本ブログでも取り上げましたが、韓国の朴振(パクジン)外交部長官が、中央日報とのインタビューでいろいろ話しました。その中にGSOMIAを正常化したい、という内容もあり、訪米してブリンケン長官と会談した際にも、この話をしたと報じられています。
GSOMIAといっても、率直に言って、北朝鮮関連以外は無いでしょう。日米韓のミサイル警報訓練も再開(2018年頃までは普通にやっていました)するとしているし、今の時点で外交部長官がGSOMIA正常化について言ったことは、そう不思議ではありません。
韓国は、朝鮮半島周辺、米軍も関わることができる範囲内で(いわゆる作戦区域などで)は、日本との軍事協力はできないというスタンスです。それ以外だと、警報訓練ぐらいが精一杯です。他は、どこか別の国で開かれる共同訓練に参加するぐらいでしょう。GSOMIAの正常化は、『日本との軍事協力を強化するのは困るけど、基本的にやることはやるから』というアピールにもなります。「それ以外に『味方アピール』できる事案が無い」という見方もできますが。
ただ、この件には、2つの疑問点があります。GSOMIAは『終了する→終了するのを猶予する→少し様子を見る→もう少し様子を見る→後もう少し見る→何の話だったかな』状態で、別に終了したわけではありません。いわば、いまも稼働中です。
実際、日本政府はパクジン長官のGSOMIA正常化の話で、「GSOMIAは協力を強めるものだし、地域の安保に役立つ」とマニュアルな返事をしましたが、しかし、ソウル経済の記事によると、相星孝一 駐韓日本大使は、「GSOMIAなら正常稼働中なのに、なんの正常化のことでしょうか」というストレートな反応を示しました。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。
<<相星孝一駐韓日本大使が、パクジン外交部長官の韓日軍事情報保護協定(GSOMIA)正常化発言に、よくわからないという反応を示した。GSOMIAならすでに正常稼働しているのに、正常化するのはどういうことなのか、という意味だ・・・・相星大使は日中韓3国協力関連シンポジウムで記者たちと会い、正常化と言いますと、何か問題があるのか、どういう意味なのかわからない」と話した。
相星大使は「GSOMIAならうまく稼働しているという意味か」という追加質問に「私はそう思っていますが」と答えた。すでに稼働中のものを正常化するもなにもない、という意味だと思われる。2019年、文在寅政権は日韓の間の懸案によりGSOMIAを終了するところだったが、条件付きで猶予すると両国が合意し、協定を維持した状態だ・・>>
「両国」が「条件付き」で合意って、どういうことでしょうか。先も書きましたが、日本はそれから何もしていないし、条件付きならいまごろ終了しているはずですが。当時の関連ニュースを覚えておられる方々も多いでしょうけど、なんだったかな、「翌年1月まで様子を見て、日本が(厳格化の解除など)措置を取らないと、そのまま終了する」という話でした。それが、「春までは」「4月までは」などと話がおかしくなって、ついには1年経ってそのまま自動延長し、『いつでも終了できると言ったから、自動延長は意味がない』と話すなど、ワケが分からなくなりました。
<<・・韓国が2019年11月に「終了通知を猶予する」措置をしたから、過去のように1年延長(※自動延長)の方式はもう利用できず、韓国が望むタイミングでいつでも終了することができるという意味だ。しかし、一部では、日本がこのような韓国の考えを受け入れるのか、分からないとの観測もある・・(2020年8月4日聯合ニュース)>>など、当時の韓国側のメディアも、呆れたというニュアンスで記事を出していました。自動延長されているのに、自動延長に意味がないと言ったところで、日本がそんなこと気にするのか、と。
あと、もう一つは、GSOMIA終了・・の猶予(ややこしい)のこの件は、韓国では『日本の輸出管理厳格化に対する、韓国の対抗策』ということになっています。だから、韓国側からすると、『日本は何も解除していないのに、なんでGSOMIAを正常化するのか』という不満が表出されるわけです。KBSの報道によると、取材陣が「尹政権は、日本の輸出管理厳格化を解除しなくてもGSOMIA正常化が可能だと判断するのか」と外交部長官に質問したりした、とのことでして。またあれですね、「韓国が譲歩したことになるのではないか」、と。続けてKBSから引用してみます。
<<パクジン外交部長官が、韓日軍事情報保護協定(GSOMIA)をできるだけ早く正常化することを希望すると発言したことに対して、外交部は、北朝鮮問題への対応のため、原則的な立場を表明しただけだと明らかにしました。チェ・ヨンサム外交部スポークスマンは今日(14日)定例ブリーフィングで、「尹政権は、日本の輸出管理厳格化の解除無しでも、GSOMIA正常化が可能だと判断したのか」という取材陣の質疑に、「北朝鮮問題への対応のため、GSOMIAなど韓米日の安全保障協力が円滑に行われる必要があるという、原則的な立場を表明したものだと理解していただきたい」と述べました・・>>
大変ですね(笑)、いろいろ。進退両難、といったところです。しかし、これだと、「GSOMIAを日本との貿易問題の対抗措置として終了した(しようとした)」と自白しているわけですが、そこはいいのでしょうか。そのまま、「『安保』関連まで問題を広げた」ということになりますが。
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