韓国ウォンの通貨価値は、中国当局の政策と同調している・・ 「ウォンは中国元のプロキシ(代理)通貨」という指摘が相次ぐ

昨日(6日)、なぜか韓国ウォンの通貨価値が急に高くなり、5日基準よりドルあたり7.7ウォンも通貨高で取り引きを終えました。一部では当局の介入効果が現れた、という話も出ているし、実際、その影響も無いとは言いきれません。しかし、実は中国当局が行った措置によるものだった、という分析が主流となっています。実は9月頃から、一部のメディアが、韓国ウォンの通貨安について、『中国元と同調するようになったのも大きな理由だ』という分析を載せるようになりました。経済において中国依存度が高すぎで、ウォンが元のプロキシ(代理)としての役割を果たしている、というのです。

だから、中国元の価値が下がるとウォンも下がるし、中国当局が為替関連で何かの措置(いわゆる介入)を行うと、元とともにウォンの価値も上がるというのです。さて、世界が中国経済の影響を受けているのは事実ですし、韓国経済が特に強い影響を受けているのも分かります。しかし、いわゆる『西側』国家とされる韓国が、その通貨において中国とここまで同調して、はたして大丈夫なのか。そんなところが気になります。余談ですが、中国元の通貨価値には、台湾問題に対する懸念も影響を及ぼしています。

 

まずは、昨日、ウォンの為替レート関連で何があったのか、それは、「中国当局の介入を警戒する心理が大きくなったためだ」とする内容の記事を紹介します。ソウルファイナンスというネットメディアです。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。 <<・・6日、ソウル外国為替市場でウォン・ドル為替レートは前取引日(1410.1ウォン)より7.7ウォン通貨高の、ドル当たり1402.4ウォンで取引を終えた。この日の為替レートは前取引日より6.4ウォンも動いて1416.5ウォンでスタートしたが、場中では1397.1ウォンまで動き、1日の変動幅では20ウォンに及び、不安定な姿を見せた。為替レートが1400ウォンより下がった(※通貨高になった)のは先月21日(1394.2ウォン)以後10取引日ぶりだ。

ウォンが強勢に戻ったのは、グローバルドル強勢が多少鈍くなり、中国当局の介入を警戒する心理が大きく広がったためだ。中国外国為替当局が強力に市場介入に乗り出し、人民元が急騰し、プロキシ(代理)側面の強いウォンも強勢の流れに転換したのだ。現在、中国の外国為替市場は『国慶節(※中国の祝日の一つ)』の休暇期間だが、人民銀行は主要国営銀行に人民元防御のために域外市場でドル売りを準備するよう指示した。これに、域外市場でのドル・中国元為替レートはドル当たり7.07元、場中7.02元台まで通貨高となった。前日、米雇用指標の落ち着き応じて、Fedがスピード調整に乗り出すのではないかとする期待感があったことも影響を及ぼした(ソウルファイナンス)・・>>

 

似たような話は、9月頃から出ていました。9月6日の記事ですが、当時の通貨安について、「米連邦の金利引き上げに関する影響を強く受けているし、中国景気低迷の懸念、中国と台湾の地政学的緊張の高調に伴う人民元の通貨安、韓国貿易収支の赤字が持続しているなどの要因による」としながら、ニューシースはこのように書いています。 <<・・ウォンの価値が下落しているのは、米国連邦準備制度(Fed)の高強度緊縮に関する懸念と、新型コロナの再拡散による都市封鎖などで中国人民元が安くなっていることで、ウォンが「プロキシ通貨」として作用するなど、グローバルな問題が大きくなった影響だ。

「プロキシ通貨」とは、流動性が少なくて周辺通貨と同調化される通貨のことをいう。韓国経済は輸出に頼るところが多く、特に中国は最大輸出市場としてその依存度が高いため、ウォンが中国元・ドル為替レートの流れに同調化する姿を見せているのだ。中国の景気鈍化で韓国の貿易赤字が史上最高値に上がり、ウォンの弱さとして作用している。米国が中国技術企業への新規投資を制限する方案を考慮するなど、今後の米中対立による人民元の弱さは続き、ウォン安はさらに大きくなる見通しだ(ニューシース)・・>>

 

もちろん実際にはもっと複合的な要因が作用するでしょうけど、米国が中国への新規投資など、いわゆる『対中政策』で力を使えば使うほど、ウォンは安くなる、という意味になります。すると、(最近1~2ヶ月間、本ブログで結構な頻度で取り上げましたが)尹政権は米国にインフレ抑止法や中国への半導体新規投資関連で不満を表出し、通貨スワップを要請するようになる、と。また、台湾問題でも緊張を高くなることを避けるため、消極的なスタンスを取る、などなど、3カ国で妙な関係になっているものですね。繰り返しになりますが、これって、中国が言いたがっていることを尹政権が『代理』で言っている、一つの理由かもしれません。

米韓関係、特に米韓同盟関連で、よく『価値同盟』という言葉を目にします。他のことはともかく、同じ価値観を最優先して、舵取りを決めるという意味です。文在寅政権を気にして、『いまの政権は違う』という点を強調したかっただけかもしれませんが。日米側に対し、その価値観を示すためのターゲットとして、尹政権は北朝鮮を取り上げました。そして、そうすることで、中国関連の案件から一歩下がった場所にいられると思っていました。しかし、日米だけでなくいわゆる『西側』は全般的に、『ラスボス』は中国だという認識を持っていました。価値同盟を主張しながらも、通貨価値は中国と連動するようになっている姿が、どことなく尹政権の外交そのものにも見えます。

 

 

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