単語

韓国の民衆運動勢力、いわゆる左派思想家たちが勢力を広げることができたのは、彼らが主義主張に使う「単語」の選択、いわば言葉選びの力があったからです。それは、彼らなりの恐ろしいほど効果的な「策」でもありました。

彼らが、反共思想の強かった一九七〇年代に「金日成主席万歳!北朝鮮大好き!韓国は失敗作!」と叫んでいたなら、いくら民衆運動勢力が労働者階級を相手にしたとしても、果たして親北思想を広げることができたのでしょうか。いや、そもそも、生き残ることが出来たのでしょうか。彼らは、「単一民族」、「自主国防」、「民主化」とは言っていたけど、「親北」、「米軍撤収」、「政府転覆」とは言っていません。

私は、彼らの主義主張には一切同意できません。言葉の二重の意味を利用して大勢の人たちを「騙した」彼らの「言葉選び」を、褒めるつもりはまったくありません。

 

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しかし、良し悪しはどうであれ、彼らは韓国社会の世論を変えました。想像もできないほど、親北思想を広げました。思想の自由のもと、彼らはさらに主義主張を広げました。その際にも、彼らは「内容」に思想の自由を主張し、「単語」選びにはかなり気をつけました。むしろ、糸を張って餌を待つ蜘蛛のように、相手がなにかひどい言葉を使ってくるのを待ち構えるようになりました。長い期間、軍事政権の下で「善良なる被害者」を演じてきた彼らなりの策です。

彼らを「従北」と非難する人たちもいます。彼らを訴える、彼らから訴えられる人たちもいます。でも、裁判で負けるほうは、彼らではありません。彼らを「従北」と呼んだ人たちのほうです。

裁判所が親北勢力の肩を持ったのか?そういう見方も出来ますし、実際、そういう側面もあるでしょう(笑)。でも、ほとんどの裁判において、勝ち負けの基準は簡単です。「従北」という単語が問題です。「従北」は韓国ではすでにヘイトスピーチみたいになっているため、人の権利を毀損する「単語」になっているためです。裁判で負けた人たちの思想の内容(この場合、反共思想となりますが)まで裁判所が否定したりはしません。

 

NAVERなど大手ポータルサービスでも最近、大きな話題になっていますが、ネットサービスでよく言われる、コメント削除や「BAN」などもそうです。一部では、その人が書いた「内容」のせいで削除されたりBANされたりすることもあるでしょう。しかし、大手サイトで削除やBANの基準となるのは、ほとんどは内容ではなく「単語」です。文章のイメージを作るのは、単語だからです。

言葉選びを刺激的にしたせいで、結局は自分自身が、自分の意見を表明できる場を失くしてしまうのです。ある意味、敵に攻撃的な言葉をぶつけて自分がやられてしまっては、「敵の術中にハマった」と見ることもできます。コメント削除だけならともかく、下手すれば「意見表明の場そのもの」を失ってしまうこともあります。

ネット社会ならではの、頭痛い問題であります。

 

 

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