不動産バブルの一つの指標とされる、PIR(何年分の所得で家が買えるのか)・・上海37.2年分、ソウル25.8年分、東京は?

昨日、中国の不動産バブルに関する記事がありました。「中国も、日本のように失われた30年になるのか」という題です。いつものことですが、いくつかツッコんでおかないと昼にも眠れなさそうな部分があって、ちょっと取り上げてみます。ソース記事は朝鮮日報、9月2日です。ちなみに、本エントリー、題の最後は「東京は?」になっていますが、これ、韓国メディアの記事の題によくある「日本は?」などの表現をベンチマーク(笑)したものです。まずなにより、不動産関連で韓国がいま中国の心配をしていいのか・・な気もしますが、もう少し細かく見てみます。

記事の題には「失われた30年」となっているし、記事の見出しにもそんな記述がありますが、記事で主に話している専門家(中国出身のエコノミスト柯 隆さん)はそんなことは言っていません。ただ、バブル頃1990年に、東京のPIRが18倍だった、という話はしています。PIR、すなわちPrice (to) income Ratioとは、あるエリアにおける住宅の購入に何年分の所得が必要なのかを意味する数値です。10だと、家を買うのに10年はかかるという意味です。なんで専門家の話にも出ていない日本を言い出すのでしょうか。で、記事で問題とされているそのPIRですが・・これも、また。

 

このPIR、世界各都市のデータを毎年公開しているサイトがあります。前にも拙著や本ブログで取り上げたことがあるので、同じサイトから最新の情報をチェックしてみました。で、記事に一つの例示とされている「1990年の東京が18だった」を基準で考えてみましょう。2024年Mid-Year基準で見てみると、確かに中国の数値が高いのがわかります。上海は37.2(年分)必要で、北京は30.6など、桁違いの数字が出てきます。あ、データはNUMBEOが調べた各都市のものです。ちなみにもっとも高い都市はエチオピアのアディスアベバでなんと54.2。これ、54年分の所得が必要だという意味ですが・・普通の人が一生かけても難しいかもしれません。2位はカメルーンのドゥアラ、48.3。3位はスリランカのコロンボ42.7年。4位はイランのテヘラン38.1、そして上海です。他にも、11位、12位、13位、15位(※香港)、17位、18位が中国です。で、東京はどうなっているのかと言いますと。あ、ここは「東京は?」と書くべきでしょうか。ベンチマークって難しいですね。東京は13.8年、順位で90位でした。

記事によると、PIRは6倍(所得の6年分)が適切だということになっていますので、確かに高いし、東京と言っても広いから様々な価格帯の物件があるでしょう(個人的に、家も何も、相応のクオリティーを持っているなら安いものは安く、高いものは高く、選択可能な幅が広いほうがいいと思っています)。とはいえ、共通した基準で調査したPIRで見ると、中国各都市よりはまだマシなのがわかります。で、ここでソウル特別市ですが、25.8で21位でした。しかも、家計債務についてすでに中央銀行および金融当局から「適切に管理できる範囲を超えている」とされているし、家計債務が気になって金利を下げていいのかどうか議論されている中、話者は話してもいない失われた~を持ち出して中国の不動産バブルを論ずるとは、此は如何に。とはいえ、中国の不動産市場関連でいろいろ話が出ているのも事実だし、柯隆さんの見解に問題があるという意味でもありません。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・中国はバブルが真っ盛りだった時、主要都市のPIRが50倍を超えていた。1年に稼ぐお金を50年間集めなければ家を買うことができないという話だ。日本でバブルとされた1990年に東京のPIRが18倍だった・・・・(※暴落したように見えないのは)全国平均値だからそう見えるが、もっと大きな理由は政府が公式統計をコントロールしているからだ。データ上暴落していないように見えるだけだ。売り希望者が安値で売りたくても(政府が定めた)価格よし安くは取り引きが難しい。民間不動産開発企業は破産した所が多く、国営不動産業者さえも今年上半期に純損失を記録した・・

・・中国地方政府と不動産開発業の関係を知る必要がある。地方政府は銀行からお金を借りて直接不動産施行・施工を進行したり(※施行はプロジェクト総括、施工は実際の建設のこと)、別途の「インフラ投資会社」を設立して進行した。その結果、地方政府とインフラ投資会社の債務は毎年増え、昨年末基準で100兆元(18887兆ウォン)に達した。公式統計にとらわれない隠された債務も多いため、実際の規模はより大きいだろう・・・・もし中国経済が穏やかに見えるならば、中国政府のコントロールによってそう見えているだけだ。公式統計では5%内外の成長率が実現している。しかし実際にはそれよりはるかに低い成長率だろう。もし5%前後の成長を成し遂げたら、雇用が今のようにはならないだろうから。中国の青年失業率は、統計方式を有利に変えたにもかかわらず7月に17.1%と最高値だった。このままでは5%成長を実現できない可能性が高いが、それでも公式統計では5%内外の成長を実現したと発表される可能性がある(朝鮮日報)・・>>

 

 

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