韓国紙の「イエレン財務長官訪韓・通貨スワップ無し」総括記事・・「プレゼントは無かった。負担ばかりが増えた」

今回のイエレン財務長官の訪韓、および通貨スワップに関して、総括というか、他のメディアより少しだけ深入りした記事があったので紹介します。この記事のもっともユニークな点は、イエレン長官訪韓の際に出てきた「両国(米韓)は流動性供給装置に余力がある」について、「すでに米韓で締結しているFIMAのことを言っているだけだ」と指摘している点です。韓国日報の週刊紙「週刊韓国」の分析です。

FIMAとは、FIMA Repo Facility、「米国債を担保にし、ドルを借りること」を意味します。実はこれ、2021年12月、ちょっとした騒ぎがありました。韓国銀行(当時はイ・ジュヨル総裁でした)は米韓通貨スワップの終了について、「延長できなかったのではなく、延長しなかったのだ」を強調しながら、「最近の金融・外国為替市場の状況と強化された外貨流動性対応力などを勘案すれば、韓米通貨スワップ契約終了による国内外国為替市場への影響は大きくない」、「(韓米通貨スワップの延長が)霧散したという用語は適切ではない。延長しようとしたが失敗したというニュアンスのようではないか」などと話しました。

 

しかし、同じく12月、韓国銀行はFIMAを締結しました。この点について一部のメディアが、「問題ないとしつつ通貨スワップを延長しなかった韓国銀行が、なんで(通貨スワップより条件が厳しい)FIMAを結んだのか」と指摘しましたが、韓国銀行側からこれといった説明はありませんでした。この部分は当時、本ブログでも取り上げましたので、未読の方はお読みください(過去エントリーの「お知らせ」やレイアウトなどを、現在のテーマに合わせて少しだけ修正しておきました)。

今回イエレン財務長官が訪韓して話した「両国(米韓)は流動性供給装置に余力がある」が、このFIMAのことである、というのが週刊韓国の分析です。ほぼ全てのメディアが、この発言を「通貨スワップの再開についての発言だ」「通貨スワップに準ずる協力の意志を示してくれたのだ」などと報じていますが、実は前の政権のときに通貨スワップを延長『できずに』締結したものを言っただけだ、と。別にFIMAがよくないと言いたいわけではありません。ただ、すでに締結済みのものなら、いまの金融市場には、その分がすでに反映されている(その分も絞り込み済み)はずです。以下、引用してみます。<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・「両国首脳間の合意(※米韓首脳会談のこと)の趣旨に基づき、経済安保同盟強化の次元で、外国為替市場の安定のために様々な方式の実質的な協力方案を両国当局間で深く議論してほしい」。去る19日に訪韓したジャネット・イエレン米国財務長官と大統領室で面談した尹錫悦(ユンソンニョル)大統領はそう言った・・・・ユン大統領のこの発言に対し、イエレン長官がどのように答えたかは知られていない。大統領室の関係者は、通貨スワップなど外国為替市場の安定に関する具体的な案が議論されたかという質問に、「具体的な案を確認するのは難しい」と線をひいた・・

・・イエロン長官の訪韓に、プレゼント(通貨スワップ)はなかった。韓米両国が外国為替市場と関連して合意した文案は「両国は必要時(外貨)流動性供給装置など多様な協力案を実行する余力があるという認識を共有した。外国為替問題に先制的に協力していくことにした」ということだ。韓米通貨スワップを明示していないまま「余力、認識共有、協力」などでごまかした。

 

その中で、それでも具体的なところが、「流動性供給装置の余力」だろう。金融市場では、これは、昨年12月21日(現地時間)、韓国銀行と米連邦準備制度(Fed)が合意した常設フィマレポ(FIMA Repo Facility)を話したものだと解釈している。この制度は、韓銀が保有した米国国債を連邦に担保として預け、ドルを借りるものだ。当時合意した規模は合計600億ドルで金利は0.25%だ。通貨スワップよりはレベルが低い、超短期担保ローンだ・・

・・(※通貨スワップなどのプレゼントもなかったのに、イエレン長官の要求に尹政権はいろいろ応じた、という内容の後に)半導体業界関係者は、「『チップ4同盟』は、結局、中国を強く圧迫する可能性が高く、国内企業だけでなく韓国経済全体にその影響が返ってくるだろう」と心配した。THAADを思い浮かべる雰囲気だと、関係者たちは伝える。でも、対中輸出を考慮してチップ4に加入しなければ、米国と日本から半導体装置の供給が受けられなくなる可能性が高い。私たちとしては、進退両難だ。

 

サムスンはNANDの40%、SKハイニックスはDRAMの42%程度を中国で生産する。中国内の韓国工場が、装備供給が受けられず、稼動を止めれば、中国にもダメージがある。しかし、中国の措置はいつも想像を超えるものだった。特に、韓国と中国の貿易の逆潮流もすでに始まった。去る5月、韓国の対中貿易は27年9ヶ月ぶりに赤字を記録した。 1994年8月以来、初めてのことだ。対中貿易赤字は今月20日まで3カ月続いている。

ドルが価値の上昇による為替レートの変動分を外国為替政策でなんとかするだけでも難しいのに、貿易赤字まで大き​​くなっている。経常収支の悪化が見えてくると、もう為替レートは今や外国為替市場の問題ではなく、国経済構造の問題となる。韓国の通貨及び外国為替当局の負担は日々大きくなるしかないのだ。輸入物価が上がり、結局、韓国の消費者物価も上がる。米国のように自信を持って金利を上げることもできない・・>>

 

例の「両国は必要な時に流動性供給装置など多様な協力案を実行する余力がある」ですが、他のメディアはほとんどが「通貨スワップに準ずる~」と書いています。しかし、週刊韓国の記事だと、金融関係者たちは、そんなに目新しいものではなく、すでに締結してある(繰り返しになりますが、いまの金融市場にすでに反映されている)制度を言っているものだと、そう認識しているようです。こんな見解が、なんで他の記事には反映されないでいるのか。そのほうが気になります。さて、申し訳ありませんが、今日はこれで失礼します。次の更新は、明日の11時頃に致します。それでは、今日もありがとうございました。

 

 

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