日本関連、北朝鮮関連でもなかなか奇々怪々な発言が多く、本ブログでも何度か取り上げたことがありますが、「国立外交院」という組織があります。民間シンクタンクではなく、韓国政府(外交部)傘下の組織で、韓国政府の外交関連でなかなかの影響力を持っている、と言われています。
その国立外交院の長、洪鉉翼(ホン・ヒョンイク)院長が、「ウクライナ事態は、ウクライナが戦略的曖昧さに失敗したからだ」と主張しました。発言そのものは、ロシアがウクライナに侵攻する前なので、スルーしようかとも思いましたが・・昨日の記事にも似たような趣旨が出てくるし、一部の韓国メディアがこの発言に同調する広がりを見せています。こんなタイミングでよくもこんな主張が広がるものだな、そんな気がして、エントリーしてみます。まずは、問題の発言があった先月21日の記事を見てみましょう。毎日経済、ホン院長の部分だけ、引用してみます。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。
<<ホン・ヒョンイク国立外交院長は21日、「ウクライナ事態のように国家安全保障において、どちらかに偏る外交をすれば非常に危険だ」と明らかにした。ホン院長はこの日、統一研究院、国立外交院、国家安保戦略研究院が共同主催した「南北基本合意書発効30年」記念学術会議で、南北関係進展のためにも米国と中国の間で政府の安定した外交行動が重要だと強調した。ホン院長は「ウクライナがNATO加入でロシアを刺激したのが戦争の危機で打ち明けている」とし「米国とロシアのような強大国を勝手にできると考えたせいで、国家が存亡の危機に瀕した」と指摘した。一方、「私たちもウクライナ事態を見て、米中両側と平和を維持し、片方に偏らない友好関係を維持しなければならない」と強調した・・・・ホン院長は「文在寅政府が南北関係を前進させているのに、トランプ大統領は金正恩との約束をきちんと守らず誠意を見せなかった。バイデン政権も、原則的な対話の扉だけを開けておくとし、積極的に北核問題解決に乗り出さない」とし「北朝鮮にも責任があるが、結局、南北関係が進展しないようになったのは、米国の政策によるものだ」と指摘した・・>>
記事を読んで、ああ、すごいな、この人・・と思いました。似たような趣旨の記事は先月どっかで読んだ記憶がありますが、ちゃんと読んでみるとすごいですね。すごいにもいろいろ方向性がありますが。一つ前のエントリーでお伝えした、「ぞろぞろ出ていく各国代表たち」の絵が、頭の中で程よくオーバーラップされます。余談ですが、他の参加者たちの発言もなかなかのもので、何の学術会議かよく分からなかったりします。
さらに問題なのは、このような発言が、一部のメディアから『受け』がよく、広がりを見せている点です。不幸中の幸いというか、大手ではないし、左派寄りでもハンギョレ新聞のようなところはちゃんとロシア側を非難する記事を出しています(記者にもよりますけど)。でも、調べてみたらそこそこ有名なメディアからも、似たような趣旨の記事が見え、「ホン院長もこう言っている~」がある種の論拠のように使われています。分かりやすいのが、ノーカットニュース(クリスチャン放送CBSの非宗教部門ニュース)、3月1日の記事です。
<<・・ホン・ヒョンイク国立外交院長は最近、討論会で、ウクライナと似たような立場の韓国も「ウクライナ事態を反面教師として、米国と中国の両側と平和を維持し、決してどちらにも偏りすぎず、両側と友好関係を維持しなければならない」と言った。ロシアの侵略行為は批判されるべきで、ウクライナに対する支持と連帯は人類共同体の神聖な義務といえる。しかし、ウクライナをこんな状況に陥れた指導者(※ゼレンスキー大統領)に対してまで擁護する理由はない。国際政治の冷静さを忘れるなら、ウクライナの本当の教訓を見逃すかもしれない・・>>。 他にもソース記事は『ウクライナは核を諦めたのも大きな理由』、『他国への依存を捨てて、団結すべし』とし、不必要なほどゼレンスキー大統領を責めています。どことなく、北朝鮮が強弁している内容と一致するようにも見えます。他にもホン院長は、MBCとのインタビューで『ロシアは韓国にとって重要な国』『韓国が独自制裁を早めに発表したなら、それはそれで非難されただろう』などと発言しました。
このホン・ヒョンイク氏の主張(似たような主張をする人たちが結構いるのでこの人だけの問題でもありませが)は、一見、『どちらにも偏ってはいけない』としているように見えますが、実は違います。明らかに応援する陣営を前もって決めておいて、それ以外が有利になるような展開では、『偏ってはいけない』とそれっぽいことを言うだけの、結論ありきの主張にすぎません。その過程で、客観性は著しく壊れていきます。なにせ、『陣営』を決めてあるので、ロシアや中国、もちろん北朝鮮に対しては、何があっても決して非難などしません。何が何でも日米が~日米が~ うわあぁぁぁ そんなものばかりです。
一例として、2015年3月5日マーク・リッパート、当時駐韓米国大使が、親北+反日(竹島関連団体代表でした)活動家から攻撃されたとき、当時「世宗研究所」という民間シンクタンク首席研究委員だったホン氏は、「米国の政策のせいで発生した事件であり、犯人が親北かどうかの問題ではない」、「米国の東アジアの政策が、日本側にあまりにも傾いている。だから、反日を目指す人が、反米になってしまう問題が発生したのだ」と分析しました。ソースは月刊朝鮮(ホン氏が国立外交院長に内定された2021年8月のものです)です。
この発言当時、同じく月刊朝鮮の記者がホン氏に電話をかけて「今回の事件と米国と詳しくどんな関係があるというのか」と聞いてみましたが、当時のホン院長は『犯人はもちろん悪いけど』という前提のもと、『米国が日本を明らかに擁護しすぎるから~』と、同じ詭弁を繰り返しました。今回の、「ロシアは悪いけど~」と、まったく同じ展開にしか見えません。外交専門家の中に、こんな人がいる・・それは、問題ではありますが、ありえないとはちょっと言えないかもしれません。でも、政府傘下のシンクタンクに、こんな人が院長となって、国家レベルの外交に影響力を発揮していること。これは『ありえない』とハッキリいえます。そしてそれが、文在寅政府の外交結果でもあるわけです。なんだかんだで、今日は3つのエントリーずべてウクライナ関連のものとなりました。一日でも早く、ウクライナに平和が戻ることを願います。民間人が住むビルにロケット弾が撃ち込まれる動画を見てから、もう悲しくて仕方がありません。
あ、そうだ。書店めぐりしてきました。おかげさまで、拙著『卑日』、無事、発売となりました。3つの書店をまわってみましたが、平積みになっていて、本当に感謝の言葉もございません。ちょうど私の目の前で手にとってくれた方もいて、本当に本当に嬉しかったです(『あの、サインいかがですか』と言いたかった)。これからも頑張ります!!!!!!ありがとうございます。 次の更新は、また明日の8時~9時あたりになります。
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