延世大学校社会学部のキム・ホギ教授は、このように主張しています。<注目すべきは、西欧民族主義と非・西欧民族主義の間には大きな差が存在するということである。非西欧民族主義の場合、反帝国主義性向が際立ち、民族の歴史性が強調される。金九の民族主義は、これらの伝統の中で胚胎された。私たちの歴史を振り返ってみると、西欧とは異なり、近代以前に民族と民族主義は実在したと見るのが妥当である>。
本当でしょうか。正解がわからない(調べるすべがない)からこそ気軽に考えてみると、私は「いやいやそれは違います」と答えます。
とりあえず「民族主義って良いのか、それとも悪いのか』を別にして、韓国人が「崇拝」している民族及び民族主義は、そんなに昔からあったものではありません。
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民族主義という概念を受け入れるにおいて、大まかに2つのパターンがあります。ひとつは、「昔から民族主義があった」。血縁、地縁(同じ地域に住んでいる)などで「民族」という概念がずっと存在してきて、文化や世界観などの価値観がその土台の上に作られたとします。民族主義によって歴史が作られたとする見方です。
もう一つの受け入れ方はその逆で、歴史の中で作られた価値観の定立の過程で、民族主義という分け方を考える必要があったとします。歴史が、詳しく言うと私たちが歴史を理解する、またはある方向に歴史を解釈する必要性によって、民族主義を作ったとする見方です。いま私たちが民族主義と呼んでいるものは、実はそう昔からあったものではない、というのです。
私は、ずっと天皇のもとに「日ノ本」という考え方を持っていた日本ならともかく、韓国(朝鮮半島)の民族主義、いや「民族」という概念そのものは、間違いなく後者になると思っています。
はてさて、いろいろ書きたいことがありますが、これだけはハッキリしておきたいところです。「韓国の民族主義は抗日闘争のために作られ、不本意にも分断によって完成された」。韓国の民族主義は、併合時代、抗日闘争のために「上古史」と呼ばれる偽の歴史、根拠不詳の「優越感」を作りながら始まりました。そして、分断によって「恨(ハン)」を残し、その恨の力で「不当な力によって私たちは正当なる権利を奪われた。いつか分断された民族の力を取り戻す」という形で完成したのです。最近の韓国の「北朝鮮ラブ」現象にも、この考え方は少なからず影響を及ぼしています。
「民族って半分になると力を失うものなの?」とか、「分断についての自己反省は?」というツッコミなど、韓国人は受け入れません。そう、韓国の民族主義は、1900年代になって「道具」として出来上がったものにすぎません。
「根拠」の一つに、言葉があります。民族という言葉ですが、これは和製漢語です。日本で作られた言葉です。「民」+「族」ですね。わずか2つ文字で実によく表したものだと、感心せずにはいられません。なぜこんな言葉が作られたのでしょうか。私は、民族主義はともかく、「民族」という概念を理解するためには、先の2つの受け入れ方をうまく合わせる必要があると思っています。民族(民族主義じゃなく、民族)という考え方そのものは、ずいぶん昔からあったでしょう。でもその概念を表すために、記録するために、教えるために、場合によっては利用するために、そしてもっと深く考え深く研究するために、「民族」という言葉が必要になったわけです。だから日本人は「民族」という言葉を作りました。
先の教授の主張通り、韓国で民族、さらには民族主義という考え方が大昔からあったとするなら、いまの朝鮮半島にも「民族」を表す言葉が一つぐらいあってもおかしくないと思いますが、ありません。韓国で「民族」という言葉を検索してみると、様々な「嘘」がヒットします。でも、結論は「よくわからない」です。民族が和製漢語だと指摘するサイトもありません。韓国の「民族」という言葉を理解するためにはサンスクリット語まで遡る必要があるとするなど、「韓国民族の歴史が長すぎでよくわからない」主張もあります。パキスタンは「朴・キスタン」で朴氏が作った民族だとか、「韓国民族の活動範囲は広すぎたのでよくわからない」主張もあります。
ただ、いまも使われている韓国語で「民族」を意味するものは、一つだけあります。「ギョレ」です。しかし、この言葉もそう昔から使われたものではありません。なにせ、ギョレの語源は「ガルレ(갈래)」です。これは、いくつか意味がありますが、基本的には「分かれたもの」となります。意見が分かれたとき、昔の表現では「意見が2つのガルレになった」とします。明らかに分断を意識した言葉であり、昔の文献には登場しません。余談ですが、左派思想が強いことで有名な「ハンギョレ」新聞の社名は「一つの民族」という意味です。
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