昨日、いわゆる現金化の解決策として、日韓政府が『基金案』を本格的に協議しているという報道がありました。いまのところ、(※私がチェックできなかっただけかもしれませんが)共同通信の報道だけで、他のメディアは基本的にこの記事を引用報道する形を取っています。基金案とは、両国政府及び日本側の企業は参加せず、『韓国側の企業だけ』の基金のことだそうで、日本側もこれならいけると思って本格的に協議している、という内容です。そのために11月G20で首脳会談(記事では『対話』となっていますが)を開き、早ければ年内にでもこの件を完結させる、とも書かれていますが・・
どうでしょうか。もちろん本当にこんな動きがある可能性についても考えておくべきですが、日本側としても韓国側としても、いままで主張してきたことと『ズレている』気がします。まず尹錫悦(ユンソンニョル)大統領としては、日本『側』が基金に関わらない案に、国内での同意が得られるのでしょうか。また岸田総理としても、いままでの『要は、両国関係の土台となってきた基本条約である』としていたスタンスから後退したことになります。お互い譲ったと言ってしまえばそれっぽい文章にはなるかもしれませんが、どちらも『核心』をゆずるとは思えないし、岸田総理も尹大統領も、いま支持率的にそんな余裕はありません。
また、例の『懇談』の前には、確か日韓外相会談がありました。担当部署が外交部なので、その段階で間違いなくこの件を議題にしたはずですが、本当に『協議するにあたいする案だ』と思ったなら、そのあとの首脳同士の会同が、なんであんな形になったのでしょうか。繰り返しになりますが、本当に『本格的に協議中の案である』可能性もありますが、少なくとも現時点では、個人的には『あれ?』と思っているところです。さぁ・・とにかく、11月のG20まで待ってみればわかるでしょう。『年内』の解決を目指しているなら、そこで何か大きな動きがあるはずです。
韓国メディアも、大手からネットメディアまでこの件を報じてはいますが、共同通信の記事には無い内容、大統領室や外交部の反応も書かれています。聯合ニュースは大統領室に、朝鮮日報は外交部について取材し記事にしていますが、どちらも『まだ決まっていない』という反応で、特に外交部の場合、共同通信の記事を意識してか、わざわざ報道資料(立場文)まで出しました。いろいろ話しているのは事実だが、まだ何も決まっていない、という内容です。例の官民協議会の話しとともに。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。
<<・・(※例の記事を紹介した後に)両国政府は去る7月、東京で開かれた外交長官会談で協議を始め、以後、外交長官会談と実務協議の際に、何度も韓国側は『財団を通じた代納』案を説明した。日本政府関係者は「日本としても容認可能な案だ」と話した。両国政府は11月、インドネシアで開かれる主要20カ国(G20)首脳会議をきっかけに、両国首脳間の対話も検討している。共同通信は「協議にスピードを上げれば、年内での決着も視野に入れるという姿勢だ」と伝えた・・・・これと関連して、大統領室は「決定したことは無い」という立場を明らかにした。大統領室の高位関係者はこの日、連合ニュースとの通話で、「何も決まったことがない」と話した。G20をきっかけにして両国首脳が回動する可能性についても、「全く予想しておらず、議論を始めたわけでもない」と話した(聯合ニュース)・・>>
<<・・共同通信はこの日、外交消息筋を引用して「韓国企業が財団に寄付金を出し、財団が日本企業の代わりに支払う方案が有力だ」と報道した。日本政府も、韓国財団が代納する案なら受け入れる余地があると判断し、詳細を検討中だと、記事は伝えた。日本政府関係者は「日本としては容認可能な案」と話した。このような報道に、外交部は立場文を出して、「複数の案をめぐって議論中である」とし、「決定されたことは何もない」と明らかにした。外交部は、「政府はこれまで官民協議会で議論された事項と、直原告側から聞いた声など、これまで集めてきた原告側の立場を日本に伝え、誠意ある呼応を促してきた」と話した。続いて「今後も韓国政府はこれまで国内で収束した最高裁判決の履行に関する様々な意見を十分に考慮し、合理的な解決策を検討していく」と述べた(朝鮮日報)・・>>
外交部はともかく、大統領室の反応(聯合ニュースの記事)は、いままでとはずいぶんスタンスが異なります。この前の懇談のときもそうでしたが、最近、大統領室は担当部署(例えば外交部など)よりも先に『~なことが決まりました(じゃじゃーん)』と発表するパターンが多かったですが。珍しく今回は『G20でのことも何も決まっていません』と。11月なら、そろそろ何かの動きがあるはずですが。さて、とにかく、G20で観戦ポイント(?)が一つ増えました。本当にこのような動きがあるのか。単に『協議』ならともかく、本当にこれで『年内合意』まで目指しているのか。もしそうなら、両国首脳は、その結果について責任を取る覚悟があるのでしょうか。
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