朝鮮日報が数ヶ月前からシリーズ化している内容があります。早稲田大学パクサンジュン教授の持論で、「日本社会の平穏さの秘訣は、雇用にある」という内容です。教授は、日本は第2の全盛期を迎えつつあり、「失われた」シリーズはもう前の時代の話だとするなど、韓国メディアで日本関連の持論を述べる人としては、大変めずらしい存在です。中には、「日本はアメリカとの競争を避けるためにロケットなどには力を注がないでいる」など、「あれっ?」な部分も結構ありますが、そこはともかく。以下、朝鮮日報のシリーズ記事(8月20日、10月14日)から、主に雇用に関する部分を引用してみます。以下、<<~>>が引用部分です。
<<・・去年、韓国と日本の年齢帯別就業率を比較すると、70代以外の全年齢帯で日本の雇用率が韓国より高い。韓国は老後準備ができていない高齢者の生計のための労働が多いため、70代雇用率では日本を上回るが、残りの年齢では日本の雇用がはるかに良いのだ。日本の20代後半の男性の雇用率は90%(韓国は70.5%)、40代初めの女性雇用率は80.5%(韓国は64.6%)になる。日本の女性雇用率も、70代以上以外は全年齢層で韓国を上回った・・・・(※パク教授は)「日本の景気がくるしかった1997~2003年、2009~2011年に、大々的なリストラが行われ、失業青年たちが増えた」とし、「いったんひきこもり(隠遁型孤独)になると、年をとっても社会に適応できなくなる。ずっと日本社会に負担として作用した。このような経験を通じて、日本は雇用の重要性を認識した」と指摘した・・
・・企業は、雇用を増やした。 2013~2023年、日本は人口が90万人減少したが、正規職雇用は300万個、非正規職雇用は200万個が増えた。自営業者も100万人減少した。人口が減ったから、自然に雇用指標が良くなったわけではないというのが、教授の説明だ。1995年に1000万人だった20~24歳の日本青年人口は、わずか8年の間に200万人が減少した。しかしこの時、青年失業率は10%まで上がった。教授はこれを根拠に、「単純に青年人口が減って雇用が反射利益を見たわけではない」と話した。最近10年間、青年人口が600万人程度で着実に維持されている中、青年失業率は3~4%台まで下がった。教授は、企業と労働者が互いに少しずつ譲歩した結果、雇用環境が改善されたと分析する。企業の営業利益が増え、雇用を増やす余裕が生じたこともあるが、基本的に、企業の文化が変わった・・
・・「一生懸命」精神を強いるよりは、労働時間と強度を下げた。わずか10年前まで、日本はOECD平均より労働時間が長い国だったが、今は平均を下回る。代わりに、雇用人数を増やした。少ない人数で多くの成果を出すより、少し多めに雇用し、少しゆるくしたのだ。教授は「企業実績が良くなったことと、労働強度が弱くなったことが、日本の雇用環境を改善させた一つの原因となった」と話した・・・・ここに、キャリアが止まっていた主婦たち、引退年齢の高齢者たちは労働市場に戻る際、正規職にこだわらなかった。そして就業者は低い賃金を受け入れた。年俸の引き上げより雇用の安定を選んだのだ。労働組合も賃金引き上げを要求しなかった・・・・もちろん、最近は雰囲気も変わっている。日本政府は、低賃金が国民の購買力を下げて経済に影響を及ぼすと判断し、企業に賃金の引き上げを促している。昨年の日本大企業は平均約4%の賃金引き上げを断行、30年ぶりに最高水準の引き上げ率を記録した・・>>
<<・・日本企業の実績が改善されたおかげで、雇用拡大が可能だった面もある。教授は日本企業の変化を「果敢な事業再編」と「新事業挑戦」という2つのキーワードで説明した。これを主導したのはイノベーション型CEO(専門経営者)だ。バブル時期の成功を成し遂げたカリスマ型CEOが退き、新しい考えをするCEOが登場し、企業ガバナンスの改善などに乗り出した。最近、日本企業は戦略的に新事業に参入している。教授は「日本はロケットや有人宇宙船や通信網のように米国が先行する分野には挑戦しない代わりに、激しく競争する必要がなく、まだ汎用製品が出ていない部門に逃げている」と話した・・
・・教授は「日本で話題になっていた案件は、小泉改革やアベノミックスのように、主に経済問題だった」とし「韓国でも、このような問題が政治家たちが騒ぐ核心案件にならなければならないと思う」と話した。教授は「今、韓国は前の日本のように、とても難しい時期に進入していると思う」とし「不安になってばかりいないで、もっと緊張感を持っていろいろな社会的難題をどのように解決するかについての議論を進めなければならない」と助言した・・>>
私の読み方の問題かもしれませんが、『ゆるくした』という部分を強調しているようで、そこがちょっと気になりました。「お互い譲歩した」とすれば良い話としても成立しますが、国、企業などがその利益をどうやって社会に還元するかをもっと考える必要があるでしょう。ピンチを乗り越えるためならいいけど、乗り越えた後、十分な利益が発生した後にもそのままだと、困りますから。また、記事は「すこしゆるく」というけれど、熱心に頑張っているからこそ、こんな話もできるわけでして。最後にちょっと余談ですが、楽韓WEBさんのところ(10月14日)から知った記事ですが(元記事は共同通信)、生産年齢人口(15歳~64歳)だけで見ると、日本のGDP伸び率がアメリカより高く、G7で1位だった、とのことでして(2008年~2019年)。どこをどう見るかで、いろいろ変わるものだな・・と改めて頷く、今日この頃です。
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