「たまには、こういう話はどうでしょうか」なエントリーです。
弘益人間・在世理化という言葉をご存知でしょうか。弘益人間は「広く人間に益を与える」という意味で、在世理化は「世の中を教えて目覚めさせる」という意味です。もともとは檀君神話に出てくるもので、いわば「上古史(サンゴサ、5千年の歴史など、考古学的には認められていない歴史)」ネタの一つです。ですが、私は「どうみても朝鮮儒教の世界観だ」と思っています。広く人間に益を与えるというのは、正しい上下関係を意味します(人は道徳の中に縛られてこそ益を得るものであり、もっともゆらぎのない道徳とは、徳があまり無いから『下』の身分で生まれた者が、すごい徳を持つから身分も高い『上』に従うことである)。ちなみに、そのルールの中にいないものは、『人間』カテゴリーに入りません。
「在世理化」もセットで考える必要があるでしょう。在世理化は、その上下関係の基になる「教え」を聖域化しているだけです。檀君神話や古朝鮮というのが、朝鮮時代の両班(特に両班の中心勢力だった儒教徒)の手により広まったことがよく分かります。朝鮮末期、朝鮮の支配勢力は『この世で最も人に益を与えるシステム』である自分たちのシステムを守ろうとしたし、根拠のない民族主義を武器としました。檀君神話を利用しない手はなかったでしょうし、その過程で儒教的な解釈がされたのではないか、と私は思っています。というか、5千年前の国の教えが漢字でしか残ってないのも妙な話ですし。
でも、韓国、特に教育界では、弘益人間・在世理化、特に「弘益人間」は、無視できない影響力を持っています。教育基本法にもちゃんと書いてあります。異論を許さない『一民主義』を主張した李承晩政府も、同じ理由(自分の言う通りにするのがもっとも人のためである)から、弘益人間を強調し、そのまま韓国の教育理念になり、今に至ります。左派政府でも、檀君由来の教えなので、これといって問題化されたことはありません。
ですが、最近、韓国の教育界の内外で、「もっとも人に益を与える社会システムなら、弘益人間ではなく、『民主市民』としたほうがいい」という指摘が相次ぎました。そもそも弘益人間って概念も曖昧で、最近の「民主化・個人化・多文化の共生」などを弘益人間で教えられるのか、という問題意識があったからです。
私は、この件についていくつか私見を持っています。まず、言葉通り、弘益人間そのものが教育理念としてふさわしくない、と主張する人たちもいるでしょう。それなら問題ありません。次は、教育理念を「民主市民」にすることで、韓国左派の支えである市民団体の活動をもっと『教育的』なものとするためでありましょう。「民主主義」にすればいいものを、わざわざ「民主市民」にしている時点で、バレバレです。単に『漢字』を理解できる子が少なくなったこと、も無関係ではないはずです。曇った見方です、はい。
この件、改正を支持する人たちは、妙なことを主張しています。実は弘益人間は新日だ、というのです。中央日報からの引用です。
<<・・(※教育界の報告書には)「弘益人間という表現を親日勢力が作ったという主張も含まれた。調査報告書は、『1次調査で。弘益人間は解放直後、親日教育界の人々が主導して作成した表現であり、日帝強占期、皇民化教育を象徴した八紘一宇(太平洋戦争の時期、日本軍国主義のスローガン)を模倣した概念であるなどの異論が多数存在したと書いた・・>>。
別にどうでもいいけど、「5千年前からあった、民族の教え」という設定はどこいったのでしょうか。というか、これだと檀君も親日になるのかもしれません。
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