エクスポージャーという言葉があります。個人、法人(企業)、金融機関などが持っている金融資産のうち、市場の価格が変動することなどのリスクにさらされている分を意味します。エクスポージャーの全てで今すぐ何か大きな問題が発生するという意味ではありませんが、将来的に「私は先に逃げてください!ここはあなたが引き受けます」な展開になるリスクがある、ということです。
韓国銀行が不動産に関するエクスポージャーを調べてみました。企業側の債務、特に本ブログでよく取り上げたプロジェクト・ファイナンス(PF)などもそうですし、家計債務問題もあるので、こういうデータを集計、発表したのは、いい仕事をしたと言えるでしょう。で、その中身ですが、先も書きましたが詳しくどれぐらいのリスクなのか、ゴジラ級かキングギドラ級かは分かりませんが、エクスポージャーはGDPの約1.26倍であることが分かりました。予想はしていましたが、結構ありますね。
「ある『問題』が、あるのか無いのかではなく、その問題の速度が早すぎるのがほんとうの問題」である。これは、本ブログで紹介してきた案件のほとんどに共通します。家計債務も、合計出生率も、いつもそうです。まず今回の報告書関連でソウル経済、そして気になって探してみたらヒットした「金融消費者ニュース」で別のデータを引用しますが、今回も、とにかく増加率が半端なかったとのことで、しかも、銀行(第1金融圏)ではないところ、「非銀行圏」という言葉を使う場合もありますが、貯蓄銀行など第2金融圏のエクスポージャーは、約4年前より87%も増加しました(こちらは金融研究院のデータです)。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。
<<・・22日、韓国銀行は金融安定報告書を通じて今年9月末基準(※10月、11月の金利引き上げ分は反映されていません)で、不動産金融エクスポージャー(リスクにさらされている金額)が2696兆6000億ウォンで、名目国内総生産GDPの125.9%を記録したと明らかにした。2019年末まで2047兆5000億ウォンだったが、新型コロナからの低金利環境で急激に増えた。特に不動産金融の中でも、家計金融を除いた企業金融の場合、1074兆4000億ウォンで、前年同期比で17.3%増えた・・
・・韓銀は不動産金融エクスポージャーの増大を、高い民間信用(※家計債務が多い)と、非銀行金融機関(※第2金融圏など)の復元力低下とともに、主要金融システムの脆弱性に挙げた。特に不動産価格が急落した場合、家計や企業、金融機関のほとんどの財務健全性が低下することを懸念した。この日イ・ジョンリョル韓銀副総裁は、「これまで低金利基調で急騰していた資産価格が、調整される過程が進行するものと見られる」とし「もし住宅価格が急激な調整を受けると、各種ローンに問題が発生し、金融機関の健全性に影響する可能性がある。不動産価格の下落を最も注意すべきだろう」と説明した(ソウル経済)・・>>
記事は、ただでさえ金利上昇と不動産景気沈滞が起きていたところ、予想外に「レゴランド事態」が発生したことを、またリスクの一因として挙げています。記事はこれを信用にかかわる問題だとし、不動産関連企業の金融において、資金流動性と信用リスクが同時に拡大するきっかけになった、と指摘しました。その結果、PF資産流動化企業手形(ABCP)金利は3月末の2.2%から11月の8.1%に急激に上がり、来年2月までにそれらPF流動化証券、約18兆ウォンの満期がくるなど、対内外の衝撃により、借り換えや返済が難しくなってきた、と。ただ、GDP126%となると、これはプロジェクト・ファイナンスがどうとか、それだけの話ではないとも思われます。
中央銀行だけでなく関連機関は、「住宅価格が上昇していたので、最近の価格下落は調整であり、ハードランディングの兆しなどではない」という意見を出しています。ですが、このように金融(第1はともかく、特に第2金融圏関連で)関連のエクスポージャーが膨れ上がっている時点で、2~3年前より価格が上がったから~と言うのは、説得力が弱くなります。報告書は、住宅価格が15%下落し、1年ぐらいで市場の動きがおさまると耐えられるけど、30%下がり、3年間続くなら、ほとんどの金融機関に問題が発生するだろうと予想しました。
で、いつもそうですが、気になるのは第2金融圏など、いわゆる非銀行圏の金融機関です。これは11月のもので、韓銀ではなく金融研究院という機関が集計したもので、金融消費者ニュースというネットメディアが紹介しました。非銀行圏のエクスポージャーは、4年前より87.3%も急増していて、推定額は842兆3千億ウォンです。
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