韓国では、自分の意志に反して北朝鮮に入ること(北朝鮮拉致問題)を『拉北(者)』といい、自分の意志で北朝鮮に入ることを『越北(者)』と言います。北朝鮮は、日本に対しては拉致被害者が存在すること自体は認めていますが、韓国に対しては、『拉北者は一人もいない。全員、越北してきただけだ』と主張しています。
今回、訪日したバイデン大統領が拉致被害者家族と会いましたが、そのことで、朝鮮日報が、25日 (記事その1)と27日(記事その2)に、連続で記事を載せました。なぜ韓国は、韓国の拉北者問題について、誰も声を上げないのか、と。多少は「日本が羨ましい」といったニュアンスの記事です。朝鮮日報は、これは国民の命という国家の基本に関する問題だとし、これが、日本と韓国の『基本』の差である、としています。以下、<<~>>で引用してみます。
<<ひざまずいて目の高さを合わせて会話するのは、「あなたを尊重し、あなたの言葉を聞きます」という意味を込めている。バイデン米大統領が、日本の拉北被害者家族面談の時、家族会の高齢者たちの前でひざまずいた。長男の写真をポケットから取り出し、見せながら、「子供を失ったあなたの苦痛を知っています」とも話した。バイデン大統領は、病気と事故で子供2人を失っている。
北朝鮮日本人拉致問題は1980年代初めから知られたが、日本外交の核心問題となったのは2000年代初頭だ。まだ40代だった国会議員安倍晋三が旗を上げ、拉北者5人と家族を北朝鮮から連れてくるにおいて成果を上げた。彼は、国民保護という国の基本に忠実だった。韓国の立場からすると、彼を受け入れることはできないが、日本国民が彼を認める理由でもある。以後、この問題は日本の対北朝鮮外交の「すべて」になった。米大統領の拉北被害者面談は、日本の対米外交を計る尺度となった。
その場に参席した被害者家族と日本の政治家たちは、胸に青いリボンをつけていた。青いリボンは、日本人の拉北被害者と家族の間にある日本海、そして彼らを結んでくれる青い空を意味する。被害者たちが家族のところに帰りたいという願いを込めている。岸田文雄をはじめとする日本政治家たちは、いつも胸にこの青いリボンを付けている。
韓国でも、2000年代には、1000人余りに達する朝鮮戦争関連拉北者と、国軍捕虜たちの帰還を望む意味で、「黄色いリボン」のを付ける運動が繰り広げられた。しかし、黄色いリボンを付ける政治家はいなかった。拉北者と国軍捕虜は南北関係改善の障害物と扱われ、彼らは忘れさられた。その間、高齢の被害者と家族は、一人、また一人、生を終えている。
朝鮮戦争当時の拉北者まで合わせると、8万人を超える。文在寅政権当時、拉北被害者は国民とされなかった。民主党議員は、北朝鮮の顔色をうかがい、拉北者の法的名前を「行方不明者」に変えようとする法案まで出した。政権交代後、変化が感じられる。大統領就任式に拉北者家族と、北朝鮮から逃げてきた国軍捕虜が特別招待対象者として参加した。ひざまずいた米大統領を見ると、国家の基本をもう一度考えることになる・・>>
さぁ。尹政権が、拉北問題について何か声を上げたという話は聞きません。ただ、彼らに相応の関心を示すようになったなら、それはいいことだと思っています。でも、朝鮮日報の記事は、『いままで、韓国は何かをやったのか』「なんで日本ほど話題になっていないのか』というのが大まかな流れだといえますが、それが文政権『だけ』のせい、左寄りな考えを持った政治家『だけ』のせい、でしょうか。
韓国社会には、『いいものがいい(ジョウンゲジョタ)』という考えがあります。これは、『問題があることが問題ではなく、問題を指摘して騒ぎを起こすほうが問題だ』とする考えです。問題というのは、基本的に『ウリ』の問題となるため、それを明らかにしたら、ウリに害を及ぼすことになる、だから蓋をしたままにしておこう、というのです。むしろ、その問題を指摘し、なんとかすべきだと声を上げたほうが、『悪者』扱いを受けます。社会問題としてよく指摘されますが、なかなか改善されないでいる問題でもあります。
右寄りの政治家たちもまた、似たようなことを考えていたのではないか。そんな曇った見方をしてしまう、今日この頃です。拉致被害者全員が、一日でも早く帰国できることを、祈っております。日本だけでなく、家族と離れ離れになっている、世界中の拉致被害者たちも。
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