日本側ではよく「ウリとナム」と表現されますが、韓国では敵と味方を明確に分けることで、自分または自分側の正当さを主張する動きが蔓延しています。旧ブログの頃から私の持論として書いてきた『社会の全ての分野が、極端に分かれた二つの勢力が対立することで成り立っている』が、まさにそれです。
「恨(ハン)の民族」という言葉が普通に使われているほど、自分以外の誰かのせいにして恨むことを容認してきた世界観のせいでしょうか。自分側の正当さを、相手側の不当さから見出そうとするこの動きは、数十年前からずっと韓国社会の問題として指摘されてきたものの、改善の兆しは見えていません。最近は、ガラチギ(갈라치기)という言葉が流行っています。分裂、分断させるという意味です。あえて国民が両分されるように仕向けることで、支持を得る政策などを指します。そして、その「分ける」のためにもっとも効果が高いのが、善悪論、いや善悪論もどきです。そんな記事があったので、紹介します。オチは少し後にして、以下、文化日報から引用してみます。<<~>>が引用部分となります。
<<・・(※なにかの政策において、『悪』と『善』を分けることで正当さを得ようとする、という趣旨で)現政権のガラチギは、分野を問わない。昨年7月末、与党が野党の反対を押し切って、何かの軍事作戦のように成立させた「賃貸借3法」は、家主と家を借りる人(入居者)の間の対立と葛藤を最大化させている。入居者が契約更新要求をしやすくなったが、その分、大家は法律相談を受けたり、これ以上は家を貸さなくなる。外交分野では強制徴用賠償問題から始まった日本の半導体素材の輸出制限に対応し、李舜臣将軍、竹槍歌まで動員しながら「親日」「反日」の構図を明確に分けた。
ガラチギ政策の中でも圧巻は、最低賃金引き上げであった。 2018年・2019年の2年間の最低賃金が30%近く上がると、自営業者の間で「従業員の給料を与えると、残る金が無い」と悲鳴が上がった。「社長」といっても、収入はサラリーマンにも及ばないコンビニやカフェの経営者たちが、職員に最低賃金も払わない悪徳資本家にされてしまい、「存在論的」に悩むハメとなった。
最近、広州の討論会であるカフェの所有者は、「本物の庶民の生活を全然知らない大金持ち左派政治家が、『時給1万ウォンも払えないなら店なんかやめてしまえ』と何の迷いもなく言い出す」と、積もった鬱憤を吐いていた。
じゃ、ガラチギのもう片方であるアルバイトや従業員は幸せになったのか。それまで働いていたコンビニ、カフェ、食堂から解雇され、数十、数百対1の競争をくぐって得る仕事も、良くて週休手当て無し週15時間未満のものばかり。求職者もいよいよ「現実自覚タイム」に入った。中小企業中央会の最近の調査では、求職者48.1%は「来年、最低賃金を凍結しなければならない」と答え、15.7%は「最低賃金を下げなければならない」と答えた。10人のうち6人以上の求職者が最低賃金の上昇が自分の仕事を脅かすという現実を悟ったのだ・・
・・ガラチギは、被支配層の分裂を助長し、団結した力で支配勢力に対抗できないようにする「分割統治(divide and rule)」の一種である。古代ローマ、中国が、異民族支配のために頻繁に使ってきた統治術である。ところが、韓国は、1つの社会、経済共同体の中で、ガラチギがここまで横行している。すぐには自分自身に得になるかもしれないし、「土地を買った親戚」だけが苦労をするように見えるだろう(※韓国の諺『親戚が土地を買うとお腹が痛い』から、土地を買った親戚とは「豊かな人」のこと)。でも、終局は、お前も僕も関係なく、誰もが損をすることになる。国民自ら覚醒して対抗しなければ、権力者たちは、ガラチギの甘い誘惑から抜け出せないだろう>>
いわゆる「善悪論もどきで政策を正当化させるのはやめろ。国民ももう騙されるな」という趣旨の記事です。韓国の記事としては、書くべきことを書いたと言えるでしょう。
でも、私は、ガラチギがここまで容易に成立する社会の場合、その社会で暮らしている人たちもまた、『分け方』に依存している側面があると見ています。『楽に暮らしたいなら、群れを成さずにはいられない人たちに交ざるがいい。自分という存在が無くなるまで』というニーチェの言葉が、あまりにも的確にあたっています。
・・・じゃ、オチに入りましょうか。このガラチギ、引用部分でも言及されていますが、代表的なものが親日だの反日だの、そんな騒ぎです。ですが、実はこのガラチギということば、語源が、日本で作られた囲碁の用語、『割り打ち』です(韓国では囲碁の割り打ちを『ガラチギ(分ける打ち)』と言います。『日本』たる存在をこれだけ「ガラチギ」に悪用しながらも、結局は日本で作られた囲碁用語を使うしかない。これはなんという喜劇または悲劇なんでしょう。
拙著『恥韓の根源』にて、韓国の歴史歪曲絵本『恥ずかしい世界文化遺産・軍艦島』を紹介しながら、その絵本の主人公の一人の名前が「シェドリ」で、その名前はマジンガーZが韓国で放送された時、主人公(兜甲児)の名前として使われたもので、その分、韓国では親しみのある名前だ・・という点を指摘しました。それと似ているような、似てないような・・そんなところです。
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<「自由な国」日本から見えた「不自由な国」韓国 韓国人による日韓比較論>が発売中(2021年4月29日発売)です。日本滞在4年目になって、日本で手に入れた日常、そして、ラムザイヤー教授の論文にまつわる話、それらから見えてきた、日韓比較論です。
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