2005年の記事が話す『ツートラック』の定義

韓国の「ツートラック」というと、一般的には、「いわゆる過去史(過去の歴史)問題で衝突しているからって、全体をダメにしてはいけない、だから、歴史問題以外の分野では協力しよう」という概念として知られています。文政府もそんなニュアンスで言っているし、日本側にもそう伝えられています。

例えば、2018年2月1日の日経新聞にも、「韓国の文在寅大統領が掲げる『ツートラック(2路線)』は、日韓の溝が深い歴史問題と、協力可能な分野を切り離す政策だ。日韓関係全般が慰安婦問題に振り回された朴槿恵前政権の否定だが、日本側は政府間取り決めを蒸し返したり、関連団体の活動を支援したりする文政権に強い不信感を抱いている」となっています。一般的には、そういう解釈でもいいかもしれません。

しかし、ツートラックの本来の意味は、そういう合理的なものではありません。北朝鮮が言う「朝鮮半島の非核化」に「米軍撤収(核兵器の仕様に繋がる全ての要因の除去)」が含まれているのと同じく、ツートラックが韓国政府の『公式』政策になったときから、そこには別の意味があります。ツートラックが韓国の公式外交政策になった直後のの記事によると、ツートラックの定義はこうなっています。引用部分に靖国神社が出てくるのは、当時、小泉総理の参拝で韓国側が強く抗議していたからです。

 

「21日、盧武鉉大統領と外交・安保関連の長官たちが出席した閣僚戦略会議で、『ツー・トラック(Two Tracks・二つの通路)外交』を韓日関係の基本的枠組みと定めた。これは、両国の基本的な友好関係や国益のために必要不可欠な事案は継続するが、それ以外の選択可能な交流は行わないということを意味する。靖国神社を参拝した日本の政治家と閣僚に対しては、韓国に出来る限りのレベルで、対応に差をつけるという方針も含んでいる(2005年10月26日東亜日報日本語版)」。

 

このように、そもそもツートラックとは、『日本と話し合って、歴史問題とそれ以外を区分する』ものではありません。韓国が、日本との関係において『必要不可欠』か『選択可能か』を決めます。事実上、この基準でもっとも強力なのが、歴史問題です。実際、戦後両国関係の基盤になっていた基本条約、日韓請求権協定なども、歴史問題の前で崩壊しているではありませんか。

ツートラックと聞くと、普通は「トラック1が歴史問題で、トラック2がそれ以外だから、トラック2はトラック1にはひっかからない」と思われるでしょう。でも、実は、トラック1と2どちらかが歴史問題なのではなく、トラック1と2を分ける核心の基準が、歴史問題です。それを、文政府は『それっぽく(歴史問題とそれ以外を区分するようなニュアンスで)』言っているだけです。例えば、韓国が『経済』や『企業活動』を『必要不可欠なもの』にした、と仮定します。日本企業からすると、『それはそうだな、経済は歴史問題とは別だよね』と思って韓国への投資を決めるかも知れません。しかし、『歴史問題とは別』ではありません。

結局は全てが歴史問題でひっかかります。なぜなら、歴史問題が『必要不可欠と選択可能を分ける基準』だからです。言わば、韓国にとって「日本との関係そのもの(全体)」と「歴史問題」の関係は、『ワンフォーオール(全体のための歴史問題)』ではなく、『オールフォーワン(歴史問題のための全体)』です。こんなデタラメな基準によるトラック分けに付き合う必要はありません。日本がどんなトラックを選んでも、そこにはかならず歴史問題が潜んでいることでしょう。

オチが無いのか最初から最後まで全部オチなのか微妙ですが、書きたくて書いてみました。

 

 

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