保守か、進歩(左)かによって多少の差ははありますが、もう2年ぐらい前から、韓国では「新しい日韓共同宣言が必要だ」という主張が続いています。
代表的に出てくるのが、1998年日韓共同宣言(21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ)、韓国で言う「金大中・小渕宣言」です。その宣言を継承・発展させるための『何か』の場を用意する、または新しい宣言、例えば尹錫悦・岸田文雄宣言のようなものをやって、再スタートの象徴としよう、そんな趣旨です。2020年11月、朴智元国家情報院長が菅総理(当時)と会ったときにも、新しい宣言の話をした、と言われています。
韓国政府は公式的には何も言っていませんが、文在寅大統領がパク院長を介して伝えた案だ、という話もありました。それからも、似たような話が何度も何度も出てきました。そして、昨日(3月23日)、亜洲経済にまたこの話が載りました。この共同宣言は、尹当選者が日韓関係において話した「3つ」にも含まれています。だから、尹政権での日韓関係について書きながら、この話が必要だったのでしょう。とはいえ、日本の早稲田大学で国際関係学博士になった人が書いた記事なのに、出てくるのが共同宣言だとは、困ったものです。しかも、「いまから準備しないと間に合わない」とも。
ちなみに尹当選人が話した関係改善(?)策は、「シャトル外交の復元」、「数々の案件の一括妥結(いわゆるグランドバーゲン)」、そして「日韓共同宣言」です。これ以上の具体的な話は、何一つ出ていません。『オチ』はちょっと後に書くとして、以下、まずは亜洲経済から引用してみます。<<~>>が引用部分となります。
<<・・今、韓日関係は複雑すぎで、多層的に絡み合っている。これを一つ一つ慎重に解いていくには、時間がどれくらいかかるか分からない。時間をかければ解けるのか、それも分からない。問題が複雑に絡み合っているほど、文字通り「一刀両断」が必要だといえる。韓日関係に転換を設けたと評価される金大中大統領と小淵惠三日本首相の「21世紀の新しい韓日パートナーシップ共同宣言」も、韓日関係が絡み合っていたときに出たものだ。前任キム・ヨンサム大統領の対日発言と、IMF外国為替危機の時に日本が見せた冷たい態度などで、対立が盛り上がっている時だった。
日本の大衆文化開放問題をめぐり、韓国内の反対世論も激しかった。世論を見て、いろいろ考えたら不可能だった、そんな宣言だ。金大中・小渕宣言を可能にしたのは、両国関係の過去と未来をバランスよく見つめる指導者の知恵と決断だった。ユン当選人も韓日関係で日韓共同宣言の回復を追求すると明らかにした。早ければ早いほど良いだろう。これからも緻密な準備をして、就任後の初の韓日首脳会談で、金大中・小渕宣言を越える「ユン・岸田宣言」が誕生することを期待する・・>>
いや、IMFは日本のせいでもないでしょうし、すでにこの時点でおかしいですが・・もっと重要なのは、そこではありません。知らないのか、それとも知っていながらわざと言わないのかは分かりませんが、実はこの日韓共同宣言、韓国の国会で『破棄』を満場一致で決議したことがあります。まだ金大中大統領の頃だったので、実際に宣言の取り消しまでは行きませんでしたが、国会決議案が無効になるわけではありません。隣国の教科書に、韓国の主張と違う内容が書かれたことが、その理由です。
日本でも朝日新聞などがこの件を報じたと聞きますが、どうやらリンク切れ状態のようで、今日は当時の韓国側の記事を一つ紹介しましょう。2001年7月18日、「韓国経済」です。当時、韓国では、日本の歴史教科書に問題があるとして、大きな騒ぎになっていました。そこで、関連した国会の特別委員会からいろいろ対応策(?)が提示され、その中には日韓共同宣言の無効など、両国関係の全面的な見直しに関する内容も含まれていました。それが、18日に本会議でも採択されたわけです。
<<国会は18日、本会議で「日本国の教科書のわ○きょくの是正を促す決議案」を満場一致で通過させた。合計7つの項で構成されたこの決議案は・・・・「私たちの要求が受け入れられなかった場合、去る98年に締結された韓日パートナーシップ(※共同宣言)破棄を含め、韓日関係を全面見直すべきだ」と主張した。その他、決議案は、国際世論を拡散させ、他国との連帯による共同対応、国内教育の強化、問題を主導した人の入国制限などの措置を、政府に促した。一方、与野党3党総務はこの日、国会で記者会見を行い、「国会次元で北朝鮮、中国、台湾など各国の議会指導者たちと会い、日本の教科書に対する共同対応策を講じる」と明らかにした・・>>
何かの宣言をしたとしましょう。そのあと、何かの事案で『意見が合わなかった』場合、どうしますか。日本で、このような、宣言の取り消しの話が出たとは、聞いたことがありません。でも、韓国にとっては、宣言など、結局は「違う意見は言いません」ぐらいの認識でしかないわけです。そんな宣言をしたとして、何かが変わるのでしょうか。そう、共同宣言から、もう随分経ちます。それから、何かが変わりましたが。違うでしょう。そういうものです。あのとき二人の首脳が言っていた「未来」を生きている私たちが、誰よりもよく知っています。『違う』、と。
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