いつつ何故か総督府への非難も多く、ほとんどハングルで書いてある)』とされるそれらの記事。『昔の記事のアーカイブだから価値がある』という名分でかろうじて生き残っているそれら。個人としての狭い範囲ではあるものの、それらの記事を辿るのは楽しく、最近のマイブームでもあります。

 

ちなみに私が利用している記事アーカイブには、新聞をキャプチャーした画像だけでなく、各記事のハングルテキストも提供されています。一部ちゃんとスキャンされていない部分もあるのでとても助かっています。しかし、例えば南総督を『ナム(南)総督』と書くなど、逆に訳わからなくなっている部分も多く、誤字が多すぎ、たまに誤訳、そして何より、せっかくのハングルテキストなのに、著作権保護を理由に「右クリック」禁止なので機械翻訳が利用できないこと、東亜日報しか無いことなど、いくつか不満点もあるにはありますが、重要な資料の倉庫なのは間違いありません。

そんな中、間接的にではありますが、金大中氏も事実上『民間請求権(個人、法人など)は、日本ではなく韓国政府が補償すべきだ』という方針に同意していたことが分かりました。氏が直接そう言いだしたのではないため、金大中氏というより、『金大中氏及び民衆党』と書いたほうが正確でしょう。金大中氏も民衆党も、政府が出した『政府が補償する』案について、細かい内容には異論を出しながらも、政府が請求権資金から民間に補償すること自体には、政府側と意見一致していました。

 

 

言うまでもなく彼は韓国左派にとって伝説的なリーダーであり、李承晩氏の没落と朴正煕氏のクーデターの間に存在した民主党政権(1960年~1961年、政権維持は約1年)を除くと、韓国で初めて誕生した左派政権・左派大統領でもあります。1965年当時、野党『民衆党』のスポークスマンだった金大中議員。彼が、『韓国政府による民間補償』にどんなスタンスだったかを、当時の記事から追ってみます。

時系列的に、『請求権運用に関する法律(2017年2月)』が制定される前となります。政府が出した法律案をおいて、国会で与党・野党が激しく衝突していた頃、1966年6月のことになります。もともと基本条約の締結前には、激しい反対デモ、反日デモが起きました。しかし、デモ慣れ(?)した朴正煕氏ならではの耐性というか何というか、1964年6月(いわゆる6・4抗争)を頂点に、反日デモの勢いは右肩下がり。1965年には基本条約が締結されます。いざ締結のあとには、いろいろと文句は多かったものの、条約そのものを認める動きが主流となります。なにせ、韓国社会では請求権資金が大きな話題になりますが、それは基本条約、請求権協定を認めてこそのものでした。各記事で請求権資金の運用が『決して選挙対策になってはならない』と指摘しているのを見ても、国民からかなり望まれていたのでしょう。

いまなら間違いなく『協定は無効だ』としながら野党議員全員が国会をボイコットするはずですが、1966年のほうが遥かにマシだったようです。市民団体や学生たちからは協定無効を要求する声もあったものの、政府・与党と、「民衆党」を中心とした野党側は、ちゃんと国会で議論を続けていました。過去エントリーで紹介した「請求権資金の運用及び管理に関する法律」は、この時には政府側からの『案』として国会に上程されていました。政府と民衆党の間は、同意する部分も、同意しない部分もありました。当時、金大中氏は、その民衆党の重心人物の1人で、党のスポークスマンでもありました。

 

 

民衆党がどこに反対していたかというと、大まかにこの4つです。

<・・野党の代案の核心は、①請求権管理委員会に国会議員は参加しないこと、②(※請求権資金を使った事業に)事業計画に対する国会の事前承認が必要、③無償資金による民間補償、④政治資金防止のための(※請求権資金が政治資金化するのを防ぐための)罰則の強化などと要約できる。民衆党のこのような代案に対し、政府は・与党では、民間補償問題に関しては賛成の意を表し、政治資金防止のための罰則にも反対を示していない。ただ、もっと問題になっている国会議員の不参加と国会事前承認については、鋭く対峙している・・(1966年2月7日京郷新聞)>。

 

注目すべきは、請求権資金運用においての『力比べ』をしている、いわば政治的な側面での反対が強く、『韓国政府の民間補償』にはむしろ意見が一致していました。最終的には『請求権資金全体から(無償資金以外からも)補償する』となったので、むしろ民衆党の案は、民間補償金額の範囲を狭く設定していたことになります。ただ、実際に民間補償に使われたのは「無償資金」枠でしたので、民間補償においての政府の方針と金大中氏の民衆党の考えは、一致していたことが分かります。

そして、6月27日、民衆党の公式案にも、『韓国政府が補償する』に異論はありませんでした。その案を紹介して、終わりにします。最終的にどういう法案になったかは、上にリンクした過去エントリーの法律内容を見てください。

 

 

<(題と見出し)民衆党から代案・・請求権補償法案

政府が提案した対日請求権補償法案を審議するために用意された民衆党の補償法審議対策委員会は25日、政府の民間人被害補償率、日貨360:ウォン貨270を現実に合わせて修正し、死亡者に対して10万ウォン、負傷者に5万ウォンを支給するようにする民衆党の代案を用意した。

キム・サンフム議員が発表した民衆党の代案を見ると、①過去日本政府によって軍人または単独及び労務者として徴用され、外地で死亡した者には10万ウォン、負傷した者には5万ウォンとする ②負債評価基準は当時の日貨はドル貨との比率を勘案して現実的に補償すること ③補償地域は日本が占領していた地域を全て含めること ④政府案による9人の補償委員は5人に減らし、その機能を円滑にするために委員を交流させること、となっている(1966年6月27日毎日経済)>

 

 

 

 

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