文喜相(ムンヒサン)案というものがありました。いわゆる基金案の一つで、日本政府、韓国政府、韓国企業、日本企業、市民の寄付などで、基金を作るという案です。2019年頃、韓国のマスコミでなぜか「これならいける」と話題になりましたが、日韓両方から受け入れられず、しばらく聞いたことがありません。
ですが、尹錫悦(ユンソンニョル)政権内で、このムンヒサン案が再び浮上している、という報道がありました。先に話すと交渉で不利になることもあるから、まだ出さずにいる、とも。ちなみに、基金関連案は、日本側から公式に拒否されたと言われています。ソースはTV朝鮮で、朝鮮日報の総合編成チャンネルのことです。総合編成チャンネルとは、様々なテーマの番組を編成できる大手ケーブルテレビ局のことです。以下、まずはソース記事を引用してみます。<<~>>が引用部分となります。
<<日韓首脳会談開催の前提条件として、日本政府は日本企業の資産現金化を行わないという保障を求めています。尹大統領は韓日関係の改善を公言しましたが、(※この条件を)受け入れるのは難しいという雰囲気である、と知られました・・・・ただし、膠着状態をなんとかするために、最近、政府内ではムン・ヒサン案が解決策として浮上しています。
日本企業の資産を売却せず、日本企業と対日請求権資金を受けた韓国企業が共同で基金を造成して補償する案が骨子です。政府高位関係者は「私たちがまず解決策を提案する場合、対日交渉力に打撃を受けることになる」とし「過去のことについての懸案と、輸出管理厳格化を一気に解決することが望ましい」と話しました。続いて「日韓首脳会談の成否は日本側の誠意ある交渉態度にかかった」と述べました・・>>
ソース記事は「日本企業と、対日請求権資金を受けた韓国企業が共同で基金を造成して補償する」ことを「骨子」としていますが、違います。まずこの案の特徴は、「日本政府」「韓国政府」が入っている点です。日本企業及び市民からの寄付については「自発的な参加」としていますが、日本政府、韓国政府、そして韓国企業(日韓請求権協定による資金を直接受け取ったところ、など)の参加は必須となっています。それ以外の韓国企業については内容が確認できませんが、多分、自発的または「民間からの寄付」扱いではないでしょうか。
韓国政府が「代位返済」するという案もありましたが、それと違うところは、日本政府が入っていること、すなわち『主体』の一つになっていることです。しかも、日韓の両政府。これがこの案の特徴で、いわば骨子です。また私見ではありますが、この「両政府の参加」こそ、日韓両方から『無理っす』と言われたもっとも大きな理由ではないでしょうか。
この案が出て(2019年)、しばらくして『韓国政府内でもこの案には同意できないという話が出ている』とする報道が出るまでの間、韓国メディアは「この案ならなんとかなる」という記事を無数に出していました。2019年12月28日の国民日報もまた、「隣国なのに信頼し合わず、背を向けた」という題の記事で、「国会でムンヒサン案が指示されている」「専門家もこの案ならなんとかなると言っている」とする記事を載せました。
<<・・国会でムン・ヒサン案発議されることによって徴用問題の解決の糸口を見つけることができるという期待が出てきたものの、通過までは問題が山積している。日本からは、ムン・ヒサン案なら受け入れられるという雰囲気が感知される。30年以上日本で韓日関係を研究してきたイ・ジョンウォン早稲田大大学院アジア太平洋研究科教授は、「ムン・ヒサン案は外交的には、なんとか縫合することができる」とし「今の時点で(日本企業の資産の)現金化をしても、日本は判決に不服して受け入れる気配が全くない」と分析した・・>>
しかし、それから日本政府は「また基金案かよ」な反応しか示さず、韓国でも裁判当事者(原告など)の反発が強く、韓国政府内でもこの案は評判がよくない、などの記事が流れ、このムンヒサン案は話題にならなくなりました。先の記事にある「国会で期待が出ている」の話はなんだったのでしょうか。「日本政府内でも、これなら受け入れられると~」はまたなんだったのでしょうか。
ひょっとすると、日本『も』努力すべきだという話は、こういうものだったのでしょうか。なら、本当に尹政権のアプローチは、文政権のそれと何も変わっていません。むしろ、後退したと言えるかも知れません。あの文政権でさえ、基金案で「輸出管理厳格化まで一気に解決する」とは言わなかったからです。
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