6月11日、岸田総理は「1965年の国交正常化から構築してきた日韓関係を発展させていく必要がある。そのために、旧朝◯半島出身労働者問題をはじめとする韓日間の懸案を解決することが急務」と話しました。目新しい内容ではなく、ずいぶん前から日本側の一貫した主張となりますが、当時、韓国メディアは速報として結構大きく報道しました。
しかし、6月30日(ソースである国民日報の記事は今朝のものですが)、尹錫悦大統領は、この発言を受け入れられないとの趣旨を話しました。「(現金化問題などの)懸案の解決を前提にすることは、控えるべきだ」、と。NATO首脳会談で思ったような成果が出せなかったから、でしょうか。完全にしびれを切らしたか、としか思えない発言です。
しかし、さらにすごい(?)のは、尹大統領のこの発言に対する、記事の趣旨です。記事は、『この発言により、両国関係の進展は加速できるだろう』としています。いったいどこをどう読めばそんな解釈ができるのか、もはや毎日が不思議体験です。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・尹錫悦大統領が韓日関係と関連して「過◯史に進展が無いと、両国間の懸案と未来の問題についても議論することができないというそのような思考方式は、控えなければならない」と明らかにした。尹大統領が北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席、岸田文雄日本首相との会った後、このような発言を出し、韓日関係回復の動きもスピードを出すことができるという観測が提起される。
ユン大統領は30日(現地時間)、帰国の飛行機の中で機内懇談会を開き、「過◯も未来も問題のすべてを一つのテーブルに乗せて一緒に解かなければならない問題だと私は強調してきた」とし「韓日両国が未来のために協力ができれば、過◯のことも十分に解放されるという、そんな信念を持っている」と話した。韓日両国が未来に対する協力次元で接近すれば、それ以外にも解決策を見つけることができるという意味だと解釈される(国民日報)・・>>
まず、11日の岸田総理の発言を振り返ってみると、明らかに旧朝◯半島出身労働者問題を強調しました。言い換えれば、現金化問題です。尹大統領が『~の進展を前提にするのは控えるべきだ』としたのも、明らかに同懸案のことでしょう。同日のニューシースからの引用です。 <<・・岸田文雄日本首相は、韓国の新政権と両国関係を改善するために対話するだろうと話したと、日本メディアが11日報道した。NHKによると、岸田首相は・・
・・「1965年の国交正常化から構築してきた日韓関係を発展させていく必要がある」とし「このために、旧朝◯半島出身労働者問題をはじめとする韓日間の懸案を解決することが急務」と話した。続いて「日韓関係を健全な関係に戻すために、日本はこれまでの一貫した立場に基づいて(韓国の)新政権と疎通していく」と強調した。特に、旧朝◯~問題などに対する韓国政府の姿勢を見て、対応するという・・>>
一つのテーブルの上に置くというのは、いわゆるグランドバーゲンのことです。尹大統領は、大統領候補に出馬したときから同じことを言っていましたが、韓国内にも、当時から『あいまいすぎる』という批判もありました。しかし、(何度も引用した記事なので恐縮ですが)3月18日の聯合ニュースなど複数のメディアによると、尹政権側の人は、『そんなふうにしないと、任期5年が終わってしまう』と話すなど、グランドバーゲン、いわば『一括妥結』を主張してきました。
18日、大手シンクタンク世宗(セジョン)研究所の「日本研究センター」が主催した日韓関係セミナーにて、尹大統領(当時は当選人でしたが)の外交顧問で、後に政策協議団のメンバーにもなるパク・チョルヒ教授は、次のように話しました。「尹政府は、日韓関係改善のために積極的に出る」、「(しかし)新しい政府が入っても、両国関係がすぐ変わるわけではない」、「懸案が多すぎで、一つずつ解決しようとしたら、政権5年が終わってしまう」、「大胆で包括的に解決すべきだ」、「韓国が正解(解決策)を用意してきたら、日本がそれを採点するというアプローチは、通用しない」、「関係の進展は韓国の努力だけによるものではなく、日本も共に努力すべき部分がとても多い」。
いままでは、(文大統領もそうでしたが)このことを他の人に『言わせる』形を取ってきた尹大統領。しかし、今回のNATO首脳会談で、そうですね、ある意味、『現実の壁』を見たのでしょうか。ついに自分でハッキリと言ってしまいました。これで、日本側との会談は(形はともかく、いわゆる『成果』につながる何かの会談、特に首脳会談は)もっと遠ざかったと言えるでしょう。
それに、例え本人がそう思っていても、その両国関係の『相手側』の首脳の発言とここまで真逆の発言を、しかも多国間会議(一応、日米韓会談などもありましたし、表面的には意見をともにしたとかそういうことになっています)の帰国便の中で話したわけです。これ、完全に余裕を失っていると見てもいいじゃないでしょうか。もしこの後、日本側の総理か官房長官か外相かが『日本の一貫した立場に基づき』『国家間の約束を守りましょう』といつもと変わらないフレーズを話すなら、そのとき、尹政権はどんな反応を出せばいいのでしょうか。 次の更新は、17時頃になります。
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