最近、日本側のメディアから、現金化解決についての報道が相次ぎました。記事によって部分的に異なりますし、読み方にもよるとは思いますが、「ある一つの案が決まっている」とも受け取れる内容でした。まず、23日の夜に報じられた共同通信の記事。韓国側でも大きく取り上げられましたが、日韓メディアともに、基本的には共同通信の記事を引用報道する形でした。いわゆる基金案で、「両国政府及び日本側の企業は参加せず、『韓国側の企業だけ』の基金」にし、日韓が本格的に協議しており、11月に首脳会談を開き、早ければ年内にでも合意を成し遂げる、というのです。
ただ、それから聯合ニュースが大統領室、朝鮮日報が外交部の話(外交部の場合は公式)を紹介していますが、大統領室の高位関係者は『何も決まったことがない』と話した。G20をきっかけにして両国首脳が回動する可能性についても、『全く予想しておらず、議論を始めたわけでもない』と話しました。特に外交部は関連立場文まで出して、『何も決まっていない』とし、『政府はこれまで官民協議会で議論された事項と、直原告側から聞いた声など、これまで集めてきた原告側の立場を日本側に伝え、誠意ある呼応を促してきた。今後も~~合理的な解決策を検討していく』と、いつものマニュアルな内容を述べるだけでした。
次にこの件が話題になったのは日韓次官級協議があった直後で、朝日新聞の報道でした。韓国側が「日本企業が参加しない基金案にするわけにはいかない」とし(この部分が共同通信の報道と異なります)、最高裁が命じたのと同じ金額を、日本企業が『寄付という名目で財団に出す』案を出した、との内容です。他にも「本格的に協議に入った」や「年内の合意を目指す」などの内容はなありませんでした。また、同じ件を取り上げた25日のテレビ朝日の報道には、韓国側は「日本企業のシャ○イは必須だ(※○は『ザ』です)」としており、日本側は『それは、無理』としている、との内容もありました。
この件もまた、26日から聯合ニュースなど各メディアが大きく取り上げましたが・・昨日(27日)、外交部は定例ブリーフィングで、何も決まっていない、一つの案で(ある案にしぼって)話し合う状況ではないと話しました。アジア経済など複数のメディアが報じており、定例ブリーフィングでのことなので匿名情報でもありません。決まっていないというのは今までと同じですが、一つの案で話し合っている状況ではないという話は、いままでは無かったパターンです。
私見も含めて考えてみると、これは「ある一つの案が出せたわけではない」、すなわちある案において首脳会談などを用意する段階ではない、という意味ではないでしょうか。また、いままで政府レベルでずっと言ってきた『誠意ある呼応』というのものが、シャ○イを意味するものだという話も載っています(これは公式ブリーフィングでの話ではありません)。以下、<<~>>が引用部分となります。
<<・・外交部は、いわゆる現金化の解法と関連し、「まだ何も決まったことがない」という立場を明らかにした。「日本企業が最高裁判決と同じ金額を寄付など名目で醵出する案を打診した」とした日本メディアの報道に、反論したものと解釈される。イム・スソク外交部スポークスマンは27日の定例ブリーフィングで、「25日に東京で日韓外交次官協議会が開催されたが、当時の協議でも、両国がある一つの案をめぐって協議した事実はない」とし、「両国関係は改善される傾向にあり、それに応じてこの件の解法を設けるため外交的努力がスピードを出している」と話した・・
・・これに先立ち、朝日新聞は、日本企業に対して財団に資金を出すよう要求する方針だと報道したことがある。外交部当局者はこれに対して「一部日本側のメディアの報道は事実とは異なる」と話した。この当局者はまた、「『日本の誠意ある呼応』とは、日本企業の財団寄付を意味するのか」という質問に、「呼応とは、原告側の意見、すなわちシャ○イとか、その主体、そのレベル、そういうことを含めて協議するという意味である」と答えた。続いて「多様な方案について意見を交換し続けていると見ればいい」と話した(アジア経済)・・>>
次官級協議に実際に参加したジョヒョンドン外交部1次官もまた、最善の努力を続けている状況だとしながらも、「進展がある、ないと話せる状況ではない」、「進展があれば、マスコミに説明する機会もあると思う」と話しました。あくまで記事に書いてある内容を読んだだけですが、いまのところ、『基金案で日韓が本格的に協議を始めた』とは思えません。個人的に、このような案で合意すると、本件でもっとも核心となる基本条約そのものが大きなダメージを受けることになると思っています。ただ、そんな可能性は高くなさそうで、なによりです。とはいえ、すごく気になるのもまた事実。これからも続報に注目したいと思います。
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