韓国の歴代大統領功績投票(原文では「功が多い人」)で、あの盧武鉉(元)大統領が1位に輝きました。私の世代だと、(現在の政権の旗色はどうであれ)それでも朴正煕大統領が1位になるのが一般的でしたが・・今回は2位でした。時代の価値観が変わった、ということでしょうか。中央日報(28日)の報道によると、1位は盧武鉉大統領、朴正煕大統領、金大中大統領、金泳三大統領の順でした。金泳三大統領の場合、軍事政権を終わらせたというイメージがあるので、多分、そこから支持が集まったのではないか、そんな気もします。逆に、よくない影響を及ぼした(原文だと『禍が多い』)大統領としては、尹錫悦大統領が選ばれました。
こういう話になると、「対中世論はどうなの?」というのが気になります。ちょうど27日、FNNなど一部のメディアが、韓国で開かれている「反・中国デモ」について報道しました。ユーチューブ再生数もそこそこ伸びているみたいで、ご覧になった方も多いでしょう。いま李在明大統領の支持率はとても高い(約60%)し、盧武鉉大統領を「もっとも功績がある」としているし、文在寅大統領も今回の調査ではパッとしなかったものの(7位で李明博大統領にも及ばない結果でした)、退任後にも40%以上の高い支持を確保していました。このように「左側」政権を支持する世論があるなら、中国に対してももっと柔らかい意見が多くてもよさそうなものですが、なんでデモが起きているのでしょうか。「どちらも現実で起きていることだし、どちらも事実」と言ってしまえばそれだけですが、そういうところについてちょっとだけ私見を述べたいと思います。まず中央日報の記事を<<~>>で引用してみます。
<<・・歴代大統領に対する功過(功績、過失)を問う世論調査の結果、盧武鉉元大統領の肯定評価が最も高く、尹錫悦前大統領は否定評価が最も高いことが分かった。韓国ギャロップ社が25~27日・・・・有権者1000人を対象に調べた結果、このように集計された。「大統領としてよくやったことが多い」という回答は盧武鉉68%、朴正熙62%、金大中60%、金泳三42%、李明博35%、文在寅33%。「間違ったことが多い」という回答は、尹錫悦び77%、全斗煥68%、朴槿恵65%、盧泰愚50%、李明博46%、文在寅44%の順だった・・
・・尹錫悦前大統領の「良いことが多い」という回答は12%で、昨年12月の最後の職務肯定率と同じ水準だるとギャロップは明らかにした。ギャロップによると、昨年12月14日の弾劾訴追案可決直前の最後の職務肯定率は11%だった。李大統領支持率2週連続で60%、共に民主党主42%、国民の力24%(※見出し)李在明大統領の職務遂行に対する肯定評価は60%で、先週の調査と同じ数値を示した。一方、「間違っている」と回答した割合は31%で、先週調査に比べ1%ポイント増加した(中央日報)・・>>
で、韓国の対中国世論のことですが、はっきり言って、あまり良いとは言えません。しかし、それが政治に影響を及ぼしたことはありません。「快く思ってないけど、はっきり問題提起するつもりはない」と思っている、とも言えるでしょう。実際、米国との関係(特に金大中政権~盧武鉉政権)、日本との関係が政治問題として盛り上がって、選挙結果に影響したことは何度もあります。しかし、中国とも色んなことがありましたが、中国関連ではそんなことはありませんでした。文在寅大統領が、中国を大きな峰、韓国(周辺の国々)を小さな峰だと表現したときにも、いわゆる「3不」が問題になったときにも、それが選挙や支持率に影響を及ぼしたことはありません。
李在明大統領が、中国関連集会に対して「厳しい対処」を命じたときにも、自主国防を主張したときにも(これも結局は在韓米軍の役割拡大を牽制するためのものです)、彼の支持率は微動だにしませんでした。こんな中、なんでデモなんか起きているのでしょうか。先も書きましたが、「はっきり問題提起するつもりがない」と思っている人が多すぎるのが、もっとも大きな原因でしょう。でも、それ以外の、あくまで私見をちょっとだけ綴ってみます。
まず、「国の安保などを懸念する志のある人たちが声を上げている」という側面を完全にゼロにするつもりなんか、まったくありません。しかし、「実は、現政権に反する動きとして現れたもの」という側面があります。文在寅政権の頃、日本関連の政策に対する批判が目立つ時期がありました。日本を利用して支持率を上げようとしている、などなど。しかし、当時も今も「日本との懸念案件」とされる数々のデタラメ主張に関する、分析、見方などに対する問題提起ではなく、反政府運動としてのものでした。親日というわけではなく、迂回的な親米デモだった、と言ったほうがいいかもしれまえん。
先、動画(記事)を紹介しましたが、その動画の所々、例えば最後あたりに、米国国旗をもった人がいます。親中が迂回的に反米になることを知っているから、反中が迂回的に親米になるという「カウンター」を行っているわけです。それが、政権へのダメージになる、と。書き方が荒すぎで恐縮ですが、簡単に言えば、「もし右派の大統領がいて、彼が中国と仲良くしようとしても、右派はこんなデモを起こさないだろう」ということです。
繰り返しになりますが、決して、デモ参加者たちの努力をないがしろにするつもりはありません。しかし、こういう「結局は、現政権に対するものだろう」という側面が、大勢の人たちから「たしかに中国のやりかたは気になるけど、あれって右派の政治ショーにすぎないんだよね」と思われ、選挙や支持率などにまで影響力を発揮することはできないでいる、ある種の限界をもっている、というわけです。 ※今週は、土曜日に更新して日曜日に休みをいただきます
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。