韓国、一段と強くなった「中国から離れてはならない」「実利は中国から得る」という主張

韓国内で、経済、特に半導体関連ににおいて、「中国から離れてはならない」という声が強くなっています。前から強かったですが、個人的には、「日本・オランダが、米国の半導体装備の対中輸出措置に合意した」というニュースが流れてから、一段と強くなったと見ています。シンクタンク側の見解なので、これが主流意見なのかどうかを判断することは難しいでしょう。朝鮮日報のように、西側の動きにもっと足並みをそろえるべきだとの主張を一貫して出すメディアもあります。それもまた事実。

しかし、前にも同じ趣旨の文章を書いた記憶がありますが、日本・オランダの半導体装備関連で、韓国側のメディアの記事は、「合意は難しいだろう」とする内容がほとんどでした。2つ前のエントリーでグローバルタイムズ(環球時報)の記事を紹介しましたが、ニュアンス的にはそれに似ています。日本に対しては「自国の企業を守るべきだ」と優しいアドバイス(?)をする記事もありました。しかし、結果的には両国共に合意したと報じられ、グローバルタイムズが「外部協力社に頼らない」と褒めていたサムスンの半導体関連営業利益は97%減。そこで、一部のシンクタンクが焦り、動いたのではないでしょうか。

 

中国経済金融研究所のジョンビョンソ所長は、「安米経中(安保は米国、経済は中国)」という言葉から、「名米実中」と主張しています。米国には名分だけ合わせて、実利は中国から得よう、というのです。ジョン所長は毎日新聞(※日本の毎日新聞ではありません)の寄稿文で、「第4次産業革命を行うには半導体とバッテリーが必要だ。今、アメリカはバッテリーが無い。中国は半導体が無い。バッテリーは中国が世界1位で半導体は米国が1位だが、両国が協力する可能性はゼロだ。韓国は半導体とバッテリーで世界2位だ。韓国は米中が必要なものをすべて持っている」としながら、一見、米国にも中国にも偏る必要は無いとしながら、結論はこうしています。以下、各紙、<<~>>が引用部分です。

<<・・もう「安米経中」は終わったという声だけ繰り返しても意味がない。韓国は安米経中ではなく、名分は米国に合わせ、実利は中国から取る「名米実中」をきちんとしなければならない。今、自動車、携帯電話、電気自動車、半導体、バッテリーの世界最大の市場は米国ではなく中国だ。今、市場で中国に及ばない米国だけに集中すると、世界最大の市場に浮上した中国を逃し、米国で台湾と日本が韓国のかわりになる状況が生じれば、名分も実利もすべて失うことになりかねない(毎日新聞)・・>>

 

『米国(中国)には~が無い』と言っておいて、その部門で米中が1位だというのはどういうことでしょうか・・というのはともかくして、何度か紹介した韓国日報の記事に載っている、半導体業界関係者たちの話、「中国市場から離れろという米国の主張は強くなっているが、すでに中国に根を下ろして生産力を強化してきたため、同盟に対する義理を守るのは現実的に容易ではない」「すべて中国からの撤収をプランBとして準備しているだろうが、実際に中国という世界最大の市場をあきらめるのは難しい」と同じ意味に見えます。

ま、でも、これはシンクタンクの人が言っているわけですからまだいいほうですが・・・それだけではありません。政府が出捐している大手シンクタンク「対外経済政策研究院」の院長もまた、同じ主張をしました。ここからは聯合ニュースです。特定国家を外そうとしないで、すべての当事国と協力する路線でなければならない、というのです。院長は、最近のサプライチェーン再編成において日本、米国、オーストラリアなどに言及しながら、中国が入っていない点を強調、韓国はすべての当事国を含めての路線を取るべきだとしています。

 

<<・・キム・フンジョン対外経済政策研究院(KIEP)院長は3日、高麗大学で開かれた「2023経済学共同学術大会」基調演説でこう明らかにした。院長は、中国が昨年基準の韓国メモリ半導体輸出の51.3%を占めるとし、対中国半導体輸出で得られる代金は韓国が技術競争力を維持し、源泉技術を投資するのに必要な資金だと指摘した。キム院長は「現在議論されている地域およびサプライチェーン協議体は米国、オーストラリア、日本を中心に、中国は入っていない側面が非常に強いのが特徴であり、韓国はこのうち一部だけ参加している状況」と話した・・

・・一方、「韓国は米国、日本だけでなく中国、アセアン(東南アジア国家連合)国と密接な関係を結んだ国家として多国主義回復が国益に必須」とし「したがって韓国の対外戦略は、特定国家が入らないものではなく、多層的協力として、すべての当事国と協力を強化することを目指すべきだ」と主張した(聯合ニュース)・・>> あまりにも予想通りで、オチも思いつきません。

 

 

おかげさまで、また新刊の紹介ができるようになりました。今回は、マンションを買わないと『貴族』になれないと信じられている、不思議な社会の話です。詳しくは、新刊・準新刊紹介エントリーを御覧ください。経済専門書ではありませんが、ブログに思いのままに書けなかったその不思議な「心理」も含めて、自分なりに率直に書き上げました。以下の「お知らせ」から、ぜひ御覧ください。ありがとうございます

・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。

   ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2023年3月1日)からですが、<韓国の借金経済(扶桑社新書)>です。本書は経済専門書ではありませんが、家計債務問題の現状を現すデータとともに、「なぜ、マンションを買えば貴族になれるのか」たる社会心理を、自分なりに考察した本です。・新刊として、文在寅政権の任期末と尹錫悦政権の政策を並べ、対日、対米、対中、対北においてどんな政策を取っているのかを考察した<尹錫悦大統領の仮面 (扶桑社新書)>、帰化を進めている私の率直な気持ちを書いた<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>も発売中です。・刊・準新刊の詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。 ・当に、本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。