失敗作

前に自首したスパイの記事などでも同じことを書きましたが、「韓国の反日には迂回的に北朝鮮が関わっている」などの主張を書くと、「じゃ、反日は左派(韓国の左派は親北思想が強いですので)によるものなのか?」と誤解されることがあります。それは違います。右派も左派も反日です。「そういう側面もある」というものであり、それがすべてだと論じるのはとても危険です。

同じく、「韓国の左派は民族を優先し、右派は国家を優先する」という内容を書くと、「じゃ、韓国の右派は民族主義思想を嫌うのか?」と誤解されたりします。

それも違います。右派も左派も民族主義、韓国式の民族主義ですから「自民族中心主義」のことですが、どちらも民族主義大好き集団です。ただ、右派の民族主義と左派の民族主義には一つだけ大きな差があります。左派の民族主義には、親北思想が強く含まれています。今日は、それを書いてみたいと思います。

 

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前にも書きましたが韓国の民族主義(というか、民族という概念そのもの)はとても歴史が浅く、朝鮮戦争での民間人虐殺などを見てもすぐわかりますが、口では民族ー民族ーと泡を吹いているものの、なにか肯定的な効果を出すこともありません。

なにせ、その始まりは1900年代になってからの、いわゆる「上古史」というもので、「朝鮮民族は偉いんだぞ本当だぞ(ジタバタ)」な内容ばかりで、併合に反対するための世論を作るためのものでした。最近の韓国側の記事でもよく『偉い歴史』が載っていますが、すでに1920年代には「ユーラシア大陸を支配した」という内容の本がありました。そういう、「朝鮮民族は他民族を支配したから偉い。日本が朝鮮を支配するのは絶対いけないこと」という、自民族中心の主張が、韓国の民族主義のスタートでした。そして、いまでも変わっていません。

ご存知、解放(終戦)、そして3年間の軍政が終わった後、韓国の李承晩派は米国の意図通り「統治権が及ぶ範囲である南側だけの総選挙で十分だ」としましたが、臨時政府のリーダーだった金九主席は「なにがあっても北側と一緒に民族単位で総選挙をしなければならない」と主張しました。

なにせ、金九氏は自叙伝である「白凡逸志」で、「血統的民族だけは、永遠に、盛衰興亡の共同運命の縁に結ばれた一つの体として、この地に残るだろう・・現実の真理は、民族ごとに最良の国を作り、最良の文化を生み育て、他の民族と相互に交換し助け合うことである。これが私が信じている民主主義であり、これが人類の現段階では、最も確実な真理だ」としています。これは「一つの民族で一つの国家」を目指すというものであり、しかも彼がいう民族において大事なのはただ「血縁」であり、彼はこの時代遅れの理屈を民主主義の定義にまで結びつけようとしました。

でも、彼は暗殺され、李承晩派が勝利しました。彼らが今の保守派(右派)となり、金九派が左派(いわゆる進歩派、改革派)となります。

保守右派の政権でも、臨時政府嫌いの朴正煕大統領の頃でも、韓国で民族主義が消えたことはありません。彼らは上古史を国定教科書に反映させるなど、民族主義思想を教育しましたし、全斗煥大統領の頃には「多物民族主義」といって、上古史関連の教育で愛国心を高め、労働組合の力を弱体化させることもありました。信じがたい話ですが、政府主導の「多物民族主義研究所」などが上古史に基づいて「韓民族は偉い」という情報を広げ、実際に労働組合から脱退者を増やしたという記録が残っています。その研究所の名前から、韓国では上古史を「多物民族主義」という人たちもいます。

ただ、それは保守右派としては「自分の首を絞める」結果になりました。主に左派思想を持つ勢力によって、その民族主義に、金九主席の「民族=国家」論が復活し、そのまま「真の愛国は民族に対して行うべきである、民族こそが真の国だからだ」という流れになりました。いまでも、彼らにとって大韓民国は「半分だけ」の失敗作です。ネットでもよく耳にする(文在寅政権になってから急に聞こえなくなりましたが)、『これが国か』という表現には、実はこういう二重の意味も含まれているわけです。

そしてそれは、韓国民が信じていた「韓民族は偉い」と「現実はそうでもない」のギャップに対する、素晴らしい言い訳にもなってくれました。なるほど、国が失敗作だから民族の力が発揮できないのか。私が出世できなかったのもそのためか。北朝鮮が工作をかけたのか、南側の自爆か、それとも両方か?それはわかりませんが、現状、その隙を親北思想がものにしました。

前にエントリーした「南北が力を合わせれば無敵だ」「南北が一つになれば日本に勝てる」などもすべて同じ考えの別の表現だと言えましょう。そしていつのまにか、「おい、それって親北思想だろう?まずくない?」と言われると、胸を張って「違うよ。これは民族主義だ。私たち民族が不当な方法で奪われた正当なる権利なんだ」と答えるようになりました。その過程で民族の敵である日本を悪く描く「反日」が大活躍したのは言うまでもありません。

この内容はまだまだ説明不足ですが、いつかもっと長く書けたら、と思っています。

 

 

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