インフレ抑止法(電気車補助金)関連、ブルームバーグ「ユン大統領がペロシ議長と会っていたなら、議論するチャンスがあっただろう」

日本ではあまり話題にならない案件ですが、インフレ抑止法による電気車補助金問題。韓国では大きな騒ぎになっており、本ブログでももう何度も取り上げました。この件の背景には、『経済安保』というテーマにおいて、尹錫悦(ユンソンニョル)政権が『西側陣営』に入っていないのではないか、そんな苛立ちが存在しています。韓国では、尹大統領は完全に米国の方に舵をきった状態で、米韓関係も同盟も過去最大のものになる、アップグレードする、そんなことになっています。もとから『保守側だから』という考えが影響しているのもありますが、バイデン大統領が『日本より先に』訪韓して首脳会談したことで、この流れは確実なものとなりました。

この考え方は、対中外交関連の報道にも現れており、中国側の話す内容に反発しながらも、多くのメディアは『すでに米国側だから、中国に対してこのような形で理解を求めるのもある程度は仕方ない』というスタンスを示しています。これもまた本ブログで何度か取り上げましたが、『米国側になったから、米国も、ユン政権の対中・対日外交に同調し、例外を認めるべきだ』とする論調も、基本は同じだと言えるでしょう。ユン大統領がペロシ議長と会わなかったときにも、多くの記事には『残念ではあるが、すでに米国側になったことを考えると、対中外交のために仕方ないものだった』という見方が垣間見えました。もちろん、私の読み方の問題かもしれませんが・・

 

このような考え方は、『もらえる』ことを前提にしています。この流れがもっとも揺れたのが、日米首脳会談が高く評価されたときです。特に、バイデン大統領が日本の国連安全保障理事会進出を支持すると話したときにそうでした。米国側になったし、その証拠として大規模投資を約束したのに、なんでもっともらえないのか、なんで日本がもっと多くのものをもらうのか、それが多くのメディアのスタンスでした。こういう経緯(?)から、米国のインフレ抑止法で韓国メーカーの電気車が補助金対象にならなかったことは、まさしく『後頭部』そのものでした。

 

インフレ抑止法(による電気車補助金)関連で、各メディアだけでなく、法案成立の後に長官が『WTOまで持っていく』と国会で公言するなど、ユン政権の反応はかなり強いものでした。少なくとも表向きには。個人的には、ハイレベルの人たちが『急に方案が通過した』などと話していることがもっと驚きでした。事前に米韓の間で話し合いとかしなかったのでしょうか。このように、「私たちはやるべきことを全部やったのに、なぜ米国はこんなことをするのか」な反応が主流となっているわけですが・・しかし、マネートゥデイの記事によると、米国の議会は「もうすぐ中間選挙だし」な反応です。しかも、ブルームバーグは、『もしユン大統領がペロ下院議長と会っていたなら、それは、この案件について議論する良いチャンスになれただろう』と報じるなど、迂回的に、ユン政権のスタンスを批判する記事を載せました。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・1日(以下現地時間)米国ブルームバーグ通信によると、米国民主党所属下院租税貿易委員会のブレンダン・ボイル ペンシルベニア州議員は、「私は韓国との関係を重要だと考えている」としながらも「私たちが処理しなければならない他の多くのことを考慮すると、選挙直前や直後に(この問題に)飛び込む状況が来るのだろうか。もしそうなるなら、私はびっくりするだろう」と話した。法を修正するのが最善である状況で、税法を担当する下院租税貿易委員会が、来る11月8日中間選挙(総選挙)前に電気自動車の補助金支給問題を集中的に取り上げる可能性はそう無いと見たのだ・・

・・ブルームバーグはこれと関連、インフレ抑止法の補助金条項を置いて、韓国では反発が特に大きいとし、ユン政権が事態解決のために動き出したと伝えた。同紙は、政府情報筋を引用して、「韓国企業が米国に大規模な投資を相次いで発表したにもかかわらず、今回の措置が出たことに対して、韓国政府は公正な措置ではないと見ている」とし「ユン政権がこの問題を、米国との他の経済協力と連携する可能性もある」とした。ここでいう「他の経済協力」とは、「チップ4」が挙げられる。チップ4は、米国が3月に提案したもので、半導体で安定的なサプライチェーンを構築するための協力強化を骨子とするが、中国を牽制するためのものだとされる。

 

補助金支給問題に関連して米国は私たち側の懸念を理解するという立場だ。ホセ・フェルナンデス米国国務省の経済成長・エネルギー・環境担当次官は、「私たちは韓国の懸念を真剣に受け入れて真剣に協議する準備ができている」とし、「今後数ヶ月以内に国内法制定過程を始めて詳細に見てみることになるだろう」と言った。ブルームバーグは、ユンソンニョル大統領が、訪問したナンシー・ペロシ米下院議長を直接面談しなかったのが間違いだったという指摘も出ている、と伝えた。ある情報筋はブルームバーグに、「二人が会っていたら、法案が通過する前の変化を模索する決定的機会になった可能性がある」と話した(マネートゥデイ)・・>>

記事には国会議員と国務省次官の話が出てきますが、この件は議会の問題なので、外務省としては動きづらいかもしれません。ペロシ議長の話が出てきたのも、『議会』つながりではないでしょうか。ユン政権が、ペロシ氏の訪韓時点でこの件を知っていた(米国側と情報を共有できていた)かどうかは分かりません。しかし、インフレ抑止法は去年から話がありましたし、『ここまで強く出るぐらいなら、なぜあの時にペロシ議長と会わなかったのか』との指摘が出るのは、当たり前かもしれません。さて、今日はこれで失礼します。次の更新は、明日(4日、日曜)のいつもの時間、11時頃になります。皆様、良き週末を。

 

 

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