訪北した記者が、現地案内人に聞きました・・「あの、首領がいるのに、なんで人民『民主』共和国なんですか?」

盧泰愚大統領のとき、実際に北朝鮮に行ってきた韓国記者協会イ・ビョンド(元)副会長の記録を紹介します。どことなく、昨日紹介した主思派が何で「考える力が無い」と言われたのか、脈略が繋がっている気もします。『人間は自分の世界の主体であるが、人間は社会的でないと力を発揮できないため、人間の世界の主体は金日成である』という流れが、主体思想の本音ですから。以下、『時事今日・時事ON』というネットメディアの記事です。 <<~>>が引用部分となります。

 

<<・・現実は、やはり重要である。筆者は、盧泰愚政権の南北高位級会談の時、平壌を訪問したことがある。いまの北朝鮮は、あのときとは各論的には多少の変化があると見ることもできるが、総論的な面では、基本的には、今も変わってないというのが筆者の判断である。当時の取材日記を引用し、北朝鮮の「現実」を再確認したい。

筆者を担当した案内員は、「金亨稷(金日成主席の父)師範大学」の「思想史」専攻教授だった。推測だが、筆者の個人的性向を事前に分析、北朝鮮当局が理念的に色が透徹した彼を筆者の担当にしたのではないだろうか。筆者は、平壌訪問中にありありと見て、聞いて、感じて、また会話して、今日の冷静な「南北の現実」と関連して、いろんなものを受け止めることができたといまでも思う。

まず、筆者はその北朝鮮政権が粘り強く掲げてきた、いわゆる「主体経済」の虚構性に公開的に怒ったことがある。同行した韓国側の人たちから、訪朝の趣旨もあるので、「ちょっといい加減にしなさい」と阻止を受けたりしたが、北側の現場の実像は、筆者としては落ち着いていられるものではなかった。北朝鮮当局が、私たち一行に『治績』を誇示するために案内した近代的な『住民利用物』(平壌産院などのインフラ)は、韓国に比べても派手で、ドイツのシーメンスや外国産大理石など外国製一色の輸入装備で飾られていた。筆者は、当時一般住民の苦痛と飢餓に満ちた北朝鮮民生経済の実状を思い浮かべ、その現場で「これがあなたたちの言う主体経済とやらの実状だというのか」と公開抗弁したことがある。その象徴は、彼らが言う「主体経済」の政治的ではなく、逆に、北朝鮮政権が追い込んでいる、経済を破綻させる理念のシンボル、確実な証拠にしか見えなかった。

もう一つ、民主と独裁に関する議論があった。筆者は、案内員の教授に尋ねた。「あなた方は、国号を『朝鮮民主主義人民共和国』と言うけど、民主主義という用語を使っているのに、事実上は首領独裁をしているので、国号が間違ってませんか?」。案内員の返事の要旨は、こうだった。 「金日成同志は、自分が指導者をしたくてしているわけではありません。人民が崇めているから、仕方なく指導をしています。だから、我々は徹底的に民主主義をしているのですよ」。最も基本的な人権である、ほとんどの人民の生存権さえ脅かされている状況の中で、彼らが掲げる「民主」という概念は、まさにこのようなものだった。

これと共に、筆者が訪問中に目撃した主要な現場で、山が崩れている事実を見過ごすことはできない。列車に乗って平壌駅に到着するまでの数時間の間に、私は注意深く山を観察した。どの山も、はげ山ばかりだった。北朝鮮側が戦略上「観光特区」にしている金剛山や白頭山などは違うだろうが、一般の山の姿は、あまりにも惨めなものだった。治山治水は、国力の根本である。一つの国がどこへ向かうのか、その興亡の未来は、真っ先にその国の自然の状態で検出される。これは古今東西の真理であろう。

壮大な理念の論争を排除しても、「北の現場」は、すでに『実質』から外れ過ぎで、戻すこともできないほど、虚偽、嘘、詭弁の沼に深く陥っていた。これが、筆者が確認した「北朝鮮」の実体であった・・>>

 

『理念』『実質』などの単語は原文からの直訳です。『実質』を見ようとせず『理念』だけを見てしまい、なんのために戦っているかも見失い、考える力を失った・・という、昨日のチェ・ジンソク教授の話。その延長線上にあると思いました。

 

 

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