1960年代のことです。イエール大学のスタンリー・ミルグラム(Stanley Milgram)教授が、ある実験を行いました。
ミルグラム氏は「勉強において罰を与えることが効果的かどうか」を測るための実験を行うと広告を出し、40人を募集しました。ですが、これはフェイクでした。実はミルグラム氏は「環境の圧力の中で、人はどこまで残酷になれるのか」という実験を行おうとしていました。氏はあらかじめ「役者」40人を集めて、計80人で実験を開始しました。
実験は、「先生」と「学生」がペアになって行います。先生と学生はそれぞれ別の部屋にいます。ただ、マイクとスピーカーから相手の部屋の声が聞こえるようになっています。先生が問題を出し、学生が答えます。そして、学生が答えを不正解すると、先生は電気ショックボタンを押します。電気ショックは、回数を重ねるたびにどんどん強くなっていく仕組みで、最初は15ボルトで始まって、最大で450ボルトまで上がります。電気ショックボタンには「この出力でボタンを押すと、相手にとても危険です」と警告も書いてあります。
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ミルグラム氏は、募集した(何も知らない)40人に「あなたたちが先生役です」とし、役者40人に「あなたたちが生徒役です」と決めました。実際は、「先生」たちがボタンを押しても「学生」に電気ショックが走ったりはしません。しかし、学生(役者)たちはわざと先生の出す問題に不正解をして電気ショックを誘い、そのたびに悲鳴をあげる演技をすることになっていました。
「先生」として参加した人たちへの報酬は、4ドル。ミルグラム氏は、この変わった環境設定に、人がどれだけ服従するのか(相手に危険が及ぶと知っていながら電気ショックを与えるのか)をテストしたかったわけです。
結果、65%(26人)の先生たちが、無残に響く学生たちの悲鳴を耳にしながらも、電気ショックが最大になるまで実験を続けました。
この実験は、権威者(この場を用意したミルグラム氏)の命令に逆らえない人の心理を表すものです。または、「人の心は環境による圧力に同調するものだ」という話をするとき、この実験を持ち出す人たちもいます。
ただ、この実験に対する、ほんのちょっとだけ別の観点からのアプローチを可能にする話もあります。
電気ショックで学生(のいる部屋)から悲鳴が聞こえてくると、大勢の先生(先生役の参加者)たちが「こんな実験、もうできない」と抗議したというのです。その時、ミルグラム氏は「実験に参加したあなたが協力してくれないと教育に関する大事なデータが取れなくなる」など、確かに権威者というか圧力というか、そんな態度も取りましたが、抗議する人たち全員を黙らせた最強の一言は別にありました。それは、「(この実験で人が死んでも)あなたが責任を負うことにはなりません」です。
韓国について書く時、いつも「極端な二元論で出来た社会」と書いてきました。すなわち「敵」を設定することで自分が「善」になれるパターンが、社会全般に蔓延しているというわけです。その同調・・「善」という宗教じみたほどの同調を生み出す力にも、同じ条件が関わっているのでしょう。
「責任はない」。
相手は「悪」だから、それを攻撃することに責任は無い。攻撃する権利はあるべきで、攻撃したことで発生する責任は無い。
その心理、恨(ハン)との相性もいい気がします。
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