ペンシルバニア米国大学の論文「生産年齢だけでみると、日本の1人あたりGDPが米国より成長しています(1998~2019)」・・原文と概要

昨日も少し引用しましたが、「生産年齢(労働年齢、Working age)だけでみると、日本の1人あたりGDP増加率がG7でもっとも高い(2008年~2019年)」というペンシルヴァニア大学の論文「The Wealth of Working Nations」。関連した各メディアの記事に元ソースの題やリンクなどがなかったので、自分で探してみました。ペンシルバニア大学のホームページリンクで、こちらです。PDFファイルになるのでご注意ください。ごく一部だけの引用ですので、興味をお持ちの方は原文をお読みください。大まかなテーマは『日本で起きていることは、いずれ世界各国で起きる。なのに、ただ低成長とするたけで、分析がズレている』という内容です。論文は、日本の経済成長に対する評価がズレているとしながら、生産年齢だけでみると、1991年~2019年の間、G7(とスペイン)と比べて、日本はそれほど低成長したわけでもないとします。

むしろ、2008~2019年の期間にすると、生産年齢(の成人)の1人あたりGDPで1.49%成長しており、これは米国よりも高く、G7+スペインで1位だ、とも。同期間、生産年齢の成人人口では、G7ではそこまで大きな変化はありませんでした。フランス、ドイツ、イタリアで減少していますが、表によると0.07~0.12%だけです。日本は0.9%も減少しました。個人的には、「だから、問題ない」などの結論にはならないと思います。ただ、論文でも指摘していますが、なんか政治がどうとか経済システムがどうとかと、「日本化」などという言葉を使いながらとりあえず日本経済を評価してはならない、といわんばかりの人が多い中、『そうじゃない。的確な分析をしよう』という論文の指摘には、率直に嬉しさを感じています。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・1991年から2019年にかけて、日本のGDPは年間0.83%の成長率で、米国の2.53%より低い。この残念な結果は、その理由はなにかを分析する無数の本や学術論文の執筆につながった。日本の低成長の原因を指摘し、さまざまな政策的解決策を提示したものだが、数あるその例の中でも、「日本化」という言葉を広めたペセック(2014)は次のように書いている。「・・かつては活気にあふれていた日本がもたらした教訓はタイムリーで、重要な教訓だ。世界で最も豊かな国に加わった発展途上国のモデルは道を見失い、それ以来、苦労してきた。この本では、日本の経済不況から世界が何を学ぶことができるかを探る。20年以上前に始まったこの問題で、日本はどこで間違えたのか、傲慢さと傲慢さと政治的衰退の重圧。そして過剰投資、輸出主導の成長、過剰債務に基づく閉鎖的なモデルを廃止する機会を次々と逃した」・・

 

しかし、人口動態を考慮すると、その見通しは大きく変わる。1991年から2019年、日本の労働年齢人口の1人当たりGDPは年間1.39%増加した。これに対し、米国は同じ指標で1.65%で、わずか0.26%の差しかない。1991年から2019年まで、日本のGDPは労働年齢の成人1人当たり年間1.39%、労働時間当たり1.26%増加した。これに対し、米国は労働年齢の成人1人当たり1.65%、労働時間当たり1.53%増加した。米国と日本の差は、労働年齢の成人1人当たりの成長率では0.26%、労働時間当たりの成長率では0.27%だ・・・・注目すべきことに、1998年から2019年にかけて、日本は米国よりもわずかに速いペースで成長してきた。労働年齢の成人一人当たりのGDPでみると、米国の29.5%と比較して、累積成長率が31.9%となっている。また、2008年から2019年までだと、日本の労働年齢の成人1人当たりGDPの成長率は他のすべてのG7諸国とスペインを上回った・・・・これだけでも、日本のGDP成長率について謎めいたことを考える必要はない。それは、日本の労働年齢人口が約0.54%減少している結果なのだ・・

 

 

・・重要なのは、日本の現在の人口動態は、他の多くの先進国や新興国が、将来に直面するであろう状況だという点だ。経済学者は、適切な指標を用いて、この成長をちゃんと評価することを学ぶ必要がある。私たちは、成長実績の簡単に計算できる要約統計として、労働年齢の成人1人当たりの産出量(おそらく、変化する退職パターンに適応させるために労働年齢を再定義する)の重要性を主張する。とはいえ、私たちの研究結果が経済政策にどのように反映されるべきかについては、慎重だ。最初の注意点は、国の労働年齢の成人人口は外因性(exogenous)プロセスではないということだ。それは、移民政策や出生率政策(児童税額控除のような直接的なもの、若者の失業率の高さによる出生率の低下のような間接的なもの)の影響を受ける可能性がある。実際、移民は、カナダや米国などの国における比較的急速な人口増加を説明できるデータにおける、第一のメカニズムだ。私たちの分析では、1点を除いて、移民の経済的影響については何も述べていない。一見すると、移民と労働年齢の成人1人あたりの生産高の伸びの間には、ほとんど相関関係がなく、移民の少ない日本が、移民の多いカナダを上回っているように見える。

この観察は、移民が労働年齢の成人1人当たりの成長にプラスの影響を与える可能性がないと言っているわけではないが、そのようなプラスの効果は、時々、想定されるよりも実証が難しい場合があることを示している・・・・2つ目の注意点は、我々の議論は、総生産成長率や1人当たり生産成長率が無関係であることを示唆するものではない、という点だ。例えば、総生産成長率は、公的債務と社会保障の持続可能性にとって重要である(Faruqee and M¨uhleisen、2003年、Kitao、2015年)。概して、1人当たり生産成長率は、経済の各住民が利用できる平均資源がどれだけ速く変化しているかを私たちに教えてくれる。同様に、Klenow et al. (2017)は、社会福祉の成長を評価するために総人口を考慮することの重要性を主張している。我々は、福祉については意図的に書いていない(論文より)・・>>

 

 

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