いまさらですが、前週~今週あたり、サムスンやSKハイニックスの中国工場はどうなるのかという記事が目立っています。今回は韓国経済が、サムスン電子の中国西安工場関連で、長い記事を載せました。サムスン電子はこの工場でNANDの40%を生産しています(記事では取り上げていませんが、SKハイニックスは無錫と大連という地域の工場で、DRAM50%、NAND30%を生産しています。記事によって少しずつ数字は異なりますが、大韓商工会議所などによると、半導体輸出において中国が占める割合は2022年基準で39.7%。2000年代になったばかりの頃は3%台だったとのことですから、どれだけ中国市場にたよってきたのかが、よくわかります。
ソース記事は、他のメディアとはちょっとニュアンスが異なり、『米国の補助金と、今まで30兆ウォン投資してきた中国の工場。両方取ることはできない。もうどちらかを選択するときが来る』としています。あたりまえのことですが、実は韓国メディアは、どうしても両方取るべきだと主張するところがほとんどです。記事は主に『金額』(米国からの補助金の金額、中国工場に投資してきた30兆ウォンなど)としての側面を強調していますが、そうでもないでしょう。たとえば中国工場を選んだなら、失うのは米国の補助金だけではなく、『米国側』そのものになるでしょうから。記事にもこの趣旨が書かれてはいますが、どうも補助金などの金額だけにこだわっている気がします。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・米国の半導体支援法(米国に投資した半導体企業に補助金を与える法案)に含まれる「ガードレール」条項によれば、米国で半導体支援法により補助金を受ける企業は、中国の半導体工場に追加投資することができなくなる。サムスン電子が韓国企業の中で最も大きな影響を受けることになる。現在、サムスン電子は米国テキサス州テイラー市に最先端ファウンドリ(半導体受託生産)工場を建設している。投資額は170億ドルだ。追加投資も予想される。 中国西安には、サムスン電子の大規模なNANDフラッシュ工場が帰っている。
ガードレール条項が現実化すれば、サムスン電子は、米国テイラー市にファウンドリ工場を建てる対価として受けることになる米国政府の補助金をあきらめるか、アメリカ政府の補助金を受けて中国西安工場の追加投資を止めるかの選択をしなければならない。業界では、どちらを選んでも兆ウォン単位のダメージは避けられないという観測が出ている(※この選択は工場や補助金だけでなく『路線』そのものを示すことになるため、この見積もりはあますぎるのではないか、と個人的に思っています。※の部分は引用ではなく私見です)・・
・・米国で受けることができる補助金は、連邦政府と地方政府を合わせて最低3兆ウォン、最大5兆ウォン程度と推定される。100兆ウォンを超える現金・現金性資産を保有したサムスン電子の立場では、膨大なお金ではない。しかし、最近の事業実績を考慮すれば、無視できない資金という指摘も出ている。サムスン電子の今年の営業利益が15~20兆ウォン程度と見込まれるためだ。今年必要な50兆ウォンに達する施設投資額に、大きく及ばない数値だ。サムスン電子は最近、子会社のサムスンディスプレイから20兆ウォンを借り入れるなど、現金動員能力が「ギリギリ」の状況だ。
米国の補助金が持つ意味が単純な「お金」にとどまらないのも負担だ。 補助金を受け取らないというのは、サムスン電子が中国投資を続けていくという意味だ。つまり、米国が主力している中国半導体関連措置に参加しないと明らかにするのと同じだ。だからといって、補助金をもらうのも負担だ。受ければ、中国投資ができなくなる。西安工場の生産量がサムスン電子の全NANDフラッシュ生産で占める割合は30%台後半と推定される(※39.7%)。 その生産量のほとんどは、中国企業に供給されている。 イ・ジェヨンサムスン電子会長が2020年5月に直接訪問して「時間がない。時を逃してはならない」と話したほど、半導体事業の戦略的な拠点だ・・
・・サムスン電子は西安工場にもかなりの資金を注ぎ込んだ。投資額は西安1基工場に108億ドル(約14兆ウォン)、2基工場に150億ドル(約19兆5000億ウォン)だ。追加投資ができなくなるといっても、すぐに工場が止まるわけではない。しかし、最先端の装備を投入することができなくなり、半導体装備業の人材が撤退するようになれば、中国工場でのNANDフラッシュ競争力は毎年下がるしかない。2013年以後30兆ウォン以上投入したNANDフラッシュ工場が鉄くずになる可能性もある・・>>
記事は、またもや「1年猶予」を主張していますが・・さて、それでなんとかなるのでしょうか。どうせ1年後には、またどちらかを選ぶしかないのでは。最後に、サムスンディスプレイから20兆ウォン借り入れたという話ですが、実はサムスン電子も現金性資産にそう余裕が無い、との分析もあります。デジタルトゥデイというネットメディアの記事によると、2022年1~3月期には別途基準(※連結基準ではなく)で9.1兆ウォンほどの現金性資産と12.8兆ウォン規模の短期金融商品で総計21.9兆ウォンを保有していましたが、10~12月期には3.9兆ウォン(現金性資産3.9兆ウォン+短期金融商品1.37億ウォン)しか残っていない、と。
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