いつものことではありますが、今回の韓中外相会談も、韓国と中国の発表内容が随分違います。韓国の場合は、既存の事案にマニュアル的な発表だけでした。例えば、前から話があった「習近平氏の訪韓」を再確認した、「北朝鮮核問題の解決に協力する」と再確認した、そんな感じです。具体的な内容はありませんでした。ある程度の具体性があったのは、昨日お伝えした「上半期に2+2やる」ぐらいでしょうか。
しかし、中国側の発表には、韓国外交部の発表には無かった内容が、結構細かく盛り込まれています。北朝鮮に対しても「平和プロセスと非核化を同時に進める(韓国と同じスタンスです)」としているし、習近平氏の訪韓については言及していません。韓国が表向きには日米陣営に入っていることを考えると、中国の一方的な勝利で、韓国は完全に弄ばれた形となりました。それでも韓国はこれを「バランス」と呼ぶでしょうけど。以下、中央日報の記事から部分引用します。
<<・・中国外務省は同日、ホームページに掲載した韓中外相会談資料で、「双方は、健康コード相互認証システムを確立し、ワクチンの協力を展開し、ファーストトラック(迅速通路製)をさらに拡大することに同意した」と明らかにした。中国はコロナ19ワクチン接種履歴と核酸検査、血清検査の結果などが盛り込まれた「国際旅行健康証明書」を先月発表し、他の国々との相互認証を進めている。韓国政府も、中国からの認証の提案を受けて検討してきた。ところが、中国は韓国がワクチンパスポート相互認証に合意したと発表したものである。これは、韓国外交部報道資料とチョン・ウィヨン外交部長官の記者懇談会では言及されなかった。
中国外務省はまた、「韓国が中国の海外同胞ワクチン接種計画である「春苗(※1)行動を支持した」と付け加えたが、これも韓国外交部の声明には無かった。
中国外務省の発表には、「韓国が中国のCPTPP登録提案を歓迎した」という内容も含まれている。中国CPTPP登録は、習近平主席が昨年11月アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で直接言及して注目された事案である。 CPTPPはオバマ米政権が推進して12カ国が参加したが、ドナルド・トランプ米政府が脱退した環太平洋経済連携協定(TPP)の後継版である。米脱退後、日本主導で残りの11カ国がCPTPPを構成したが、効果が半減したという評価が多かった。中国政府は、習主席が「CPTPP登録を積極的に検討する」と明らかにした後、加盟国と接触していることが分かった。ただ、韓国はCPTPP加盟国ではない。
北朝鮮の核問題に対しても、韓中の発表は微妙な違いがあった。中国外務省の発表によると、王毅部長は会談で、「北朝鮮の合理的安保関心事を確実に解決する」と述べた。北朝鮮の安保関心事とは、体制の保障を意味する。中国は、朝鮮半島の非核化と平和体制転換を同時に推進しなければならないという「双軌並行(※2)」を韓半島問題解決に提示してきた。王部長はこれを重ね確認とみられる。一方、韓国外交部は、「双方は朝鮮半島の非核化の実現という目標を共有し、朝鮮半島の平和プロセスの進展条件を確保するための協力を持続的に拡大する」というマニュアル的な内容のみを公開した。
中国外務省は、習主席の訪韓については一切言及しなかった。韓国外交部が会談の結果として、最初にハイレベルの交流継続を強調し、「中国側は習主席の訪韓意志を改めて表明した」と明らかにしたものとは温度差がある。チョン長官は会談後の記者懇談会でも、「コロナ19状況が安定しているようで、習主席の訪韓をなるべく早期に推進し、そのための具体的な計画は協議を開始することで合意した」と説明した・・>>
※1の「春苗(チュンミャオ)行動」とは、各国の中国人のワクチン接種を中国が管理するというものです。一部ではワクチン外交の最終型だと言われていますが・・
※2の「双軌並行」は、中国が主張している北核問題の解決法で、平和プロセスと非核化を同時に進めるという、いわゆる核問題のツートラック政策です。文在寅氏はこれを頼りに「先に終戦宣言からしよう」と主張していますが、自由民主主義陣営では反対されています。
繰り返しになりますが、韓国としては「一方的にしてやられた」と言えるでしょう。特に、習近平氏の訪韓に関する内容が無かったのは、韓国としては結構痛いでしょうね。成果としてもっとも強調した内容だったのに。
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