さて、いよいよ今週は日本、来週は韓国が米国との関税交渉に臨むわけですが、一つ前のエントリーでも書きましたように、今、大統領権限代行の韓悳洙(ハンドクス)総理は、なんというか、功績または外交力などをアピールしたがる、そんなイメージがあります。大統領選挙への出馬を考えているのでしょうか。それとも、しばらく留守にしていた(経済副総理が代行していました)ためでしょうか。聯合ニュースなど多くのメディアが報じていますが、共通して出てくるのが、アラスカLNGプロジェクトへの参加、すなわちエネルギー輸入関連です。
具体的な話をせず、韓国メディアがよく使う表現を借りるなら『カード』をあまり見せないでいる日本や他の国とは異なり、ハン代行は米国との関税関連交渉において、比較的具体的な路線を表明しました。ハン総理も直接言及し、近い内にLNG関連協議が始まるだろうとしましたし、産業部の次官(副大臣)もアラスカ訪問を進めています。この件、目新しい話ではありません。本ブログでも何度か紹介しましたが、この件が話題になったのは日米首脳会談からです。
その前にも、LNG関連記事はありましたが、日本がLNGハブになろうとしているとか、『LNG買うから守ってくれと言っている』(韓国経済2月1日記事の題、直訳)とか、韓国メディアの報道はそんなイメージでした。それが、日米首脳会談のあとに「私たちも買うもん」というふうに雰囲気が変わりました。それが、やっと政府レベルで出てきたわけです。エネルギー安保という側面ではいいかもしれませんが、実はこの件、国内で反対意見も結構出ています。というか、これだと日本と重複することになるのでは、な気もします。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・政府が、韓米通常交渉において主要議題として浮上した米国アラスカ液化天然ガス(LNG)プロジェクトと関連して、事業性検討などのために近いうちに現地出張を推進している。チェナンホ産業通商資源部2次官は15日、ソウル自動車会館で開かれた韓国産業連合フォーラム招待講演で、「大転換時代の大韓民国未来エネルギー政策」で「アラスカLNG事業は1990年代末~2000年代初頭から推進されてきた実務中であり、遅れた事業」だ。このため、すぐにアラスカ出張に行く計画だ」と明らかにした。彼は「現在、出張日程を調整している」と付け加えた。
チェ次官は「アラスカLNGが開発され、北東アジア市場に来れば、輸送距離が半分程度に減るため、生産単価が少し高くても(韓国には)有意義かもしれない」とし「同時に液化ターミナル施設とパイプラインを敷かなければならないため、初期費用が大きくなる可能性があるため、政府がどのようにバックアップするのか、それによって価格が上がったり下がったりする可能性がある」と話した。それとともに「日本と韓国の両方に、最大の輸出品の一つが自動車であるため、アラスカのLNGプロジェクトが韓国の対米関税交渉パッケージの一つになるという考えることもできる」とし、「自動車(関税交渉で)大きな恩恵を受けることができれば、(アラスカLNGプロジェクト参加は)譲歩できる部分だ」とも話した。
次官は「しかし、他方では、マイナスなる部分も出てくるため、政府はまだ結論を定めずに、内部的に検討しており、実務的にも交渉を続けている」とし「幸い、相互関税が90日間猶予され、時間を稼ぐことができたため、この期間、交渉を進める」と強調した。チェ次官はこの日の講演で、トランプ2期発足により、今年は短期的には一定水準の化石燃料消費が維持される一方、中・長期的にはクリーンエネルギーへの転換が拡大すると見込んだ。
チェ次官は「政府は無炭素エネルギー産業システムの構築、及び、そのための競争力強化の案で、再生エネルギーの拡大、水素エネルギーの導入、原発競争力強化を図る予定だ」と明らかにした。政府は発電所建設と送・配電インフラなどを一つの輸出パッケージにまとめ、原発・再生エネルギー建設及び送電、配電、補助サービスまで包括する輸出モデルを作り、開発途上国新都市開発とウクライナ戦後再建事業に積極的に進出する方針だ(聯合ニュース)・・>>
尹大統領・・前大統領も任期初期のうちに日本関連で似たような表現をよく使っていましたが、このパッケージ、いろいろセットにして進めるという話を、最近、よく目にします。関税交渉においても、このようにパッケージにするとかセットにするとか、そういう趣旨の記事が結構出ています。できるなら、別にそれもいいとは思います。ギブ・アンド・テイク式に進められるならそれでいいかもしれません。でも、「2ヶ月後に大統領選挙がある」という現状について、これで関税交渉に大きな影響があるという指摘をする記事は、ほとんど目につきません。
尹大統領をやめさせたから、それだけで肯定的な効果があるだろう(安定する)と思っているのでしょうか。それとも、それについては言及してはいけないという決まりでもあるのでしょうか。いまの最大の変数、というかほぼ確定している問題は、大統領選挙、特に政権交代の可能性のはずですが。とりあえず、訪米して交渉するついでに、米国側に「うちの代行と電話会談したから90日間猶予したんですよね?」と聞いてみてほしいところです。できれば記者団の前で。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。