6月14日と15日、韓国の外交部長官の、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)関連発言についてお伝えしました。訪米してブリンケン長官と会談した後、記者会見で、パクジン長官はこの協定の正常化について話しました。しかし、それは、韓国各メディアから『日本は何の措置も取っていないのに、なんで韓国政府が先に正常化するのか』という批判を受けることになりました。
もともと協定の『終了の猶予』は、輸出管理◯格化などに対して文在寅政権が取った措置であり、日本はまだ何も解除していないのに、なんで韓国が先にそれを正常化するのか、という反発です。左側とされるメディアはいつものことですが、いつもはそうでもないメディアまでもが同じ趣旨の記事を載せ、個人的な、というか感覚的なものではありますが、思った以上に反発が強いという印象でした。
前にも書きましたが、多分、米韓会談でブリンケン氏に何か言われたのでしょう。もともとこの協定は安保のためのものであり、これを終了するということ(結果的には終了の猶予というよくわからない状態になりましたが)は、それまでは手を出してはならないとされてきた『安保』領域への措置でした。見方にもよりますが、米国が「日韓の間の案件」としていたものが、「日米韓の案件」になってしまったわけです。多分、米韓外交部長官会談でもこの話が出てきて、会談のあとに、日米韓協力、日韓関係改善をアピールするために正常化を言い出した・・そういったところではないか、と思われます。
しかし、国内での反発を意識したのか、直後に国防部が火消しに走りました。「正常化問題については、韓日の間の懸案の進展を考慮して検討する」、などです。しかし、その過程でもっとも印象的だったのは、本ブログでも14日に取り上げましたが、相星孝一駐韓日本大使の発言です。大使は「日中韓3国協力関連シンポジウム」で記者たちと会い、「正常化と言いますと、何か問題があるのか」「すでに正常稼働中なのに、どういう意味なのかわからない」と話しました。
一部の韓国メディアはこの発言について、「そんなことはない。情報の流れはほとんど機能していない」、「分析能力は韓国のほうが高い」、「日本は主に情報を受け取る側であり、本当は正常化を心待ちしている」などの記事を載せました。中には、いわゆる『外交カード』として使うべきだ、という主張もありました。ですが、JTBCが、『実際、GSOMIAはなんだかんだで機能しており、正常化は象徴的なものにすぎない』という記事を載せました。事実上、相星大使の発言を認めたような内容となります。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・JTBC取材結果、韓国政府が先に解く(※終了猶予措置を解除する)ことはないと思われます。朴長官は先にワシントンで「情報包括保護協定を、できるだけ早く正常化させたい」と述べました。この発言の後、いくつかの推測が出てきました。韓日関係改善のために韓国政府が先に『解く』のではないかという推測です。
ある外交消息筋はJTBCに、「まだそんな動きはない」とし、「対話の雰囲気づくりのために私たちが先に(ジーソミアを)解くことは、無い」と話しました。事実上、韓日間の懸案解決を控えて、ジーソミアから解いたりはしないと、政府が方向性を決めたのです。韓国政府は、朴長官の発言は、原則的な説明であるだけで、まだ日本政府と関連事案について議論しているわけではないと説明しました。
現在、条件付き延長状態を維持しているので曖昧ではありますが、実は、日韓安全保障協力は正常に行われているそうです。そのため、ジーソミアを解くかどうかは、「象徴性」の問題です。外交情報筋は、「日本の関心事は、旧朝鮮半島出身◯働者問題」とし「日本も、その懸案の解法が出てこない限り、輸出管理◯格化を緩和したりはしない」と述べました。このような状況で韓国が先に日本に宥和的な態度を示すのは、韓国の世論的にも受け入れられないと、政府も認識しています・・>>
さらっと書いてありますが、記事は、GSOMIAと直接言及はしていませんが、「終了猶予を解除するといっても、象徴的な措置にすぎない」とし、今もちゃんと機能していると認めています。すなわち、この前の相星大使の発言は、間違ってなかったという意味です。
そのためか、記事全体で『外交情報筋』が話した部分には、『正常化』という言葉がありません。『解除』『解く』となっています。長官の発言を引用する部分には正常化という言葉も出てきますが。すなわち、外交情報筋と呼ばれるほどの人たちは、すでに正常化という言葉が成立しないのを、知っているのでしょう。
見方にもよりますが、これは、「猶予などの話に意味は無いと、韓国側もすでに知っている」ことにもなるでしょう。そう、世論というか、相手が日本だから、言えないでいるだけです。なにせ、正常化したいと話しただけでこの騒ぎですから。
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