韓国財政部長官、「米国と通貨スワップ議論中(国内で)」、「通貨スワップについてはこれ以上何も話さない(米国で)」

本ブログも3回連続でお伝えしましたが、韓国銀行(中央銀行)が金利を0.5%p引き上げ、さまざまな副作用が報じられています。尹錫悦(ユンソンニョル)政権がスタートしたときから、通貨スワップをもっと積極的に進めるべきだとする主張が出ていました。中には、米韓首脳会談の最優先課題にすべきだ、日韓通貨スワップも再開すべきだ、とする専門家の意見もありました。それらは、基本的には外貨保有高など、いわゆる金融危機に備えるという意味ももちろんありますが、国内的に、『金利を上げないといけないが、いま金利が上げられる状況ではない』という側面ももちろんあったわけでして。よって、再び通貨スワップに関する記事にも注目が集まっています。

前にも同じ趣旨を何度か書きましたが、中央銀行側と、ええと、書き方に困りますが『政府側』とでもしましょうか、大統領室・企画財政部とは、通貨スワップに関するスタンスがそれぞれ違います。どちらも『あるといいが、まだそこまでする必要ない』としていますが、中央銀行のほうでは『やりたくてもできないという問題がある』を迂回的に認めていますが、大統領室や企画財政部は、すでに米国側と通貨スワップについて議論していて、『締結しようと思えばいつでもできる』としています。これもまた、直接的に言っているわけではありませんが、そういうニュアンスです。

 

6日に本ブログでも取り上げましたが、与党国会議員が韓国銀行から受け取った資料によると、「Fedは通貨スワップの前提条件として、グローバルにおいてのドル市場の流動性がどうなっているかを判断する。各国の為替レートではなく、外国為替の取引が行われる銀行間のドル資金市場の流動性状況を先に見る」、「それら判断するための代表的な指標、例えばリボ・OISスプレッド(ロンドン銀行間融資金利であるリボ金利と、満期が1日間だけの初短期金利であるOIS金利差)などを見てみると、いまのところそこまで問題が発生しているわけではない」となっています。よって、中央銀行も「いままでFedが通貨スワップを実行した時期とくらべても、状況が異なる」とし、通貨スワップは事実上難しいという見解を示しました。

しかし、政府側の対応は違います。今月始めにも、秋慶鎬(チュギョンホ)韓国副総理兼企画財政部長官(財務相)は米韓通貨スワップに対し、米国側と議論されているという趣旨を話しました。先月末頃、秋長官はジャネット・イエレン米国財務長官と電話会談をし、いざという時の流動性供給などについて話し合いました。どう考えても5月の米韓首脳会談で話した『安定のための協力』の延長線上の内容だし、米国側の発表でもそれ以上の内容はありませんでしたが、長官はその際に『ここでいう話し合いには、米韓通貨スワップも含まれている』と言い切りました。この発言によって、京郷新聞など、いつもは尹錫悦政権の関連政策に批判的なメディアも、『ついに何か動きがあったか』と報じたりしました。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・韓米間通貨スワップ締結が必要だとする声が大きくなっている中、当局の動きも早くなってきた。対外的に問題がないだけに、必要なときにいつでも通貨スワップを締結できるように準備しておくというのが政府公式の立場だが、ドル高が続いて輸入物価が上昇し、貿易赤字が拡大するなど、資本市場が凍りつくなどあちこちで警報が響き渡っているからだ。チュギョンホ副首相兼企画財政部長官は先月30日、ジャネット・イエレン米財務長官とカンファレンスコールを持って外国為替市場での協力と、米国インフレ抑止法などの懸案を議論した。二人はこの日の会議で、韓国など主要国の流動性問題において金融不安が深化するなど『必要な場合』には流動性供給装置を実行するために両側が緊密に協力するだろうと強調した。流動性供給装置には韓米通貨スワップが含まれる(京郷新聞)・・>>

記事で『通貨スワップも含まれる』としているし、尹政権ではこう言っていますが、米国側の発表には通貨スワップ関連内容はありません。ですが、朝鮮日報(朝鮮BIZ)の記事によると、それから約2週間が経ち、現地時間で12日。ワシントンで『韓国経済説明会』というイベントがあり、長官もそこで外国メディアの記者たちを相手にいろいろ話しましたが、米韓通貨スワップに関する質問には『それについては言及しない』としました。内容も内容ですが、国内で話すときと国外で話すときと、こんなにも異なるものだな・・と、色んな意味で驚きです。

 

<<・・米ニューヨークで就任後初めて韓国経済説明会を進行したチュギョンホ経済副首相兼企画財政部長官は、韓米通貨スワップについて「関連したサプライズ発表はない。 通貨スワップについてはもう言及しない」と線を引いた。長官は12日(現地時間)、米国ワシントンDCで企画財政部に出入りする記者たちと懇談会を開き、このように述べた。長官は「海外投資家たちは、特に韓国を危険だと思っておらず、為替レート問題も、米国の金融緊縮に伴い全世界が経験する共通の現象だと思っていた」とし「特に問題やリスクがあって、韓国への投資戦略を変えなければならないのではないか、そんな雰囲気は無かった」と話した。これは最近、各経済指標において懸念が大きくなっていることを意識しての発言だった(朝鮮日報)・・>>

 

一部ではありますが、国内メディアも、『大丈夫だと言いつつ、なぜ通貨スワップを公開的に言うのか』、『しかも、米国が通貨スワップに乗り出す状況ではない』、『政府側がいままで通貨スワップについて言及してきた理由は、ただそれを言うことで『成果があった』とアピールするためではないか』とする趣旨の記事を載せるようになりました。保守側とされる東亜日報も、当局が求めていた通貨スワップは『祈雨祭』だったとする記事を載せました。懇談や歓談にしかならなかったものを、事前に『快く会談すると合意した』と発表した大統領室と何もかもおなじに見えるのは、私の気のせいでしょうか。

<<・・イチャンヨン韓国銀行総裁が7日、米韓通貨スワップ締結に対する『真実の欠片』の一つを取り出した。「前提条件であるグローバル規模でのドル流動性が萎縮する状況ではない。適切な時が来たらそのときに議論する」と述べたのだ。いまのドル流動性だと、米国のOKサインは得られないという意味だ。同盟国なのになぜだ、と言う人もいるだろうが、リーマン・ブラザーズ事態があった2008年にも米国のスタンスは同じだった。通貨スワップは、雨が降った際にに使う傘だ。政府が「まだ大丈夫可能性が非常に低い」としながら韓米通貨スワップを公開的に主張すれば、市場は「ああ、あそこは傘をもとめているのか」思うだろう。通貨スワップは両国が秘密裏に推進する対策であり、大統領の外交成果のために飾ったり、外国為替市場に口頭介入するために公然と話したりするものではない(東亜日報)・・>>

 

 

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