三つ前のエントリーでも取り上げましたが、最近、韓国内で「それでも中国市場を重視すべきだ」という意見が強くなっています。その際にかならず出てくるのは、「韓国が中立を維持しても、韓国は米国にとってとても重要なものを持っているので、米国はこれといった措置を取ることができない」という主張です。主に出てくるのが、半導体、バッテリーなどです。だから米国は何もできない、おそれる必要は無い、そこを利用して、最大限『国益』を得よう、というのです。
ここでいう中立というものは、米国側の動きに積極的に参加しない(いわゆる戦略的曖昧さ)を意味します。だから、結果的には中国寄りになりますが・・逆に、「もう中国から離れるべきだ」という主張、すなわち米国寄りの主張をする人たちも、同じことを言います。もし韓国が米国主導のサプライチェーン再編成に積極的に参加しても、韓国は米国にとっても中国にとても重要なので、半導体が~バッテリーが~、だから、中国が何かの措置を取る事はできない、最大限の国益を得よう、というのです。ちょうど文化日報に同じ旨の記事がありました。米国がちょっと冷たいように見えるだろう?だから心配になるだろう?でも大丈夫だ、という内容です。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・現実は明らかだ。中国を含むサプライチェーンは回復しないだろう。これは過去に通用された安米経中(安保は米国、経済は中国)のような論理は、これからは通用しないという意味でもある。しかし、状況を単純に見てはならない。世界経済環境は想像以上に複雑だ。韓国は米国より中国との貿易に頼る部分がはるかに多い。米国が最も気にするサプライチェーンの一つである半導体だけ見ても、主要企業の対中輸出は40%に達する。また、米国はインフレ削減法(IRA)のような案件で、同盟国である韓国の事情も考えてくれなかった。私たちだけの戦略を持って、今の状況を乗り越えなければならないという意味だ。
状況を冷静に見て、私たちが持っているレバレッジとして活用する(※もっと大きな利益を得る)ことで、私たちの企業の被害を最小限に抑える必要がある。幸いなことは、米国が推進しているサプライチェーン再編で韓国は最も重要な国の一つだということだ。その基盤は半導体、電気自動車など米国がサプライチェーンを再編しようとする主要分野で最高の技術力と安定的な供給力を持っているということだ。最も重要な武器なのだ。これをさらに活用できる方案について、皆が知恵を集めなければならない時だ(文化日報)・・>>
逆のパターンも無数にあります。中国は韓国の半導体を必要としているので、これといった措置を下すことはできない、というのです。昨日もTHAAD配置のときの記事を紹介しましたが、そのときも「観光を制限したりはできないだろう」としていましたし、つい最近にも右側のメディアには「実は、中国がTHAAD関連で行った関連措置で、中国のほうがもっとダメージを受けた」という記事が載ったりしました。いつだったか、このフレーズ、日本関連でも見た気がします。すべてのパターンにて、論拠は一つ。「韓国が重要だから」です。
この話になればいつも思い出すのが、『チップ4において、韓国の役割ってどういうものなのか』との指摘です。ソース記事は1月11日の朝鮮日報(朝鮮BIZ)です。「米国が主導する半導体サプライチェーン協力体「チップ4」でも、我が国の役割は曖昧であるという指摘が出ている。日本と台湾は米国と具体的な技術協力を議論、実益を得ているが、韓国はチップ4参加を公式化しただけであまり進捗がない状況だ」などの内容ですが、気になるのは、なぜそこに「役割(原文のままです)」という単語を使ったのか、です。文章だけを見ると、進展が無いことを問題にしていますが、この単語により、「どんなことが期待されているのか、どの分野で必要とされているのか、よくわからない」というふうにも見えます。なんか、書きたいことがハッキリ書けなかった・・そんな印象の文章ですが、気のせいでしょうか。
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