なんか、こういうのばかり目に入って・・やはり心の問題でしょうか。韓国で勤続期間が短いという話は何度も書いてきました。もっとも多かったのが、理想と現実のギャップです。やっと就職できても、「私にはふさわしくない」という理由ですぐやめてすまうというのです。これは韓国内でも様々なメディアが問題提起しており、最近は中央日報が「ミスマッチ」という言葉を使いながら、「実際に就くことができる職業と、希望する職業のミスマッチ」と指摘したりしました。今もこの流れが変わっていません。ただ、10日のニューシースが、また別の見方もある、という記事を載せました。15~29歳の約4割が非正規職で、彼らの勤続期間が平均で11ヶ月になっているが、これは、「1年以上雇用していると、退職金が発生する」などの理由で、会社側が最初から1年未満の契約をするからだ、との内容です。
余談ですが、韓国では「正規職」を「契約期間を定めずに契約した職員」とします(法律的な定義があるわけではないとされています)。それ以外だと、主に「常用職」、「臨時職」、「日用職」などがあります。常用職とは、「契約期間が決まっていない(韓国で言う正規職)」と「1年以上の期間の契約をした職員」を合わせて、そう呼びます。常用としつつ1年1日で雇用が終わる人も多いわけですから、ちょっと用語と意味があわない気もします。そして、1年未満の契約の場合を「臨時職」といい、1日だけの雇用の場合は「日用職」と言います。すなわち、ソース記事のいう1年未満というのは、臨時職のことです。
これがなぜ今更記事になったのかといいますと、『失業給与(失業手当)』関連です。最近韓国では、繰り返して失業手当を申請する人が多くて、政府は、「5年内に3回以上失業手当をを申請した場合、失業手当を半分まで削減する」案を進めています。しかし、記事の主張する内容は、「1年未満で雇用期間が終わる人が多すぎるので、1年に1回は失業手当を申請することになる」、すなわち仕方ない人たちも多い、とのことでして。実際、最近青年(15~29歳)の常用職すなわち1年以上の契約は、大幅に減少しつつあります。特に多くの記事が出ていたのが5月基準データで(記事は6月)、1年前(2023年5月)と比べて、青年常用職が19万5000人も減少しました。19万5000人といいますと、これは、同年齢代の全常用職の約7.6%にあたいします。『1年以上契約の働き口』が5月前年比で7.6%もなくなったわけです。当時、関連データが作成された10年前からして、最大の幅の減少だと結構話題になりました。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・短期雇用が蔓延する状況で、政府の失業給与需給制限政策が、労働脆弱階層に大きな影響を及ぼすかもしれないという指摘が出た。10日、国会環境労働委員会所属パクジョン共に民主党議員室と韓国労働研究院の青年層雇用労働統計によると、青年(15~29歳)の40.8%は非正規職であり、これらの平均勤続期間は10.9ヶ月だ・・・・パク議員は「事業主が、退職金を与えないために1年未満で採用し、正規職転換をしなくてもすむように3ヶ月、6ヶ月、11ヶ月単位で『分けて』契約をするなどの雇用慣行が蔓延している」とし「5年の間に3回以上失業給与を受給すれば、受給額を減額するという政策は、労働脆弱階層をさらに追いこむことになるだろう」と憂えた。彼は7月、政府が発議した雇用保険法改正案を問題だと見た。失業給与を減額して、待機期間を拡大するなど、『繰り返し申請する』需給を制限する内容を盛り込んだ(ニューシース)・・>>
じゃ、本当に政府が勘違いをしているのでしょうか。そうではありません。偽就業などで失業手当をゲットしようとして摘発された件が、2023年1~7月だけで4万6900件を超えています。東亜日報(2023年9月21日)の記事の内容です。偽書類を提出したり、形ばかりの求職活動をして摘発された事例が4万6909件。ちょっと期間が異なりますが、2022年上半期には(同じ理由で摘発された件数が)69件だけでした。しかし、7月から政府が「新型コロナ関連対策などで、失業手当支給認定がゆるくなっている」などの理由で管理監督を強化した結果、2022年下半期に1295件、2023年は7月まで4万6909件に増えたわけです。東亜日報は当時の記事で、『摘発されていない分まで含めると、多分ずっと多い』としています。
<<・・失業手当の財源である雇用保険基金は、10兆ウォン以上あった積立金が底をつき、他の基金から借りた10兆3000億ウォン以外だと、3兆9000億ウォンの赤字となっている。雇用保険料率も上がり、労働者と使用者が追加で負担した保険料が5兆ウォンを超える。税金の無駄遣いになるだけでなく、誠実に保険料を払った人の労働意欲までなくしてしまうこの失業手当を、このままにしておくわけにはいかない。不正受給を徹底的に選別し、失業手当の支給条件を強化し、下限額は下げて、再就職を奨励する制度の趣旨を活かすべきであろう(韓国日報)・・>>、とも。結局は、不正受給しようとする人たちが多く、短期雇用の20代が見事なまでに巻きぞえをくらった・・といったところでしょうか。でも、このまま放っておくわけにもいなかいでしょうし、ユンたん、いろいろ大変ですね。というか、どうせ法案は国会を通ることができないのではないか、そんな気もしますが。
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