ですが、いつのまにか、北朝鮮の「連邦制統一案」と、韓国の「南北連合案」を、「それ同じ、絶対同じ!」と騒ぐ勢力が出現しました。
発端は、金大中氏の「三段階統一論」です。三段階統一論は、南北連合段階、連邦段階、完全統一段階の三つの段階で統一するという主張です。
連邦段階はともかくして、「南北連合」という言葉が入っているから、「ノ・テウ氏の南北連合案をさらに発展させたものかな」と思われるかもしれません。でも、全然違います。金大中氏の「南北連合」は、実は「国家連合」です。
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朝鮮日報系列の月刊誌「月刊朝鮮」2004年4月号を見ると、こうなっています。
<・・金大中前大統領は一九九五年、自分の統一方案をまとめて南北連合段階、連邦一段階、完全統一段階につながる三段階統一論を打ち出した。彼はここで「南北連合」を「国家連合」と規定し、「南北連合は南北当局が政治的決断を下す場合難なく行うことができる。この点で、南北の間に信頼が構築された後、ようやく南北連合が可能であると見る政府立場とは、「統一の積極的意志」を表明の面で基本的に問題意識が異なる」と主張している・・>
本来の意味では、南北連合は、国家連合ではありません。にもかかわらず、金大中氏は「南北連合は国家連合だ」と規定していることがわかります。
「連邦段階」は、南北が合意して最高指導機構を作り、北と南の政府は事実上、「地方政府」に成り下がることになります。そして最終的に、統一国家となる。それが金大中氏の三段階統一論です。
彼が大統領になって、2000年6月15日、金大中大統領と金正日国防委員長の首脳会談の後に「615南北共同宣言文」が発表されました。そこには、こうなっていました。
「南と北は国の統一問題を、その主人である私たち民族だけで力を合わせて自主的に解決していくことした(一項)」、「南と北は国の統一のための南側の連合案と北側の低い段階の連邦制案が互いに共通性があると認めて、今後この方向で統一を志向していくことした(二項)」。三項からは具体的な内容(南北に別離されている家族たちを合わせるなど)が書いてあります。左派思想家たちは大喜びし、保守右派勢力は唖然としました。
「赤化」を目指す北朝鮮の連邦制と、「吸収」を目指す韓国の南北連合案に、「共通点が多いと認める」宣言されるとは、「あれ?なんで?」なものです。
「長い時間をかけて南北が互いに信頼を築いた後、北朝鮮を国家として認めず、自由民主主義国家を作る」盧泰愚大統領の南北連合案が、北朝鮮の連邦制と共通点が多いとは、これはどういうことでしょうか。
「連邦制と南北連合案は明らかに違う。いったい大統領が言う連合案とは何なのか」と韓国内の専門家たちは騒ぎ出しました。韓国の元老憲法学者金哲洙(キム・チョルス)教授が「『大韓民国の領土は、韓半島と付属島嶼とする』第三条と憲法に書いてある限り、北朝鮮を主権国家とする『国家(国家と国家の)連合』は違憲である」と話すなど、各方面で批判が殺到しました。同じく「月刊朝鮮」によると、当時の状況がこのように書いてあります。
<・・金大中前大統領は、2000年6月16日南北首脳会談を終えて帰ってきた後、閣議で、「南側の連合制案と北側の『低い段階の連邦制案』がお互いに共通性があると認めて、今後この方向で統一を志向させていくことにした」とした615共同宣言二項について説明し、ここでいう南側の「連合制案」は、自分の「三段階統一論」から出てきたものであると明らかにした・・・この問題に対して、金大中大統領が国の政策として策定されてもいない私案(三段階統一論)を持ち出して北朝鮮と交渉したのではないかという批判が出てきた。彼は、翌日、李會昌(イ・フェチャン)ハンナラ党総裁との会談で、「615共同宣言の『連合』は、盧泰愚大統領が話した『南北連合』と同じものです」と主張した・・・これはいままで『南北連合』と自分の『三段階統一論』は違うと強調してきた従来の立場と違うものであった・・>
「左派政治家の金大中氏が、国会審議などを通じて国家の政策としても決まっていない三段階統一論で北朝鮮と統一を論じ、まるで韓国の統一政策が北朝鮮の連邦制と同じものであるようなニュアンスの共同声明まで出してしまった」とまとめるのは、どうでしょうか。そして、「いやいや違います。あれは南北連合と同じものなんですよ」と言い訳をして、本人は逃げた、と。
金大中大統領は、この首脳会談でノーベル平和賞を受賞しました。
後に、盧武鉉氏が韓国の首都を忠清道地域に移そうとしていたのも、統一後の「南側地域の地方政府の首都にするためだった」という主張がありますが、確実な根拠があるわけではありません。
流れは止まらず、統一部の関係者までもが、「朝鮮半島の領有権は南北が共同で管理すべきだ」と言い出すようになりました。
保守系のネットメディア「未来韓国」は2005年12月13日付で、次のように報道しています。
<・・金大中前大統領は5日、城南(ソンナム)韓国学中央研究院で開かれた「文明と平和国際フォーラム」に送った映像演説で「南の南北連合制と北の『低い段階の連邦制』を統合して、統一の第一段階に入らなければならない」と主張した。
これに先立ち、2日、慶南大学校・極東問題研究所で開かれた「韓半島の平和体制構築のための法的課題」という学術会議にて、国策機関の研究員らも連合と連邦制を合わせる案を相次いで提起した。
法学博士で統一部事務官でもあるジ・ボンド博士は韓半島の領有権(dominium)と統治権(imperium)を南北が共同で行使する、いわゆる「Condoperium(共同領有支配権という意味の造語)」を持つ「南北連合の法制化」を主張した・・>。
http://www.futurekorea.co.kr/news/articleView.html?idxno=9841
※危ないサイトではありませんが、普段あまり引用しないサイトであるため直リンは避けます
なぜかこの案に賛成する人たちは、以下の内容は言いません
・統一国家は自由民主主義国家であるべき(盧泰愚大統領の南北連合案にはありましたが、金大中氏の連合論にはありません)
・朝鮮半島の非核化(核問題が解決する前に連合段階に入っても問題ないと主張しています)
・時間をかけてお互いの信頼関係を構築してからにする(同じく、盧泰愚大統領の南北連合案にはありましたが、金大中氏の連合論にはありません。金大中氏は、すぐにでも連合段階に入れると主張しています)
そんなこんなで、文在寅大統領も何か「統一政策」を打ち出してもおかしくない今日このごろですが・・・
照れ屋さんなのか、まだ大統領になってからの公式発表はありませんね。「高麗連邦国家最高!」ぐらいは言って欲しいものですが・・・
※「人を楽にしてくれる国・日本」以外に、その次の本(いつものシリーズです)も執筆しています。その原稿もあって、最近、ブログ更新が遅れ気味です。でも平日だけでも出来る限り2~3回は更新しますので、たまに覗いてみてください。
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