韓国、来年から実施予定の「金融所得課税」に撤廃または猶予の声が高まる

以下、金融所得課税関連の話になります。本エントリーはいま韓国で起きていることを紹介する流れで、反対意見を紹介していますが、金融所得課税には賛成世論もあり、実際、日本ではすでに実施されています。お金のことだから無条件良いとも、良くないとも言えないということを、前置きさせてください。で、本題ですが・・石破総理の公約とされる案件の一つに、金融所得課税の強化があります。実はこれ、課税している国がそう多いわけではなく、一般的に先進国市場とされるところだけ(日本、米国など)存在する課税です。確か、日本は20.3%だったはずです。台湾もこれを導入しようとして、うまくいかなかったと聞いています。で、韓国ではどうなっているのかといいますと、『まだ』ありません。

文在寅政権のとき、2020年、「『金融所得投資税』を2025年から施行する」と決めて、来年から始まる予定ですが(本当は2023年から施行予定でしたが、延期されています)・・最近、株価関連であまりおもわしくないニュースが多いので、野党、共に民主党(この法案ができた当時は与党でした)からも、施行前の撤廃するか、または猶予すべきではないのかという声が出ています。今はどうなっているのかといいますと、証券などを取引するときに0.5%が課税されるだけです(実際はもっと複雑でしょうけど、ざっくり書きますと)。たとえばサムスンマッコリという企業があるとして、その株を買ったとします。しばらくしてその株を売った際、どれだけ得をしたのかに関係なく(差益に関係なく)0.5%が課税される仕組みです。

 

だから、もし株価がマイナスになって損をしたとしても、売るときには課税されます。これを、日本や米国のように、売るときに相応の得をした場合、その分に関して課税しよう、というのが今の(来年から実施予定の)金融投資所得税の趣旨です。いままでは、国民の力など保守側は反対していて、野党は『投資家の上位1%(国内株式などの場合は金融所得が年5000万ウォン以上)だけに課税されるわけだから、何の問題もない』としていました。しかし、その「上位1%だけだから」という考えが、実は的外れだという声が強くなりつつあります。アンケート結果などを見ると、約60%の個人投資家たちは、この課税に反対しているとのことでして(賛成は27%)。ニュース1(9月24日)がシリーズ記事として報じています。1%課税するというと99%は喜ぶだろうと思っていた共に民主党としては、意外な結果です。よって、個人投資家たちからの支持率が下がる懸念が出ており、共に民主党内部からも「なかったことにしよう」という話が出ているわけです。

 

ただ、一部のメディアが「事実上、廃止(実施しない)の方向に固まった」と報じているものの、野党の一部の議員たちが「お金持ちに課税を増やすだけだから問題ない」という主張を強めており、まだ確実なことは分かりません。韓国経済(9月11日)によると、共に民主党議員でありながら金融投資所得税に反対しているイソヨン議員は、「金融所得投資税というのが個人投資家上位1%だけに課せられるので、99%とは関係がないという主張があるが、それは証券市場を理解していないものだ」、「5000万ウォン以上の収益を上げる人は(課税対象)そういないという主張も、投資意思決定過程を理解していないだけ」、「その上位1%が、全体株式の54%を持っている」「投資決定時の期待収益率に、税金は当然影響を及ぼす」「この市場が税金を出しても十分な収益が出るほどの市場かどうかを判断するのは、投資家としては当然の手順」などと話しています。ちなみに、この金融所得投資税は外国人投資家たちには適用されません。以下、どうして反対する声が多いのか、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・「金融投資所得税は、金持ちに増税することを目標としていると言いますが、実はそうでもありません」。ある国内大型証券会社の代表は先日、金融投資所得税についてこう評価した。金融投資所得税は金持ちに増税することが目標だが、実際の投資市場を見てみると、むしろ庶民中産層が感じる負担がより大きいということだ。彼は「10億ウォンを持っている人の場合、株式の割合は10%だとすると、1億ウォンを持つ投資家の場合、株式が90%です」と話した。投資が集中する不動産は、金額が大きくて一般人にはなかなか出来ない投資の領域だ。一方、自分の持っている資金でも投資が可能な株式は、通常、人々の「階級移動」の手段になる・・

・・金融投資所得税は、ごく少数のいわゆる「スーパーアリ(※上位の個人投資家)」への「金持ち課税」論理で登場したが、多数の「アリ」が反対する状況が広がっている。来年施行される予定の金融投資所得税に対して、投資家たちの不満が大きい・・・・一般庶民中産層の広範囲な再テク手段として位置づけられた株式市場なだけに、階層移動のためのハシゴが外されてしまうという指摘だ。24日、金融投資業界によると、金投資税は、株式・債券・ファンド・デリバティブなど金融投資で得た利益が一定水準(株式5000万ウォン・その他250万ウォンなど)以上の時に賦課される税だ。税率は最大25%(地方税を含む27.5%)で、2020年に導入された後、猶予期間を経て来年1月1日に施行される予定だ。施行を控えて個人投資家を中心に反対の声が相次いでいる。まず、個人投資家は金融投資所得税適用対象に外国人投資家と機関投資家は入っておらず、個人だけに課税されることを問題としている(ニュース1)・・>>

 

階級(階層)移動という言葉が当たり前のように何度も出てくるところが、また「らしい」といえる気もしますが・・また、国内の株式は5000万ウォンからですが、海外株式の場合は250万ウォンから課税されるという内容もあるので、最近「西学」とよく言われる、海外市場へ投資する個人投資家たちを国内に戻そうとする意図もあるのではないか、そんな気もします。さて、石破政権ですが・・すでに施行中とはいえ、拡大・強化において、同じく『上位◯%の問題ではなく、市場そのものに影響を及ぼすことになる』など、結局は「スーパー」ではないアリたちがダメージを受けるのではないか、気になるところです。

 

 

おかげさまで、新刊「Z世代の闇 物質主義に支配される韓国の若者たち」(扶桑社)が発売中です(2024年5月2日、アマゾン発売日)。詳しくは、下記のお知らせをお読みください。ありがとうございます
・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。

   ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年5月2日)<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・新刊(2023年12月21日)、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・刊として、<韓国人として生まれ、日本人として生きる>(2023年7月29日)も発売中です。2023年、まさに心願成就、帰化できました。その際の、自分なりの持論に関する本です。・しい説明は、固定エントリーをお読みください。・当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。