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よく「日本の神道には悪魔が存在しない」という話を聞きます。私は、「神道には悪魔が存在しない」ではなく、「日本的に考えると、『神に悪魔などいない』」の方がもっと適切だと思っています。なにせ、カミという存在は、「絶対」という言葉とは相性がよくありません。唯一神宗教でいう絶対善である神様(GOD)とは違い、その御使いである天使とも違うので、それらの反対概念である絶対悪・悪魔とも違います。人の立場によって良い・悪いの評価が分かれる神はいるかもしれませんが、絶対善も絶対悪も存在しない、日本ではそういう世界観が一般的です。
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元キリスト教徒だった経験から見ても、そもそも悪魔というものが日本に付け入る余地はありません。なぜなら、日本では『堕落』が基本的に自己責任だからです。
ここでいう『堕落』とは何か。キリスト教的に「悪魔」たる存在の意味は、人々が神様以外のものを求めるようにする、または神の存在を否定するように策を仕掛ける、『人が、神の救援を得ることが出来ないようにする』すなわち聖書的な意味で『堕落』させる、そんな存在を意味します。彼らは悪そのものであるため、懺悔しない、自分の罪を反省しない存在で、赦す必要すら無いとされています。
聖書によると、イエスは、自分自身が逮捕されて殺されるだろうという予言を、弟子たちに話したことがあります。それはイエスにとっても本当に嫌な出来事ですが、それは神様の意を実現するために必要なことでもありました。罪のないイエスが、世界中の人々の罪を背負って代わりに死に、そしてそれを赦さないと、『イエスを信じることで、人々は自分自身の罪から赦しを得る』というキリスト教の核心教義である「救世主(キリスト)としてのイエス」が成立しなくなるのです。その予言を聞いたペテロが、「そんなことさせませんよ!」と話し、イエスが処刑されることを絶対に阻止すると断言します。すると、イエスがペテロにこう言います。『悪魔よ、消えろ!』。
自分の師を守ろうとするペテロの行動は、何も悪いものではありません。イエスからしても、自分を守ってくれる優しい言葉のように聞こえるけど、もっと広い視野で見ると、その行動がむしろ神の意を邪魔することでしかありません。そんな言葉に甘やかされると、堕落するしかないから、ペテロの言葉を「悪魔」と言ったのです。聖書で言う悪魔という存在の仕事は、こういうものです。すなわち、悪魔というのは、単に人が悪いことをするように仕向けるだけではありません。人を大金持ちにすることで神への信仰を失うようにするのも、悪魔的には「あるある」です。
でも、日本の神道的には、特定の神を信じないと天国に行けないとか救援されなくなるとか、そういう決まり事もないし、善と悪に両分され組織的に睨み合っている世界観でもないし、神と人の関係を邪魔しようとする勢力も存在しません。もしキリスト教の悪魔さんたちが日本に来たとしても、どっかで遊んで帰る以外にやることはないでしょう。もし、ノルマ達成に追い込まれた悪魔がいて、日本で「いいか、もう神を信じるなよ」という条件で誰かを大金持ちにしたり、濡れ衣を着せられ襲われそうになった人を「私が相手だ!」と守りきったなら、その悪魔は、日本ではちょっとした神様扱いになるかもしれません。小さな神社や祠堂なら建つかも。その時点で、その存在は(日本では)神です。悪魔などではありません。
個人的にはちょっと微妙でしたが、『神の意志に逆らって都市が水没されても、一人の女の子を救う』内容のアニメ「天気の子」がここまでヒットする国ですから、日本は。その主人公、キリスト教的には悪魔ですけどね。
どこからどこまでが正義で、どこからどこまでが悪で、それは神と関係があるのか無いのか、しかもその中に「絶対に悪いやつ」の存在なんか考えもしない、日本の世界観は、本当に不思議です。ある意味、悪魔にも最小限の敬は向けるべきだとする社会の通念があるのかもしれません。
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