インフレ抑止法により、ヒュンダイ・キアなどの電気車が補助金の対象にならなかった件。日本ではインフレ抑止法そのものが米中関係やサプライチェーン再編の一部として報じられ、そこまで大きな話題になっているわけでもありませんが、韓国では毎日のように記事が載り、特に、ユン政権は『すでに米国側に舵をきった』としていた今までの流れ(本当にそうなのかどうかは別にして、ですが)もあって、『仲間なのに、これはない』とする主張が大いに盛り上がっています。
いままでは主に電気車補助金関連でしたが、最近は半導体関連でも記事が載るようになりました。米国側が、「米国から半導体支援金をもらっておいて、中国に『先端』半導体関連で投資した会社があるなら、支援金を回収する」と明らかにしたからです。これは、ユン政権としては実に気になる案件です。さらに、ファイナンシャルニュースなど複数のメディアの報道によると、米国のレモンド商務長官が『韓国に投資しようとしていた台湾企業を説得して、米国に誘致した』と公開的に発表したことなどで、議論はどんどん大きくなりつつあります。普通なら『他国に投資しようとしていた~』と話すはずですが、同盟国を名指ししてここまで公言する必要があったのか、あったならその意図はなにか。そんなところです。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。
<<・・電気自動車に対する補助金問題を議論するために、高位関係者が米国を訪問している中、「半導体国産化」を叫ぶバイデン政権が、中国に投資するなら支援金を回収すると主張した。これにより、サムスン電子やSKハイニックスのように中国に工場を運営する企業がターゲットになる可能性が大きくなると思われる。このような一方的な行動は、「チップ4」の発足に影響を及ぼすという分析も提起される(ファイナンシャルニュース)・・>>。 引用部分にはありませんが、レモンド長官はこの後WSJとインタビューし、例の「韓国に投資するほうが得では」と思っていた台湾企業を説得し、米国に誘致したという内容が出てきます。ちょうど代表団が訪米したのと同じタイミングです。
引用部分でいわゆる「チップ4」関連の話が出てきますが、これは、韓国側の産業通商資源部アンドックン本部長(米国側に派遣された代表団のリーダー格です)が自ら言った内容でもあります。アン本部長は、『チップ4参加などを連携するのか』という質問に、『すべての可能性を開けておいた』と話しました。基本的に代表団の主張は、インフレ抑止法の修正です。先の電気車補助金の対象に韓国で組み立てた車の含めることと、そして、一部のメディアが報じている『中国に先端半導体投資~』関連で主張が通らなかった場合、チップ4に加入しないこともある、という意味になります。
この後すぐに別の資料を出して『それとこれとは別の案件』とし、火消しをしたものの、この発言は多くのメディアが取り上げています。以下、その中の一つ、ソウル新聞の記事から引用となります。記事は主に電気車関連ですが、米国を訪問してブライアン・ディス ホワイトハウス国家経済委員会長と面談したアン本部長は、例の先端半導体関連でも話した、となっており、先のファイナンシャルニュースの記事の内容なども考えると、やはり半導体の件についてもいろいろ話があったのでしょう。だからこそチップ4の話も出てきたのではないでしょうか。
<<・・電気車サ◯ツ問題と関連し(※◯は『ベ』です)、ジョーバイデン米国行政府との協議のために米ワシントンDCを訪問したアンドックン産業通商資源部通商交渉本部長が、中国が反対する米国主導反中半導体協議体である「チップ4」発足延期と電気自動車問題を連携する可能性を示唆した。アン本部長は6日(現地時間)特派員団懇談会で「半導体(チップ4)や太陽光産業などを電気自動車と連携して米側と交渉するか」という質問に「すべての可能性を開けておいた」と明らかにした。インフレ抑止法が先月16日に発効した中、北米産電気自動車にのみ7500ドルの補助金を与える条項を、「韓国で組み立てた電気車にも補助金を支給する方へ修正しない場合、チップ4不参加など次善策を検討するという趣旨だと解釈される発言である。
チップ4発足は本来8月末から9月予定だったが、9月中旬以降に初の予備会議を行うと延期された状態なので、同盟としてありえない今回の電気自動車問題と連携するのではないか、との見方が出ている・・・・この日の面談で、半導体支援法上、米政府の補助金を受けた企業に対して、10年間、中国投資を制限する「ガードレール」条項についても問題を提起したと明らかにした。ロナも米商務部長官はこの日のブリーフィングで「法の目標は米国の安保を保護すること」とし「支援金を受けた企業は10年間、中国に先端製造施設を建てることができない。その場合、支援金は回収されるだろう」と話した。(ソウル新聞)・・>>
アン本部長はこの日の面談で、「米国側も積極的に応じてくれた」「決して時間だけつかう協議ではなかった」と国内メディアの記者たちに話しました。しかし、外交部の人が外国メディアの記者たちに話したこととは、ニュアンスがずいぶん違います。最後に京郷新聞ですが、議会が決めたことをそう簡単に変えることはできない、とのことでして。<<・・米国のインフレ抑止法について外交部は、「議会で通過した方案に関することであり、政府が短期間に法案の内容を変えることができない」と話した。外交部高位当局者は、7日、外信記者を対象としたブリーフィングで、インフレ抑止法で関連政府がどのような努力をしているかについて、「一連のハイレベル協議で真剣な協議が進行中であり、影響を最小限に抑えるために努力している」と説明した。 この当局者はまた、「私たちに与えられた現実があるため、米国と相談し続けるしかなく、またそこで私たちが進展を期待している」と話した(京郷新聞)・・>>
この件で、長官が国会で「これから協議するけど、WTOにもっていく可能性もある」と話して、個人的にびっくりしたことがあります。協議する前にそんなことから言うのか、いったいどれだけ事前の話し合いができていないのか、と。今回も同じです。百歩譲って、実際の協議がうまくいかなかった場合、協議の場で話したなら、まだ分かります。それを、ここまで公にする理由があるのでしょうか。偶然ですが、一つ前のエントリーと、内容が直接的に繋がっている気もします。
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