尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が、福島処理水の海洋放流について、「周辺国の同意を得るべきだ」と話しました。もちろん、何かの条約などで「同意を得るべし」と定められているわけではありません。国内的にも国外的にも、言動が一貫しない尹大統領ですが、実はこの処理水だけは、候補だった頃から『強く対応する』と公言してきました。「文政権の政策をそのまま受け継いでいるのは、この件だけだ」とも言われています。以下、引用などにおいて「オ◯ン水」は「処理水」に変えてあります。
大統領候補だったときには、関連市民団体に「放流決定に対する反対立場を明らかにした(プレシアンより)」となっています。この団体は尹氏の当選直後に集会を行い、「尹当選人は、日本の処理水に関して、徹底し検証、国民的合意と、市民参加が保障される案を設けなければならないと強調した」、と「CPTPP加入を前提とした福島産農水産物輸入に対しても、原則的かつ断固たる立場を伝達しなければならない」と促しました。当時、本ブログはこの件を伝えながら、「ツケが回ってきた」と書いたりしました。
最近、日本政府が認可したことで、(どちらかというと、この期に及んで認可しないほうが不思議だと思われますが)また各メディアが処理水関連の記事を載せ、尹政権の対応を疑問視しています。参議院選挙のあとに岸田総理が改憲について話したこと、防衛白書の韓国関連記述(こちらは過去エントリーをどうぞ)、そして、処理水認可まで、『関係改善を言い、安保協力が重要だと言い、外交部長官が訪日までしたのに、なんで日本側のスタンスは何も変わらないのか』、というのです。これまた、どちらかというと変わるほうが不思議なものですが。ニューシースとイーデイリーの記事から、引用してみます。特に後者の場合、「外相会談で疎通すると言ったから、すぐにでも話し合いを始めるだろう」と書いています。これは皮肉でしょうか、それとも本当にそう思っているのでしょうか。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。
<<・・尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は26日、日本の福島処理水海洋放出計画の認可について、「大統領選挙の時から、周辺関連国に透明に説明し、同意を得るべきだと主張してきた」と話した。尹大統領はこの日、龍山大統領室庁舎に出勤し、「日本の海洋放流に対する懸念が大きい。なにか対策があるのか」という質問に、このように、一方的な決定をしてはならないという意を明らかにした。
これに先立ち、日本原子炉規制委員会は去る22日、福島原子力発電所の放流計画を正式認可した。昨年4月、日本政府が処理方式を海洋放流に決定してから約1年3カ月ぶりだ。政府は日本に懸念を伝え、責任ある対応を促しているが、市民団体と野党側は、尹政権が事実上、黙認していると批判している(ニューシース)・・>>
<<・・尹錫悦政権が、最近パクジン外交部長官が訪日し、4年7ヶ月ぶりに韓日外交長官会談を開き、岸田文夫首相に会うなど、韓日関係改善に力を注いでいる。しかし、日本政府は改憲の推進に続き、福島処理水放流決定を下し、次々と論議を起こしている・・・・政府は、日本側に安全性情報の提供と責任ある対応を促したが、これまで日本に安保協力などで手を差し伸べてきたため、対処がぬるいという批判が出ている。これを認知し、尹大統領は26日、この件に着目した。
尹大統領は・・・・「私は大統領選の時からこの件は周辺関連国に透明に説明し、同意を受けなければならないと主張してきた」と話した。尹大統領が同意を受けなければならないと指摘しただけに、政府は処理水放流に強いスタンスを示すとみられる。パク長官が去る18~20日訪日して疎通を持続しようと合意してから1週間も経ってないだけに、すぐにでも水の下で議論に入ると予想される(イーデイリー)・・>>
さり気なく「手を差し伸べてきた」と書いてあるのもそうですが・・こんなときに限って、「疎通すると言ったよね?そう言ったよね?だからすぐ疎通するよね?」モードですね。「国家間の約束を守って」と言ったのも思い出してほしいところであります。 さて、この「周辺国の同意」ですが、実は去年9月の「東亜サイエンス」というメディアの記事によると、当時のIAEA総会(去年9月21日)でも、韓国側はまったく同じ主張をしました。しかし、反応はいまいちで、日本は日本のスタンスをちゃんと説明し、中国からは何の関連発言もなかった、とのことでして。
<<・・政府が国際原子力機関(IAEA)総会で、日本が処理水海洋放出を決定し、具体的な計画を発表したことについて遺憾を示して、再考を促した。政府は、周辺国との合意なしに海洋放出を決定したことを問題視したが、肝心のIAEA総会では、放流決定を問題視する声が、他国からは出なかった。日本はむしろIAEAが汚染水処理方法について肯定的に評価したと発表し、国際機関との協力を強調した・・・・他の国ではこれといった異議申し立てが無く、韓国は一人で孤独な戦いを続けることになった。
IAEAが22日公開した各国の定期総会基調講演によると、20日と21日に行われた基調講演で、韓国と日本以外に福島処理に関する問題に言及した国は、無いことが分かった・・中国も、自国の原発建設の現状などを紹介するだけで、福島原発については言及しなかった・・日本はIAEAとの強固な信頼と協力を誇示した。井上科学技術担当相は「IAEAとの協力に大きな重要性を付与してきた」とし「ALPS処理水放出と海洋監視、安全性と規制面の検討はIAEAが処理する」と述べた。続いて「福島第1原発の実態を科学的根拠に基づいて、国際社会に説明しIAEAと継続的に協力する方針」と述べた(東亜サイエンス)・・>>
イーデイリーの引用部分にもありますが、支持率的に、どうしようもない尹大統領。しかも、いまだ「輸入関連措置を解除せず、CPTPPにも加入する」と主張している尹政権。一つ前のエントリー同様、こちらもまた、『合理的な解決方案』は見えません。見える気配すらありません。
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