米国の連邦最高裁が、ドイツの主権免除を認める判決を下しました。ナチスにとんでもなく安い価格で売られた(事実上、奪われた)、ユダヤ人たちの宝物に関する裁判でした。原告側は、この件がホロコーストとも関係があると主張していました。米国最高裁は、ホロコーストと関係あるとは思えないし、なにより、『ドイツの主権免除』を認めました。そもそも米国裁判所の管轄ではないというのです。『もしドイツが米国の主権免除を認めなかったなら、相互主義に基づいた判決を下したかもしれない』とも。日本や韓国関連情報ではありませんが、主権免除というキーワードのタイミング的にいいかなと思って、エントリーしました。以下、二つの記事を引用します。まず、韓国日報からの部分引用です。
<<90年前、ドイツのナチがユダヤ人から宝物を強奪したとし、子孫がドイツ政府を相手に出した訴訟で、米連邦最高裁が全員一致で、原告敗訴の判決を下した。ナチスの行為の正当性を離れて、米国の裁判所が他国政府の法的責任を問うことができないという「主権免除」の立場に立ったものである。最近、日本軍慰安婦被害者の訴訟で日本の責任を認めた韓国の裁判所とは意見が違う判決であり、注目される。
米政治専門媒体ポリティコは3日(現地時間)、ユダヤ人の子孫が、ドイツ連邦政府を相手に提起した2億5000万ドル規模の損害賠償請求訴訟を、連邦最高裁判所が棄却したと伝えた。原告側は、1930年代ナチス執権期に美術品商人だった先祖たちが所有していた宗教遺物、いわゆる「ヴェルフ家の宝物(Welfenschatz、Guelph Treasure)」を安値で取引して、事実上『没収』されたと主張した。現在、この遺物は、ドイツ政府が所有する博物館に所蔵されているだけに、政府が被害補償をしなければならないという理屈だ。
原告側は、美術品強奪が本質的にはナチスが犯したホロコースト(ユダヤ人大虐殺)と通じるという論拠も提示した。弁護人は、「宝を所有しているユダヤ人は、当時、家族の命がかかっていたので、仕方なく応じるしかなかった」とし「ナチス治下で行われた取り引きを妥当と考えてはならない」と強調した・・>>
韓国日報から引用したのは、状況説明が分かりやすかったからです。ですが、ここから、書き方がちょっとおかしくなります。続けてみます。
<<・・しかし、米最高裁判所は、原告側の立場を認めなかった。先にドイツの裁判所が下した「その美術品取引は脅迫によるものではなかった」という判決を、事実上、受け入れたのだ。ジョン・ロバーツ最高裁長官は、「相続人の財産請求管轄するかどうかを決定するために、大量虐殺のような国際法違反行為は考慮しない。私たちは、財産についての法理だけを検討した」と述べた。主権免除の原則を明らかにしたのだ。主権免除は国家に帰属される行為と国家の財産は、他の国の裁判管轄権からの免除を受ける権利を有し、また、他国は免除を付与する義務を負う国際法上の原則である。一般的に、反人権犯罪は主権免除対象に含まれないが、今回の訴訟はその程度ではないということだ・・>>
主権免除を認めたとしつつも、なんか、書き方が曖昧というか、『一般的に反人権的犯罪は主権免除にならない』と書いたり(これは米最高裁の判断ではなく韓国日報の私見です)、ハッキリしません。この部分は、朝鮮日報から引用してみます。
<<・・原告らは「ナチスの弾圧で不当に奪われた」と主張したが、米司法は「米国の裁判所が判断する事案ではない」とし、「主権免除」の原則を適用した・・
・・ユダヤ人の子孫たちが1・2審で勝利したが、最高裁判事9人は全員一致で下級審の結果を覆したことで注目されている。最高裁判決の要旨は「この訴訟は、米国の裁判所で外国政府を相手に訴訟を禁止している連邦情報監視法(FISA)に抵触するため、効力がない」ということだ。前地方裁判所と連邦控訴裁判所は、「FISAの例外とすることができる事案であるため、返還訴訟を進めることができる」としたが、最高裁が覆したのだ・・>>
韓国日報もこう明快に書いてくれたら、わざわざ二つの記事を引用する必要も無かったのに。どうしたのでしょうか(棒
再び韓国日報の記事に戻りますと、ロバーツ最高裁長官は、「米国政府が前に犯した人権侵害により、『私たちは数億ドルを受ける資格がある』と主張する人たちがいて、ドイツの裁判所が彼らに勝訴判決を下していたなら、私たちも相互措置をとることができた(※ドイツが米国の主権免除を認めなかったなら、米国もドイツの主権免除を認めなかっただろう)」と話しました。
※次の更新、いつもより遅れると思います。申し訳ございません※
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