ローカルメディアのコラムですが、政治学博士チョ・サンジン氏の主張を紹介します。朝鮮は中央集権が強すぎで、しかも中国に事大することしか知らなかったので、後に民衆の代表になり、相応の専門的な実力と資金を持つ「ブルジョア階級」が発生しなかったという話です。それが、朝鮮の市民社会化を遅らせてしまった、と。以下、忠清南道地域のローカルメディア、忠南新聞から引用します。<<~>>が引用部分となります。珍しく引用部分に『日本』という字が出てこないエントリーです。
<<大金持ちに対する否定的な意味で使ったり、労働現場では階級理論として使う、『ブルジョア』という言葉がある。その語源は、西洋史の中世時代にさかのぼる。朝鮮の歴史を封建制だと思っている人も多いようだが、朝鮮半島で封建制が施行された歴史はない。中国大陸でも、「周」が試しただけで、それからはずっと、『中央集権制』だった。
中世イギリスなどヨーロッパは、国王と地域領主の間に、権力バランスが維持されていた。国王は領土拡張のために兵力が必要であり、領地を与えられた領主たちは、自ら軍隊を運営しながら領地住民たちを管轄し、国王から相応の権力を与えられたのだ。そのため、領主たちは城郭を作って、参謀などと一緒に城内で生活しながら、軍隊などを育成した。住民たちは小作農や軍人として領主に忠誠を誓い税金を払った。領主はいざというときに兵隊とともに参戦するなど、王に忠誠を誓った。
封建とは「分けてやって、国を建てる」という意味だ。権力構造として、『地方分権制』の性格を帯びている。中国の周国が、血族を対象に封建制を試みたことはあるが、中国はそれからずっと中央集権制だった。中国に事大した朝鮮は、属国扱いだったし、封建制が施行されたことは無い。
中世ヨーロッパのほとんどの国は封建制で、特に英国とフランスは最大の領土国家として封建制が代表的だ。領主が生活する城の内部では、医師、法律家、将校、武器技術者なども一緒に暮らし、彼らも領主から土地をもらい、小作農と契約を結んでいた。彼らを、「城内に住む」という意味で、イギリスではジェントリー(ジェントルマン)、フランスでは「ブルジョア」と呼ぶようになった。
君王の横暴が激しくなると、小作農たちの負担が過重になり、政治的葛藤も深化した。その間で、ブルジョアたちは権力者に対抗し、民主的代弁者として前に出るようになった。彼らは知識も専門性を蓄積してきたので、中間階層の身分として権力に対抗できる実力と、資金も持っていた。中世以後、王朝国家を崩し、自由民主主義時代を開いていく上で決定的役割を担った主役は、彼らブルジョアであった。ブルジョアは封建制度の産物でありながら、民主市民の礎石となったわけだ。しかし、朝鮮半島は中国への事大だけにこだわっていたため、ブルジョアが形成されず、近代市民社会への発展が遅れた一因にもなった・・>>
制度に関する見方の差はあるでしょうけど、明治維新とかもそうですね。コラムではブルジョアだけを強調していますが、その『民衆』も同じでしょう。長い間、実力を蓄積してきた人たちがいて、彼らが前に出て、そして、民衆も読み書きができるなど、新しい社会に適応できる力を身につけていた・・それが改革を成功させたわけです。
このコラムが目に入った理由は、最近、韓国は『地位』という言葉を乱用し、『韓国は何もしなくていい』、すなわち日本も米国も、韓国には何もできないという主張が広がりつつあります。それは、地位が高いというのは『なにもしなくていい』ことだと考えていた、朝鮮時代の両班(ヤンバン)のそれと、同じに見えます。
ヤンバンはいたけど、良い意味でのブルジョアはなかった。実力と志を持ったブルジョアは消え、大金持ちへの否定的意味だけが残った・・そういったところでしょうか。
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