2019年、韓国の国会報告書「家計債務による成長を続けてきたが、もうそんな時代は終わる。急いで対策を講じなければならない」・・それから3年間続報なし

今日は、債務主導成長についての分析を紹介します。一応、2019年韓国の国会予算政策部署が作成したもので、家計債務がいま(2019年)までは経済成長を主導してきたが、もうそろそろその影響が終わる頃であり、急いで対策を講じなければならない、というものです。もちろん(?)、それから3年間、家計債務はウルトラスーパーデラックスな勢いで増えました。今日紹介するヘラルド経済(2019年5月6日)の記事は、GDP対比の家計債務が86%となっていますが、それから低金利政策などで大幅に増え、いまは104%を超えます。国際金融協会(IIF)基準だと、家計債務がGDPを超えるのは韓国だけです。

一つ前のエントリーでも紹介しましたが、このデータには家を借りるための『ジョンセ』保証金約1000兆ウォン、自営業者の債務とされる約300兆ウォンは含まれていないので、単純計算で全部家計債務として合わせると(実際にはそうでじゃないので、未読の方は一つ前のエントリーをお読みください)GDPの約150%になると言われています。個人的に「これはこれは・・」と思ったのは、家計債務がGDPの役に立ったとしているだけでなく、記事の題が「債務『主導』成長」になっている点です。決して少なくない影響を及ぼしてきた、という意味でしょう。アメブロで書いていた旧ブログの頃から、専門家からネットメディアまで『家計債務をこのままにするわけにはいかない』と、珍しく意見一致していました。政府は、対策ができなかったのか、それともわざと『しなかった』のか。そんな側面も気になるところです。

 

最近、韓国側のニュースをチェックしていると、外交(国外)や経済(国内)においての政府政策が、ほぼ『止まっている』ことが分かります。さすがに家計債務や不動産価格下落、そして急な金利引き上げを今の尹(ユン)政権だけの問題だとは言えません。家計債務た不動産価格下落はずいぶん前から続いてきたもので、また、不動産購入のための債務が経済を支えてきたのも事実です。これを『支える』と書くのもどうかと思いますが。また、金利引き上げも、タイミング的に尹政権がやるしかなくなったという側面がありますし、問題は金利引き上げそのものではなく『急すぎる』ですが、そうするしかない状況ですから。

ただ、そのために何かやっていることがあるのかと言いますと・・もっとも目立つのは、野党側、特に文在寅(ムンジェイン)・李在明(イジェミョン)氏との対立です。イジェンミョン氏の側近を捜査するために共に民主党の党舎(政党事務所)まで警察が入り、国連総会のときから本格化したこの対立は、もう収まることはないでしょう。党内部も、李明博、朴槿恵大統領のときよりさらに『親・尹』と『非・尹』(尹支持なのか、そうではないのか)がハッキリ分かれた印象です。米国からも中国からも、そして日本からも、何か肯定的な記事になれそうな動きは何一つ伝わって来ず、各メディアは『円安が深刻だ』『日本に金融危機か』などの記事を増やしているの、また傑作です。

 

そういえば、今年はじめも、円が安物になったという記事があふれていました。それからウォン安が進み、通貨スワップが必要だとする専門家の主張が目立つようになり、しばらくそんな記事は載らなくなりました。それからも、もう締結したと発表するというニュースまであったものの、米韓首脳会談、イエレン財務長官の訪韓などにおいて通貨スワップは成立せず、また、ユン安(支持率低下)が進んだこともあって、しばらくは大人しかったですが・・また円安だ~ききじゃないのこれ~な記事が増えてきたわけです。こうして書いていると、そんな大手(かなりの大手も含まれています)『ヨーロッパでは、物価高騰で昼食が食べられない人が増えたというニュースがあるが、それは決して外国での話ではない』とジョンセ貸し出しを受けた会社員を取材したハンギョレ新聞のほうが、まだマシに見えます。さて、遅くなりましたが、ここから今日の本題、家計債務がGDPに影響してきた、でももうそうでもない、という話です。

 

<<・・家計債務が持続的に増加し、2018年末基準で1500兆ウォンを突破した中、国内総生産(GDP)に比べて家計債務が1%ポイント増加すると、成長率がが0.1%減少するという分析が出た。2010年代から、住宅担保ローンなど家計債務の増加に支えられて経済が活気を見せたが、今や債務の規模が限界に達して、否定的な影響を及ぼすという分析だ(記事には書いてありませんが、それから新型コロナなどもあって、ソース記事の時点では予想できなかった低金利政策が続き、家計債務がGDPの役に立つ期間はボーナスタイムを得ました。公式続報がないので言い切ることはできませんが、個人的に、この分析で指摘する『債務主導成長』は金利による側面が強く、問題はこれからだと思われます。この※の部分は個人的な意見で、記事からの引用ではありませんのでご注意ください)・・

 

・・5日、国会予算政策処の「我が国家計債務と消費および経済成長の関係」報告書によると、2013年から2018年まで5年間で家計債務は515兆ウォン増加、持続的な増加傾向を見せてきたが、その肯定的な影響がそろそろなくなりつつある。1534兆ウォンに達した家計債務は、その増加率が2010年を除いて毎年名目GDP増加率より高い水準を維持してきた。GDP比率において、2004年56.4%から2018年には86.1%に達した。関連統計がある2002年から、2017年までの15年間の年間平均成長率を比較すると、名目GDPは年平均5.6%増加したのに対し、家計債務は年平均7.9%増加し、2%ポイント以上高かった・・・・家計債務は、GDP比率が低い場合には経済成長にプラスの影響を及ぼすが、その比率が一定水準を超えるとマイナス影響が大きくなる傾向を示す。IMFが1970-2010年の80カ国に対して分析した結果、名目GDP比の家計債務比率が36~70%の時、ポジティブな効果が最も大きい(ヘラルド経済)・・>>

 

で、予算政策処は対策としてどんなアドバイスをしたのかといいますと、「家計債務増加と消費及び経済成長の関係を考慮したモニタリングが必要だ」、「しかし、貸し出し総量を政府が直接コントロールすると、流動性不足による低所得層の財務的負担が大きくなる可能性がある」、「しかし、増加傾向については継続的に管理しなければならない」でした。なにをどうしろというのか、よく分かりません。最後に余談ですが、この『家計債務でマンションを買ってください』という政策は「IMF期間」を克服するための2大政策(もう一つはクレジットカードによる債務)の一つで、本格的に始まったのは金大中政権でした。マンションが人の『身分』のようになってしまったのも、確か、それからだったような。

 

 

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